colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧

連載

弘前市の自給自足の
イタリアンシェフ笹森通彰さん、
サラダ&シードル体験レポート
〈TERRARIUM JAPAN RESEARCH〉

Local Action
vol.113

posted:2017.10.6  from:東京都港区  genre:食・グルメ

PR Terrarium表参道

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

writer profile

Kanami Fujita

藤田佳奈美

ふじた・かなみ●東京都出身。グラフィックデザイナーを経て、オウンドメディアや雑誌のライター、女性向けサイトの編集ディレクターに転身。ほぼ何でも屋と化し、サイトのバナーデザインやイラスト作成も手がける。夜はだいたい隅田川沿いで飲んでる。
https://twitter.com/yakou_chuu_

credit

撮影:ただ(ゆかい)(弘前)、大嶋千尋(ワークショップ)

〈オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ〉が弘前にある理由

2017年9月14日(木)、東京・表参道の
ビューティライフスタイルショップ〈テラリウム表参道〉にて、
『コロカル』とのコラボレーションによるワークショップが行われました。
その名も〈TERRARIUM JAPAN RESEARCH〉。

会場となる〈テラリウム表参道〉は、〈インフィオレ〉を中心に
自然派コスメや独自のセレクトアイテムなどビューティグッズも充実。
ガラス張りの店内には陽射しが降りそそぎ、とても開放的な場所。

第1弾となる今回は、青森県弘前市にある自給自足イタリアン
〈オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ〉のオーナーシェフ・笹森通彰さんによる、
自家栽培した野菜や自家製チーズを使った盛りつけ体験、
自家製シードル飲み比べ体験を行いました。

笹森さんは青森県弘前市生まれ。
料理の道を志すことになったきっかけは、学生時代アルバイトしていた
仙台のイタリア料理店でのまかないづくりにあったといいます。
きのこのクリームスパゲティをうまくつくることができた笹森さんは、
料理のおもしろさを見出し、当時学校で勉強していたコンピューター関係の職ではなく、
料理の道を志すことに決めました。

そうして東京のトップクラスで3軒、本場イタリアの一流店で4軒の修業を経て、
2003年に自給自足イタリアン、オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ、
2010年に自家製モッツァレッラチーズを100%使用したピッツァ専門店
〈ピッツェリア ダ・サスィーノ〉をオープンした笹森さん。

なぜ、“自給自足”なのか。なぜ、弘前に戻ってきたのか。
その理由は笹森さんの幼少時代の原体験にありました。

「小さい頃から祖母の自家消費用の畑で採れた自家栽培の野菜を食べていました。
採れたて濃厚でフレッシュなトウモロコシやスイカが私のおやつ。
養鶏もしていたので、卵は自分が取ってくる担当でした。
牛乳は近所の大学の農場で低温殺菌したものを愛飲。
だから、仙台のイタリアンでバイトしていたとき、野菜の味が弱かったり、
牛乳に味を感じなかったり、ちょっとおかしいなと感じたんです。
イタリアで修業していたときも素材の弱さを感じて、
自分の小さい頃の環境は特別だったんだなと思いました。
帰省して畑のものを食べると、やっぱりうまいと実感しましたね」(笹森さん)

そんなバックボーンがあるから、素材の良さを存分に生かした料理が
本当においしい料理と確信した笹森さん。
可能な限り素材づくりから手がけることを決意したといいます。

「東京には良い素材が揃っていますが、
素材の味と料理人の技を合わせて味を最大化するのではなく、
素材だけでもおいしいものにしたい。弘前に戻って、あの畑で、
自分の納得する素材を自ら手がければ、いい料理がつくれると思いました」

いまでは30種以上の野菜や果物をはじめ、
ワインやシードル、食用花、ハーブ、チーズ、生ハムなど、
レストランで提供する素材のほとんどが、笹森さんの自給自足によるもの。

なかでもいま一番力を注いでいるのが、ワインづくり。
盆地のため日中は暑くて夜は涼しく、しっかり寒暖差があるのに加え、
風通しがいいから湿気がこもらず病気になりにくいという、
非常にワインづくりに適した環境の弘前。
醸造免許を2010年に取得し、今年で7回目を迎えました。
ワインづくりの苦労について、笹森さんは次のように話します。

「酒税法の関係でワインづくりは難しいと思っていましたが、
弘前市にお願いして特区にしていただき、自分の畑で育てたブドウでつくった
自家製ワインを自分のレストランで提供するという条件で、
1リットルから提供できるようになりました。
だけど2013年には収穫前の大事な1か月が雨台風に直撃。
葉が落ちてしまったため光合成ができず、成長が止まってしまって。
通常は糖度が24度なのですが、そのときは17度まで落ちてしまい、参りました」

そんな苦難を乗り越え、いまでは2000本植えられているブドウ畑から、
最大1500リットル、ボトル2100本分とれるようになったといいます。
これからもいまあるワインをより良いものにしていくため、改良を重ねていくそうです。

また、2016年12月からは地元のリンゴでシードルづくりも開始。
今回飲み比べしていただく春仕込み、夏仕込み、冬仕込みの3種を展開しています。

もちろんその中にはたくさん試行錯誤して、うまくいかなかったものもありました。
オリーブや小麦は青森の冬を越せず、なかなか実がなりません。
豚や食用うずら、鴨も検討しましたが衛生法上難しく、
ハチミツは住宅街に囲まれた畑に蜂がやってくることはなく……。

また、烏骨鶏も害獣にやられてほぼ殲滅。
でも、生き残った1羽が気まぐれに生む卵が濃厚で、
また対策をとって挑戦したいと笹森さんは話します。
彼のあくなき探究心が生み出す最高の素材がこれからも増え続けていく予感に、
思わず胸が躍ります。

次のページ
いよいよワークショップ!

