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連載

足湯でロールケーキ!?
老舗旅館のおもてなしを体験
道後ロールめぐり その3

愛媛県 × colocal
えひめスイーツコレクション
vol.007

posted:2015.12.16  from:愛媛県松山市  genre:食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  愛媛のフルーツ、おいしいのは柑橘だけではないんです!  
イチゴ、柿、栗、キウイなども実は愛媛の銘産です。
愛媛県産フルーツの生産者さんたちを訪ね、愛情をたっぷり注がれて育つフルーツを見てきました。
さらに、秋から冬にかけてぐっとおいしくなる愛媛県産フルーツを使った、
松山市と東京のスイーツ店もご紹介します。

editor's profile

Miki Hayashi

林 みき

はやし・みき●フリーランスのライター/エディター。東京都生まれ、幼年期をアメリカで過ごす。女性向けファッション・カルチャー誌の編集を創刊から7年間手掛けた後、フリーランスに。生粋の食いしん坊のせいか、飲料メーカーや食に関連した仕事を受けることが多い。『コロカル商店』では主に甘いものを担当。

credit

撮影:小川 聡
supported by 愛媛県

道後温泉屈指の老舗旅館〈大和屋本店〉の道後ロール

愛媛県の農林水産物の魅力を、スイーツを通じて全国に向けて紹介する
〈えひめスイーツプロジェクト〉。
この取り組みの一環として2014年にスタートした〈道後スイーツ物語〉。
愛媛の代表的な観光地である道後温泉の界隈にあるショップや宿に、
県産食材を使ったオリジナルのロールケーキ〈道後ロール〉をお店ごとに制作してもらい、
道後温泉を訪れた人にそのおいしさを味わってもらおうというプロジェクトです。
コロカルおすすめの道後ロールめぐり、
最後にご紹介するのは道後温泉屈指の老舗旅館〈大和屋本店〉です。

道後温泉を訪れる人たちにとって、いつか泊まってみたい憧れの旅館である〈大和屋本店〉。『坊っちゃん文学賞』の最終審査や『愛媛スイーツ・コンテスト』の会場としても使われています。

観光客でにぎわう道後温泉本館から徒歩1分のロケーションに位置する、
慶応4年(1868年)創業の〈大和屋本店〉。
ほのかに香気がただよう玄関を通りロビーに入ると、
そこに広がるのは老舗としての歴史を思わせる和の上質な空間。
全ての和室は数寄屋造りとなっており、部屋ごとに聚楽壁(じゅらくかべ)の色合い、
天井のつくり、障子の格子が異なっているのだそう。
また館内には能舞台〈千寿殿〉もあり、オープン以来、数々の上演が行われています。

ロビーラウンジへと続く玄関。ここから静かで上品な空間が広がっています。

松山道後ゆかりの山頭火や高浜虚子などの作品があちこちに飾られている館内。現在では〈道後アート2015〉の企画として、蜷川実花さんの作品も楽しめる仕様に。

その敷居の高さに緊張してしまいそうですが、
初めて道後温泉を訪れた方でもリラックスして〈大和屋本店〉の上質さを体感できるのが、
表通りからも入れる足湯〈伊予の湯桁〉。

道後温泉ならではの透明感とやわらかい泉質を楽しめる足湯。

庭園に隣接した広々とした空間で、
約20人が同時に足湯を楽しめるヒノキ造りの伊予の湯桁。
宿泊客でなくても無料で利用できる足湯といえども、すみずみまで手入れがされており、
老舗ならではのおもてなしの心を感じさせられます。
またインターホンで館内のコーヒーラウンジ〈花筐〉とつながっていて、
足湯を楽しみながらソフトドリンクやアルコールなどを注文することが可能。
そのメニューの中にも含まれているのが
〈大和屋本店〉で提供されている道後ロール〈久万高原トマトロール〉です。

取材当日もにぎわっていた足湯。地元の学生さんにも親しまれ、ひとつのコミュニティースペースとなっているのだそう。

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合わせる食材で味が変わる! 不思議なトマトロール

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さまざまな驚きと、地元への想いがこめられた〈久万高原トマトロール〉

現在では14もの店舗が参加している〈道後スイーツ物語〉ですが、
その多くが愛媛県産のフルーツを材料にした道後ロールを提供。
そんな中、〈大和屋本店〉があえてトマトを材料として選んだのには、ちょっとしたストーリーが。

「実は私どもでは以前から、野菜を使ったスイーツをつくっておりまして」
と話してくださったのは、支配人の水野真人さん。
「私どもの6代目の社長が就任したとき
“旅館を150年近く続けてこれたのは地元の方々のおかげ。
何か地元の方々への恩返しをできないか?”となりまして。
そこで地元のおいしいものでお土産をつくれば、地元にも貢献ができるし、
地元のおいしいものの宣伝にもなるだろうと、
つきあいの深い〈お菓子工房 おち〉さんとお菓子をつくることになったのです」

