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恵比寿のまちがシアターになる。「恵比寿映像祭」にて瀬田なつき監督「5windows」上映

コロカルニュース

posted:2015.3.6   from:東京都渋谷区  genre:エンタメ・お楽しみ

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
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Akiko Saito

齋藤あきこ

さいとう・あきこ●宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。

まちで起こるドラマをとらえた映画を、
映画館に閉じ込めずにまちなかで楽しむことができたら。
物語のかけらを求めてまち歩きをする体験は、
まちそのものが映画館になるようで、すごく楽しそう。

「5 windows」2012年/日本/40分 監督:瀬田なつき 脚本:瀬田なつき 音楽:蓮沼執太 出演:中村ゆりか、斉藤陽一郎、長尾寧音、染谷将太 配給:boid (C)5windows

ただいま東京・恵比寿の「恵比寿ガーデンプレイス」にて開催中の「恵比寿映像祭」にて
上映中の映画「《5windows》恵比寿特別編」は、まさにそんな作品。
監督・脚本は映画監督の瀬田なつきさん。
音楽を蓮沼執太さんが手がけ、
中村ゆりかさん、染谷将太さんらが出演するこの作品では、
ある日、ある瞬間、同じ場所に居合わせた主人公たちの物語の断片を
様々な場所で上映します。
劇場に座って見るのではなく、各所をめぐりながら
作品を見ることで改めてその場所を発見するという新しい試みです。

最初は横浜で作られたこの作品。吉祥寺・山口での上映を経て、
今回は恵比寿に登場しました。
横浜版ではそれぞれが重なり合った5つ目の物語を
屋内の映画館で観るという仕組みでしたが、今回は
ガーデンプレイスの7箇所にモニタが設置されていて、
案内パネルや配布マップをもとに巡って作品を観賞していきます。

見慣れたガーデンプレイスの広場に映画が出現。第7回恵比寿映像祭 オフサイト展示瀬田なつき《5 windows》恵比寿特別編 展示風景 photo:Takaaki Arai

マップ片手に、まちをめぐるのも楽しみのひとつ

「5 windows」の魅力は、色彩豊かな映像、
出演する役者さんたちの自然な演技、
それらをつなぐ音楽といった要素が、まちの景色と調和すること。
その魅力のひみつを監督の瀬田さんに聞いてみました。

ー「5windows」制作のきっかけは何ですか?
瀬田:2011年の春ごろ、建築家の藤原徹平さんから「漂流する映画館(シネマドノマド)」というプロジェクトで映す映像を作りませんか?という依頼があったのがきっかけです。そのプロジェクトは夜の黄金町の街の駐車場やカフェなどのスペースに、いくつかの映像をプロジェクションして、夜の街を歩くというものでした。それを聞いて、上映される内容と、プロジェクションされる場所が交錯すると面白いと思ったんです。実際に黄金町周辺を歩いてみて、大岡川にかかる橋を中心にして作ろうと思いました。

ー構成がすごく面白いですよね。
瀬田:4人の登場人物それぞれのパートは屋外で上映し、どの順番で見ても良いようにして、最後の映像を「ジャック&ベティ」という映画館で見る形にしました。街中でみる4つの映像にはセリフはありません。ハナウタなどが少しずつリンクするようにして、ある瞬間、4人が交錯するように作りました。そして、すべてが交錯する瞬間を5つ目の映画館で、アングルを変えて反復させながら、そのズレを見せていけたらと、考えていました。

ー実際にはどのようにして映画を作っていかれたのでしょうか?
瀬田:最初はタイトルも決まっていなくて。スクリーンの設営などハードの部分を建築学科の学生が提案して、映すソフトの内容を私が、という感じで、どんどんクロスさせて作っていきました。

横浜・黄金町で行われた「漂流する映画館 “Cinema de Nomad”」での上映のようす。 写真:後藤武浩

ーその後、山口での上映時にも新作を作られました。
瀬田:上映場所の下見で、一の坂川沿いを歩いていたとき、担当の松冨さんとの思いつきで上映場所である川沿いで撮影したバージョンを作ることになりました。主役の中村ゆりかさんの他にも、川やサンダル、ハナウタ、スカート、屋上、自転車…などアイテムは、黄金町バージョンと重なりつつ、少しズレて、と、合わせて見られるカタチを作っています。

こちらは山口県山口市で上映した際に地元ロケで制作された「5 windows mountain mouth」。 提供:山口情報芸術センター

山口での上映はこんな風に!

