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連載

〈WARANOUE(ワラノウエ)〉
西和賀の木で器づくりを。
手にした人にしかわからない、
器を「育てる」喜び

岩手県西和賀町・ユキノチカラプロジェクト
vol.010|Page 1

posted:2017.3.14  from:岩手県西和賀町  genre:ものづくり / 暮らしと移住

sponsored by 西和賀町

〈 この連載・企画は… 〉  岩手県の山間部にある西和賀町。
積雪量は県内一、人口約6,000 人の小さなまちです。
住民にとって厄介者である「雪」をブランドに掲げ、
まちをあげて動き出したプロジェクトのいまをご紹介します。

writer profile

Tamaki Akasaka

赤坂 環

あかさか・たまき●フリーライター。岩手県盛岡市在住。「食」分野を中心に、県内各地を取材・原稿執筆。各種冊子・パンフレットの企画・構成・編集も行うほか、〈まちの編集室〉メンバーとして雑誌『てくり』なども発行。岩手県食文化研究会会員。

credit

撮影:奥山淳志

西和賀にんげん図鑑Vol.5
木工旋盤〈WARANOUE(ワラノウエ)〉藤原 隼さん

ブナ、カエデ、ホオ、山桜などさまざまな木の木目や色を生かした、薄手のプレートやボウル。
しかも、シンプルなオイル仕上げなので、その美しさがより際立つ。
藤原 隼(じゅん)さんが旋盤を使ってつくるこれらの木の器は、
ウレタンのコーティングと異なり、使うほどに味わいが出てくるという。
でも何より目を引くのが、そのゆがんだフォルムだ。

生木は「動き」があるので、使うタイミングが重要だ。

このフォルムは、材料の「生木」がつくりだしている。
藤原さんは、切って間もない生木を手に入れ、乾燥させずにそのまま使うので、
つくっている途中に水分が抜けてかたちが変わっていく。
できあがるのは、「世界にひとつだけの器」だ。
「木工作家の須田二郎さんが生木でつくる器をインターネットで見つけて、
こんな器をつくってみたいと始めたんです。
木の器づくりを始めて半年くらい経った頃だと思います。
須田さんについては、作品はもちろん考え方も好き。
ブログを何年も前にさかのぼって読んでいるくらいです」

ほぼ毎日8時から20時頃まで作業する。忙しい時には、2~3日間そのまま工房に泊まることも。

神奈川県で農業と山仕事をしていた須田氏は、獣害で農業を辞めたあと、
木工旋盤を買って独学で器づくりを始めた人だ。
山仕事をしていただけに、森林保護の観点から、切り出した障害木を主に使う。
生木のまま使うので、木がゆがむことをある程度計算しながらつくり、
動きが止まった時点で不安定な部分だけを修正する、というやり方だそう。

西和賀に工房を構えてから町内外の人と知り合う機会が増えた、と喜ぶ。

2011年に、自宅のある紫波町で本を見ながら
手彫りの木の器をつくり始めた藤原さんだったが、須田氏の作品や考え方に出会い、
さっそく木工旋盤を購入。
同町にある岩手県森林組合から、材木として売れない生木を仕入れて器をつくり始めた。
最初に手に入れたのはケヤキ。
それで、ボウルをつくったという。

「薪やキノコのほだ木にしかならないような木が器になる、というのがいいと思うんです。
仕入れた木はできるだけムダにしないよう、木取りなどにも気を遣っています」
それでも、つくっているうちに節や虫くいの跡が出てくることもある。
そこでそうした器は、自ら企画した無償レンタルシステム〈うつわbank〉で利用する。
できるだけ有効に利用したいという、木への深い愛情がうかがえる。

もうひとつ、藤原さんのこだわりが、オイル仕上げだ。これも、須田氏ゆずりである。
木製の器は、実用性を考えてウレタンでコーティングされることが多いが、
藤原さんは「手間ひまかけて化学物質を塗る必然性がない」と言い切る。
汚れの付着やカビの発生が気になるが、
「使ったらすぐに洗う、長時間水に浸したり濡らしたまま放置しないなど、
少しだけ気を遣って使ってもらえれば問題ない」そうだ。
逆に、コーティングされていないから盛り付けた料理の油が自然に染みこんで、
使いこむうちにいい味になる。
もし表面がカサカサになってきたら、サラダ油やオリーブ油を塗ればいいとのこと。
そうやって「器を育てる」楽しみもあるということなのだろう。

藤原さんの工房。

「仕入れた木を見ながら、『これを何にしようかなあ』と考えている時間が一番楽しい」と話す藤原さん。

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