やわらかな光りに包まれた館内。老舗ならではの落ち着いた空気と時間が流れています。

その中で誕生したのが、大洲地方の伝統野菜である〈おおど芋〉をはじめ、
さまざまな愛媛県産野菜を使用した〈大和屋ベジスイーツ〉シリーズ。
現在ではスティックフィナンシェ、コンフィチュール、
そしてひと口サイズの焼き菓子〈Oyaki -おやき-〉の3種類が販売されています。
その中でも〈Oyaki -おやき-〉はコンテストで賞を受賞するだけでなく、
JAL国内線ファーストクラスの機内食デザートとして採用されるほど、そのおいしさが話題に。
そして道後ロールも〈お菓子工房 おち〉さんとつくることになり、
その材料として選ばれたのが「四国の軽井沢」とも呼ばれる久万高原で穫れるトマトでした。

大和屋本店の〈久万高原トマトロール〉。

県内有数のトマト産地のひとつであり、
青臭みがなく誰でも食べやすい〈桃太郎トマト〉を
全国に先駆けて栽培出荷したことで知られる久万高原町。
「久万高原のトマトは甘みがあり、糖度が高いです。
でも〈久万高原トマトロール〉は甘酸っぱいだけでなく、
もうひとひねり味わいに加えています」と水野さん。

久万高原トマトを練り込んで焼成された薄紅色のスポンジ生地で、
クリームとトマトの餡をロールし、
トマトのジュレとソースが添えられた〈久万高原トマトロール〉。
まずスポンジ部分をひとくちいただいて驚かされたのが、
口の中に広がる爽やかなトマトの香り。
この風味を出すために、通常では考えられないほど
ぜいたくな量のトマトが生地に練り込まれているのだそう。

そのトマトのおいしさだけを閉じ込めたともいえるスポンジの風味を引き立てるのが、
上品な甘さのクリームとトマトの餡。
このふたつによってもたらされる絶妙な甘酸っぱい味わいに、
外国によってはトマトが野菜ではなく果物とされることに思わず納得してしまうはず。
またトマトだけでつくられたというジュレもみずみずしく、
まるでカットフルーツをいただいているようなおいしさ。

そして、さらに驚かされるのは甘さをおさえたソースと、
その上に散りばめられたスパイスをつけたときに生じる味わいの変化。
日によって多少変えられるというスパイスですが、取材時に添えられていたのはバジル。
このソースとバジルを加えた途端、
その香りによってトマトの野菜としてのおいしさを思い出させる味わいに。
久万高原のトマトが、ただ甘いだけの青果でないことを実感させられます。

「トマトロールと聞かれたときに、すごく甘酸っぱいロールケーキだと
想像されると思うのですが、それだけでは終わらないような味つけにいたしました」
と水野さん。
「実際に召し上がってみると、とても味が深かったとほめてくださるお客様が多いですね。
トマトの奥深さが出せたのではないかな、と思っています」

足湯に浸かりながら味わうこともできる〈久万高原トマトロール〉。温泉で温まりながらいただく甘味は、ひと味もふた味も違いそう。

お風呂あがりに味わいたい方はコーヒーラウンジ〈花筐〉でどうぞ。コーヒーと一緒に注文される方も多いそうですが「紅茶など、あまり味の強くない飲み物のほうがあうのではないかと思います。お酒でしたら、ハイボールがあうかもしれません」と水野さん。

驚きあふれる〈久万高原トマトロール〉ですが、実はもうひとつ驚きが。
足湯に浸かりながらだけでなく、館内のコーヒーラウンジ〈花筐〉でもいただけるのですが、
その価格が270円(税込)ということ。老舗旅館の雅びやかな空間の中で、
美しい器に盛りつけられたスイーツを、ここまで手頃な価格で楽しめるとは……と、
三たび驚かされていると
「これは道後来訪者特別価格です。道後来訪者の方々には、
とってもお得な価格にしています」と、ほほえむ水野さん。
その言葉に老舗旅館ならではの手厚いおもてなしの心と、
より多くの人に道後温泉そして愛媛県の魅力をより深く感じて欲しいという
あたたかい想いが伝わってきました。

3回にわたりご紹介してきた道後ロールですが、
ご紹介できなかった魅力的な道後ロールも、まだまだたくさん。
愛媛県を訪れることがありましたら、ぜひ道後温泉で名湯の歴史を肌で感じ、
道後ロールで愛媛県ならではの果物や野菜のおいしさを舌で味わってみて。
いつもの旅が見聞だけでなく、食や歴史などへの好奇心も広がる特別な旅になるはずです。

Information


map

大和屋本店

住所:愛媛県松山市道後湯之町20-8

営業時間:7:00〜21:00(コーヒーラウンジ〈花筐〉)

定休日:無休 ※空調工事のため、2016年1月18日(月)正午から20日(木)正午まで休館

http://www.yamatoyahonten.com/

道後スイーツ物語
http://www.ehime-sweets.com/dogo/

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