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瀬田なつき《5windows》2011-12年/配給:boid

■恵比寿バージョンの新作「eb」「is」について
ー恵比寿ではどんな場所をロケハンしたんですか?
瀬田:最初は、恵比寿ガーデンプレイスを上から下までぐるぐる見て回って。そのあと、恵比寿駅からガーデンプレイスまでの道のりなどうろうろしました。最終的には、撮影できない場所も多くて残念でしたが…。

ー脚本は撮影場所が決まってから書くのでしょうか?
瀬田:おおよそは合わせて書きました。冬の恵比寿ガーデンプレイスという、今までのロケーションと比べて人工的な場所なので、中村さんとは「楽しいコミカルな感じにしたいねえ」と話していたのですが、結局、ちょっと寂しい感じになったかも。

ー「eb」「is」それぞれで描いていることは何でしょうか?
瀬田:黄金町から3年半経ったということもあり、記憶の隙間、時間の隙間、みたいなものを、2015年2月の恵比寿の街と上映形式と、3年を経た中村さんと染谷くん、との重なりやズレから作り出せたらと思いました。そして、街が、作品を経てふと違って見えてくると面白いなと。

ー全編、音楽がすごく重要な要素になっていますよね。一度聴いたら忘れられなくなるような。
瀬田:屋外上映ということもあり、セリフよりハミングや口笛など音楽で、空間や時間を繋いでいきました。蓮沼さんには、撮影前に、ラストシーンでも演奏される、あのメロディを作ってもらいました。蓮沼さんの曲は、シンプルなメロディで、とてもキャッチーですよね。今回も数日間、頭から離れなかったです。他の劇中の曲も、本当に時間がない中、音楽が必要なシーンと雰囲気を簡単に伝えたら、すぐに曲が送られてきて。最初の黄金町の時から、映像の中心をすっと捕らえてもらって、ほとんど、こちらの意図とずれることがないです。

ーおすすめの楽しみ方がありましたら教えてください
瀬田:センター広場のラストシーンは、周囲の風景が映像にも映っているので、振り返って不思議な感覚を楽しんでください。勇気があれば、見終わった後、ハナウタいながら小躍りして坂を登ってください♬ そして、極寒ですので、なるべく暖かい格好で見に来てください。

瀬田なつき《5windows》2011-12年/配給:boid

複数の時間を縦横無尽に繋ぐことで、
小さな物語を果てしない物語に変えてくれる「5 windows」。
街を歩くことが映画を見ることにつながる、ユニークな体験です。
3月7日(土)、8日(日)の10:30〜11:30には、
「《5 windows】恵比寿特別編」を巡る!ガイドツアーが開催され、
3月7日の13:45からは、ザ・ガーデンホールにて瀬田監督による
ラウンジトークも開催されます。
その後も、ちば映画祭でも上映。
お近くのまちに訪れたら、ぜひチェックしてみてください!

■交差する時間と空間 瀬田なつきの「《5windows》恵比寿特別編」を巡る! ガイドツアー
ナビゲーター:堀内奈穂子、依田理花 ※瀬田監督は参加されません
会場:ザ・ガーデンホール受付
住所:目黒区三田1-13-2 恵比寿ガーデンプレイス内
日程:2015年3月7日(土)、8(日)
時間:10:30〜11:30

第7回恵比寿映像祭「惑星で会いましょう」
会期:2015年2月27日(金)~3月8日(日)会期中無休
会場:ザ・ガーデンホール、ザ・ガーデンルーム、日仏会館ホール・ギャラリー、
恵比寿ガーデンプレイス センター広場、恵比寿地域文化施設及びギャラリー、ほか
時間:10:00~20:00 (最終日は18:00まで)
入場料:無料 (上映、ライブ、レクチャーなど、定員制のものは一部有料)

■5windows
2011-12年
監督・脚本・編集:瀬田なつき
撮影:佐々木靖之
音楽:蓮沼執太
出演:中村ゆりか、斉藤陽一郎、長尾寧音、染谷将太
配給:boid

■「5windows eb」「5windows is」 2015年
監督・脚本・編集:瀬田なつき
撮影:佐々木靖之
録音:藤口諒太
音楽:蓮沼執太
スタイリスト:髙山エリ
ヘアメイク:光岡真理奈
製作:松井宏
ラインプロデューサー:滝野弘人
制作主任:倉元雷大
助監督:登り山智志
撮影助手:深谷祐次
出演:中村ゆりか、染谷将太、ゾンビママ

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