Page 2

素材を味わい、マリアージュを楽しむ

会場のスクリーンに映し出されたのはアスパラ、桑、プルーン……。
このときは、7月後半の畑の様子で、野菜やハーブ系は無農薬、
そのままの生えっぱなしでたくましく育ったものだといいます。
その広大な敷地にみっちり生え育った野菜を見て、会場からは歓声がわきました。

この素材の中から今回は、次のラインナップを用意。

赤黄色のミニトマトや、素揚げしたズッキーニとナス、カリフラワー、
ロメインレタス、スティックフェンネル、グリーンリーフ6種、
ナスタチウムの花、ボッコンチーノ(チーズ)のバジル乗せなどをチョイス。

味つけとして、オリーブオイルやリンゴでつくられたバルサミコ酢のほか、
粒が粗めのクリスタルソルトやコリアンダーシード、
ビーツの茎を乾燥させてパウダー状にしたもの、きざみ昆布などが並びました。
これをただ盛りつけるだけではありません。

まず、ビーツのみをピューレ状にしたものをスプーンでひとすくいし、皿に乗せます。
次に手首のスナップを使ってピューレをスプーンの腹で叩いて飛ばします。

皿の上で大胆に散ったピューレはとても芸術的で、あとは感性にまかせて
好きな野菜を乗せていけば、洗練されたフォトジェニックなサラダに早変わり。

ボッコンチーノはひと口サイズのミニモッツァレラで、手で整形する限界サイズのもの。
お土産のブッラータは、モッツァレラの中にモッツァレラクリームが入っており、
ひと口で口に入って、口の中でクリームが弾ける感覚を堪能できます。
ちなみにこちら、2014年ジャパンチーズアワードで銀賞をとったもの。

チーズの話題になると、会場のボルテージが一気にマックスに。
各々が無邪気にピューレを飛ばしながら、思い思い盛りつけたサラダに、
お楽しみのチーズを添えて、シードルで乾杯しました。

「ブルーのお皿にピューレの鮮やかなピンクがよく映えますね」
「ピューレを叩いているとき、ストレス発散になりました」
「清涼感のあるフェンネルというハーブがアクセントになっていておいしい」

服に飛んでも、今日は気にしない。とにかく楽しんで、とにかく素材を味わう。
そんな思い切りの良ささえ感じました。

シードルの冬仕込みは、ジョナゴールド、シナノゴールドの2種を使用。
春仕込みは、つがる、ふじ、紅玉、とき、王林の5種で、低温発酵。
香りは冬仕込みよりも複雑になっています。
夏仕込みも春仕込みと同じ5種ですが、ブレンドの配分を変えたもの。
発泡性が強いのが特徴です。すっきりと飲めて、サラダと相性抜群。

最後に、地方と東京について話してくれました。

「いまの流通事情を考えると、東京も贅沢な食材が集まるとは思うけど、
野菜ひとつに関しても、バックヤードがわからない。
どういう立地でどういう川が流れてどういう風が吹いてというのがわからない。
素材が育った背景を知っていると、料理で整合性がとれる。

例えば熟成させるウォッシュタイプのチーズの場合、
その牧場の牛が食べている枯れ草を使って燻製しています。
組み合わせは、やはり抜群。一番のマリアージュだと思うんです。
奇抜な組み合わせではなく、昔からある普遍的な組み合わせがベストだと思っています。
それがこれからも何百年も続いていく味。

地方にいると、絶対的王道的な組み合わせが続けられるんですよね。
土地の生ハムを何で合わせるかというと、その土地のワイン。地酒を合わせる。
それが実現できるのが弘前なんです。弘前に来ないと味わえない
チーズ、ワイン、風、人、トータルで料理を楽しんでほしい」

「そして、私が伝えたいことは、人間の体は食べ物からしかできていないので、
良い食材、厳選された良い調味料を使っていただきたい。
極力素性のしっかりした、混ぜ物のないものを選ぶのが大事です。
そうすれば健康でいられると思いますので、
食材の大切さをこれからも意識していただければ。
ちなみにうちの店に来れば、その集大成が味わえますよ(笑)」

最後はお店の紹介もしてくれ、大盛況の中、幕を閉じました。

また、ワークショップ参加者には、〈インフィオレ〉のサンプルをプレゼント。
インフィオレは植物の栄養素を新鮮なまま取り込むリビングフードの考え方に基づき、
植物の力強さとラグジュアリーな心地よさを兼ね備えたスキンケアブランド。 
五感をフルに使って体の中から「美」を育むことができた2時間は、
参加された皆さんの毎日を間違いなく彩ってくれるはずです。次回もお楽しみに。

information

map

TERRARIUM OMOTESANDO 
テラリウム表参道

住所:東京都港区北青山3-8-5

営業時間:11:00〜20:00

定休日:月曜

http://www.terrarium-omotesando.jp/

information

map

OSTERIA ENOTECA DA SASINO 
オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ

住所:青森県弘前市本町56-8

TEL:0172-33-8299

営業時間:18:00〜21:00(L.O.)

定休日:日曜

http://dasasino.com/

Feature  注目情報&特集記事「日本のクリエイティブ」

Tags  この記事のタグ

Recommend