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連載

和歌山の小さな集落で始まる
暮らし×リノベーション
〈Re SHIMIZU-URA PROJECT〉
いとうともひさ vol.04

リノベのススメ
vol.153

posted:2017.9.19  from:和歌山県海南市  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。

writer profile

Tomohisa Ito

伊藤智寿

1985年大阪生まれ。神戸芸術工科大学環境デザイン学科卒業後、webデザイン、大工修行を経て、独立。2013年より、シェアスペース〈上町荘〉を協同運営。受賞歴は第23回JIA東海支部設計競技学生の部銅賞、第19回CSデザイン賞グランプリなど。
http://itoutomohisa.jp/

『リノベのススメ』執筆陣はこちら。週替わりで担当していただきます!

空き家を購入して、始まったこと

〈Re SHIMIZU-URA PROJECT〉。

このプロジェクトは「暮らし」と「リノベーション」をかけ合わせて、
つくる毎日を楽しもうというものです。
集落で生活する日々にリノベーションがあることで、
理想の暮らしや時間がつくれたらという想いがきっかけで始まりました。

今やどのまちにも空き家がありますよね。
そしてまだ空き家は増えそうだという流れがあります。
和歌山県海南市の冷水浦(しみずうら)集落で僕が購入した家は空き家でした。
そして隣の家も空き家です。集落から元気がなくなってきています。
増える空き家を、まちが管理することが難しくなっていくなかでいろいろな人と議論して、
リノベーションをして、暮らしをつくっていくプロジェクトです。

リノベーションをしながら暮らしを充実させる

暮らしに海がある集落。

この冷水浦という集落には海があり、山があります。
海南市には地酒の酒蔵もあれば漆器をつくってきた歴史もある。釣りもできる。
ほかにもたくさん、楽しむ要素はあるのに空き家が増えています。
それは雇用が少ないせいからか、整備された住まいが少ないせいからか。
しかし理由はどうであれ、この元気のなくなってきている集落に関わることで、
もっとこの集落での暮らしを楽しめるようになってほしいと思っています。

毎日が工事の実践。

この物件を購入したのは空き家が増えていくことが問題だとされているのにもかかわらず、
建物の工事も含めた暮らしのつくり方は
あまり公開されていないんじゃないかと思ったことがきっかけでした。

リノベーション+集落の暮らしを自ら実践してつくってみたい、
と思ったのが一番大きな理由です。
いろいろな意見が欲しくて、つくるものを広く公開しようとなりました。

こういった集落で始まる暮らし方にはこれといった正解も、決まりごともありません。
多くの人の意見が必要だし情報を閉じることよりも
情報を開くほうがにぎやかな暮らしになるんじゃないかと思っています。

リノベーション術は数々の事例があって、途中の工程を広く公開しているものもありますよね。
しかしここではリノベーション術より大きな枠としてひとつの物件に手をかけることで、
まちがどう変化していくか、暮らしぶりも含めてありのままを見てもらおうと思っています。
器をつくっただけでは解決が難しい問題も、
そこでの生活を見てもらうことでイメージがしやすくなるんじゃないかと思います。

Re SHIMIZU-URAはこんなところ

2017年5月に建物付きの70.9坪の土地を購入しました。
和歌山県海南市冷水。熊野参詣道・紀伊路沿いに漁村集落・冷水浦はあります。
海と山の距離が近くて、高低差のある地域です。

海側から冷水浦集落を見る。

接道していない特殊な地形から、道路の整備不足やインフラ整備の難しさもあります。
この集落には近くにスーパーマーケットもないので、
車がなければ生活するにもなかなか過酷な場所ですが、電車・車での交通アクセスは悪くない。
大阪市内から車で1時間程度、関西国際空港から車で30分程度で着きます。
またJR冷水浦駅から約300メートル、
徒歩5分で集落群の入口となるJRのトンネルが見えてきます。

JR紀勢本線が交差するトンネル。

山の中腹に位置するこの建物へのアクセスですが、
急な坂道に加えてこのトンネルがある限り、麓から車では入れません。
トンネルをくぐって左を振り向くと、購入した物件が見えます。
現地に行って初めて知ったのですが
敷地内に母屋(2階建て)と離れ(2階建て)と小屋(平屋)があります。

トンネルをくぐると開ける土地。左を振り向くとすぐの物件がRe SHIMIZU-URA。

まずはつくるための環境づくり。計画チームの発足

建築家・デザイナー・リサーチャーとチームをつくり、
このプロジェクトはスタートを切りました。
空間設計は〈PERSIMMON HILLS architects」柿木佑介さんと廣岡周平さんに、
プロジェクトの発信の仕方・ブランディングデザインは
designと〉の田中悠介さんに。
周辺リサーチやまちとの関わりづくりに和歌山大学特任助教の友渕貴之さんに、
そして施工はいとうともひさが行います。

