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河原町繊維問屋街プロジェクト

Local Action
vol.013

posted:2013.1.26  from:熊本県熊本市  genre:ものづくり / 活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

editor's profile

Kanako Tsukahara

塚原加奈子

つかはら・かなこ●エディター/ライター。茨城県鹿嶋市、北浦のほとりでのんびり育つ。幼少のころ嗜んだ「鹿島かるた」はメダル級の強さです。

credit

撮影:山本あゆみ

シャッター街が、ユースカルチャーの発信地に

JR熊本駅から路面電車で5分ほどのところ、
駅から中心街へと向かう、ちょうど中間地点。
ほかの地方都市と変わらないまちなみの一画に突如あらわれる、河原町繊維問屋街。
昭和に建てられた店舗が問屋街ごとそのままの姿で残っていて、
その建物の古さからか、東南アジアの露店街のような、
まるで日本とは思えない、不思議な空気をまとっている。
基本、1軒の建物の広さは、3坪ほど。
トタン屋根のアーケードのなかに、
2メートル幅の路地が5つ(裏に行けばもうふたつ)あり、
コンクリート造の建物が長屋のように連なる。
繊維問屋街と言っても、それはかつての名で、
近年は、繊維業者が去った建物に
若い人がカフェや古着屋を始めたり、イラストレーター、
建築家やグラフィックデザイナーが入り、アトリエとして活用している。

昼間は明るい問屋街。狭さゆえ対面する店舗とも近いからコミュニケーションもおのずと生まれる。

「この問屋街にクリエイターが集まり始めたのは、10年ほど前からです。
多くの繊維関連の業者が立ち退いて、
この問屋街はずっと、シャッター街となっていたようなんです。
そこで、若いクリエイターを誘致しようという計画が立ち上がりました」
そのときからここで、カフェギャラリー・GALLERY ADOを開き、
いまは、この問屋街の自治組織・河原町文化開発研究所の代表を務める黒田恵子さん。
「わたし自身、熊本市で育ちましたが、ここの存在は全く知りませんでした。
当時、知人づてに聞き、見に来たんですが、この異空間に惹かれてしまって。
ここならクリエイターたちが集まるまちになるなと。
だったら、表現の場にもなるカフェギャラリーを始めようと思ったんです。
今は、ここに、25前後のアトリエや店舗が入っていますよ」

GALLERY ADOのカウンターに立つ黒田さん。店内には地元の作家の作品が飾られている。

市街地から離れているとは言え、周辺には高いマンションも立ち並ぶ河原町。
問屋街も土地開発の例外ではないはずだが、
どうしてここだけ昭和の遺跡のように残ったのか。

この問屋街に事務所を構える、建築家の長野聖二さんはこう話す。
「第2次世界大戦後に焼け野原となった河原町には、
闇市がベースとなった店舗が多く立ち並びました。
しかし、昭和30年代に大火があり、店などがすべて燃えてしまった。
そこで、その翌年、共同出資でこの繊維問屋街が建てられたと聞いています」
共同で建てたから、この問屋街の店舗の大家はすべて異なる。
さらに、路地も何分の1ずつと、利権が細分化されているため、
管理の所有区分がとても複雑で、売却しようにも話がまとまらない。
「だから、この問屋街は、
残ってしまった場所と言ったほうが正しいかもしれませんね。
ちなみに僕の事務所は、真ん中の壁をとっぱらって
2軒分を借りているのですが、大家はそれぞれ異なるんです(笑)」

事務所わきにあるベンチにすわる、長野さん。

安さゆえ、古い建物を自分でカスタマイズ。

クリエイターが集まってくるもうひとつの理由は家賃の安さ。
熊本市内の中心地の約4〜5分の1の賃料で借りられるという。
それゆえ、なかには、雨漏りするほど老朽化している建物もある。
だから、大家さんと交渉しながらそれぞれ自分の好きなように
カスタマイズして、活用していくというわけだ。
「僕の事務所の建物は、以前喫茶店だったようですけど、
入るときは、すでに数年使用されていない廃墟だったんです」
と長野さんは言うが、当時が想像できないほどに、
リノベーションされて、モダンでシンプルな内装だ。
2階は事務所としてスタッフが数名働いており、
真っ白に塗られた1階の空間はギャラリースペースになっている。