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暮らしを公開する理由

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この家には僕が住んで工事をするのですが、
たまに釣りや海水浴をしたい知り合いが泊まっていったり、
大工になりたい人が勉強にきたり、宴会をしたり、やりたい人がお店を開いたり……
僕だけが住むんじゃなくって、シェアハウスのように
必要とする人が必要な分だけ暮らしてほしいと考えています。

というのも各地転々としながら工事をしているなかで、
工事中いろいろな家族の暮らしに参加させてもらったのですけど、どの家庭もすごく温かい。
それぞれにそれぞれの生活があって、その片隅に旅する大工を受け入れてくれます。

そういった経験が実体験としてあって、こういう感覚を味わってもらいたいな、
こういう場所が増えればなぁと思っています。

リノベーションを進めていくなかできっといろいろな人が関わり、
何かを与えたり与えられたりする関係になっていつでも帰って来られる場所がひとつ増える。
空き家が多くなっていくこのご時世だからできる
「家」の楽しさや温かさをみんなで考える場所になってほしいと思っています。

自由に関わり、意見ができるためには

暮らしをWEB上と実際の冷水浦両方で公開するアイデアは
〈デザインと〉の田中さんとの話の中で浮かびました。

実は購入時に、具体的な用途ははっきり決まっていませんでした。
決まっているのは家を改修することくらい。
そこで、前述の建築家のPERSIMMON HILLS ARCHITECTSのふたりと、
田中さんに物件を見にきてもらいました。
「ひとつの豪邸にして売ってもいいし、
ゲストハウスにしてもシェアハウスにしてもほかの何でもいい。
ゴールが決まっていないその曖昧さを逆手にとって、
住み込みながらつくるというスタイルに合わせた
更新性を持つプロジェクト名とロゴマークを作成してみては」と提案してくれた田中さん。

そんな彼のプレゼンテーションを皆で聞いていて、
全会一致で「これこれー!」となりましたね(笑)。田中さん曰く、

「ロゴのReのあとの四角には、
Re『NOVATION』、Re『VILLAGE』、Re『LIFE』などどんな言葉が入ってもいいし、
見る人、関わる人それぞれが自分なりの受け取り方をしてもらえたらいいなと思っています。
プロジェクトの初期段階でプロジェクト名とロゴマークを定めたのは、
メンバー4人が方向性を共有するためという理由もあるのですが、
もうひとつの大きな理由として、
このプロジェクトの進んでいく過程を発信して
多くの人を巻き込んでいきたいという想いがありました」

現在、プロジェクトの進捗を確認したりコメントできるWEBサイトを制作中です。
これから建物の解体や改修をしていく過程や、
集落内外の人が改修中の物件に遊びに来たり泊まりに来たりする様子を、
ブログやSNSで発信していきます。
遊びに来たり泊まりに来て、宿泊代金の代わりに解体や工事を少し手伝うなど、
気軽に関われる仕組みをつくっていけたらと思っています。

地域の方も関わることができる仕組みづくり

田中さんが前述したように工事するのを起点としてはいますけど、
工事したことによって冷水浦という集落に住む人にとっていい変化が起こったり
外部の人にとってもいい場所・時間ができたと感じてもらいたいです。

料理ができるひとも、音楽を奏でるひとも、おしゃべりが得意なひとも、釣りが上手なひとも。
やりたいことをやりたいだけやって暮らしていける仕組み。
売れるか売れないかじゃなくって、自分たちの生活をもっと充実させたい。
というエネルギーを無理なく実践できる場所になればいいなと思っています。

おすすめの簡単DIY術

さて、毎回関連する事例のなから、簡単DIY術を紹介したいと思います。
今回は「三和土(たたき)」のつくり方です。

海でとれる貝殻に含まれる炭酸カルシウムは三和土に利用できます。
昔ながらの家屋には三和土の土間と炊き出しの釜がよく出てきますよね。
貝殻を焼き、すり潰した粉末とにがりを土に混ぜて、床に敷いて叩く。
簡単に言えばこれで床の土はカチカチに固まるんです。
では手順を説明します。

手順1

貝殻(炭酸カルシウム)に熱を加えたものを粉末状にします。これができない場合は農業用消石灰を利用できます。ホームセンターで購入可能。本来は土+石灰+にがり+水が三和土の材料です。

手順2

土をトロ船に用意します。写真の土は解体で出た土壁をふるいでふるった土を利用しています。

手順3

土:貝殻:にがり=10:4:2程度で混ぜ込みます。にがりの代わりに路面凍結防止剤=塩化マグネシウムを利用できます。ホームセンターで購入可能。
※配合に関しては濃度によってばらつきがありますので試作をオススメします。

手順4

上記の混合土を均等に床に敷き詰め叩き棒で叩きます。2層、3層繰り返し繰り返して厚い層をつくります。

手順5

ぎゅっと締まれば完了です。硬化するまでに2週間程度時間がかかりますのでしばらく待って完成です。写真は三和土の間にタイルを埋め込んでいるものです。

次回はRe SHIMIZU-URA PROJECTの空間設計がどのように進み、
今実際に解体されているかを紹介したいと思います。

information

Re SHIMIZU-URA 

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