左手にあるのが長野さんの事務所。廃墟だったとは思えないかっこいい空間。

黒田さんのカフェギャラリーは、かつては洋品店だった建物。
問屋街の表の通りに面していることもあり、約12坪と広い。
「借りるときは洋品店のなごりで、服をかけるラックが置かれていましたね。
まず、1階は、床にコンクリートを流して整え、カウンターをつくりました。
2階は板貼りの床をそのまま生かした、展示空間になっています」
建物の歴史を物語っているようなあめ色の床は、何とも言えない趣がある。
2年前くらいからは、この空間を気に入ったという劇団の方が増え、
月に1〜3回、小規模の演劇が上演されているのだという。

グラフィックデザイナーの石井克昌さんも、
問屋街の一番奥にある、組合事務所だった部屋を借り、
素色図画工作室IROMURAというワークショップスペースにしている。
奥の壁には自作の黒板があり、まるで小学校の図工室のような空間。
もとは後輩が借りていたスペースだったのだという。
「後輩が借り続けるのが難しくなったと言うので、そのまま引き継いだんです。
この場所に自分が可能性を感じていたので。
ぼろぼろだった天井や壁など、少しずつ時間をかけて自分で修復して、
ふさがれていた天窓も自力であけたんですよ」

今年31歳という石井さんは、熊本で育ち、熊本でデザインを学んだ。
今は、熊本市現代美術館の広報物など、
地元でグラフィックデザイナーとして、活動している。
グラフィックデザイナーを志すなら、都会に出たほうが仕事も多いのでは? と伺うと
「ぼくは、大きな会社のデザインを手がけたいという気持ちよりも、
自分の生活と身近なところにあるデザインの仕事をしたかった。
もちろん、グラフィックの仕事が少ない分、金銭的に苦しいこともありますが(苦笑)。
でも、ここの問屋街には、いろいろなつくり手がいて、
自分の好きなことを本気で頑張っている人が集まっている。
生活がうまくやりくりできるようなかたちで、
いろいろな企画が生まれればいいなと思っています」

石井さんはここで、「おくりもの学校」と称して、いろいろなつくり手さんと一緒に、さまざまなワークショップやイベントを提案している。

河原町繊維問屋街では、毎月第2日曜日、
「河原町アートの日」というイベントを開催している。
参加者はイラストやクラフトなど、自分の作品を出店している。
徐々に参加者や常連客が増え、平均25組が毎回参加しているという。
さらに、ここでは、さまざまなワークショップも開かれる。
熊本市現代美術館主催で行われた、
現代美術家の淺井裕介さんのワークショップもそのひとつ。
いまも、そのときの浅井さんの作品が問屋街に刻まれている。

現代美術家の淺井裕介さんの作品が問屋街の路地に刻まれている。

ほんの数軒から始まったクリエイターのまちは、
少しずつカルチャーの発信地として認知され、進化をとげているようだ。
「何かしたいけど、何がしたいか分からないって若い人たちが結構いて、
そういった子たちが、自分自身に刺激があるような場所は必要。
いろいろな人が出会える場所になったらいいですね」(長野さん)
「自分のやりたいことだけを受け入れてもらう場所になるのではなく、
より広い世界へ向けて、スキルアップにつながるような
出会いが増えていくといいなと思っています。
そのためには、この河原町全体の発信力も強めていきたいですね」(黒田さん)

information


map

河原町繊維問屋街

住所 熊本市中央区河原町2
活動クリエイター数:約12名(店舗数は25〜30店[不定営業店舗も含む])
職種:イラストレーター・アクター・ミュージシャン・美容師・能楽
家賃相場:1.5万円〜6万円/月

information

GALLERY ADO

電話 096-352-1930
営業時間 Cafe15:00~18:00、Gallery11:00~18:00 木曜休
http://galleryado.com

information

長野聖二・人間建築探検處

電話 096-354-1007
http://www.fieldworks.biz

infotmation

素色図画工作室IROMURA

電話 070-5818-1671
motoshiki@gmail.com

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