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喜久盛酒造仕込み蔵移転ファンド

Local Fund
vol.001

posted:2015.1.28  from:岩手県北上市  genre:食・グルメ / 活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  日本各地にはさまざまな特産品や伝統のワザや、そのつくり手がいます。
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Ikuko Hyodo

兵藤育子

ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。

credit

撮影:千葉諭

廃業した仕込み蔵に再び灯る、復興という名の明かり。

10月、酒づくりのシーズンが到来し、今年で創業120年を数える老舗蔵が
新たなスタートを切ろうとしていた。岩手県北上市にある喜久盛酒造だ。

喜久盛酒造の酒蔵の外観。隣接する自宅や醤油蔵、倉庫なども含めて3000坪の敷地がある。高校生の頃からレスリングをやっていた藤村さんは、敷地内の空いている農作業小屋を改造して道場をつくり、震災前はよく格闘技愛好家に教えていた。

自宅と隣接する広大な酒蔵は、東日本大震災で半壊。
先代のときに操業を停止したという醤油蔵は、100年以上の歴史を持ち、
かつては映画のロケに使われたり、雑誌に取り上げられるほど趣きのある建物だったが、
屋根が崩落して全壊認定。現在も瓦礫は撤去されることなく、
あの日から時が止まったようにそのままのかたちで残っている。

「北上市は震度6だったのですが、私の代になってから
震度6の地震には、東日本大震災の前にすでに2回ほど遭っていました。
それでも2回とも酒蔵は無傷だったので、
古い建物は地震にも強いのだと思っていたのですが、
3.11は揺れている時間が長かったこともあり、
ケタ違いのダメージを受けてしまいました。
4月に起きた最大余震の影響も大きかったですね」
と、5代目蔵元の藤村卓也さんは当時を振り返る。

3.11から約1か月後に起きた最大余震で、大きく崩れ落ちた土塀。酒蔵は半壊してしまったものの、従業員とその年に仕込んだお酒は無事だったことが、何よりの救いだった。

地震の被害に加え、雪の重みでつぶれてしまった屋根。その下にあった冷蔵庫もつぶれてしまった。屋根裏は柱が傾いていて、とても危険な状態だ。

1990年代までは醤油の醸造も行っていた。全壊した醤油蔵は、映画のロケ地として貸し出したこともあるほど絵になる場所だったそうだが、震災で見る影もなくなっている。

酒蔵の修復に莫大な費用がかかることは、建築に無知な者でも容易に想像できた。
それでも北上市内の建築業者に修繕費用の見積もりを依頼すると、
金額ではなく、思いがけない答えが返ってきた。
「うちでは直せない」ときっぱり断られてしまったのだ。
100年以上前の建物であることに加え、
増改築を繰り返してかなり複雑な構造になっていたため、
近代建築を扱う一般的な業者には手に負えない、というのが理由だった。
その後さまざまなつてをたどって、古民家を専門に扱っている盛岡市の業者から、
ようやく見積もりを出してもらえることに。
しかし、その時点で震災からすでに丸2年以上の歳月が流れていたため、
修復に関する補助金の申請を行うことができず、
自分たちで捻出しなければいけない状況だった。

他県の復興支援団体が喜久盛酒造へ視察に訪れたとき、全壊した醤油蔵を見て、
解体費用を自治体から援助してもらえるのでは、とアドバイスしてくれた。
それを聞いた藤村さんは、古い酒蔵を直すのではなく、全壊した醤油蔵を取っ払って、
その場所に現在の出荷量に見合ったコンパクトな蔵を新築したほうが、
予算を安く抑えられるのではないかと考えた。
しかしながら自治体によって対応が異なり、
北上市からは解体費用を援助してもらえないことが判明。
半壊後、規模を縮小しながら営業を続けていた酒蔵を直すことしか、
道は残されていないように思えた。

藤村酒造店(現在の喜久盛酒造)の創業間もない頃の代表銘柄「凱旋」。日清戦争勝利に因んだネーミングで、時代がうかがえる。後ろに写っているのは、税務署に提出していた申告書。どんなお酒をつくっていたのかが詳細に記されている。

藤村酒造店時代の広告。戦時中に企業合併した北上・花巻の酒蔵は、戦後に分離。3代目だった祖父の藤村久喜(きゅうき)さんが、「久喜が逆立ちしても盛り上げる」という意味を込めて、社名を喜久盛酒造に変更した。

酒蔵に足を踏み入れると目に飛び込んでくる標語。祖父が蔵元だった頃は日本酒全盛の時代で、従業員を多数雇い、事業をかなり拡大させていた。

そんななか、隣の花巻市にある白雲の社長が亡くなり、
2014年3月に自主廃業したことを耳にする。
太平洋戦争中、喜久盛酒造の前身である藤村酒造店と白雲をはじめとする複数の蔵は、
同じ税務署管内の酒造メーカーとして企業合併していた時代もあった。
しかも喜久盛酒造と白雲は、市が違うといっても車でわずか5分の距離。
ご近所の蔵で、なおかつ国の政策とはいえ一時は同じ企業だったよしみもあったので、
藤村さんはご遺族に白雲の蔵を貸してもらえないかと
思いきって相談すると、ふたつ返事で承知してくれた。

白雲の社長は、酒蔵と隣接する自宅にひとりで暮らし、
酒づくりは基本的に杜氏とふたりで行っていた。
2013年の秋、まさにこれから酒づくりをしようという準備段階で
亡くなってしまったため、蔵もきれいで、醸造機械の類は年季が入っていたものの、
メンテナンスをすれば充分に使える状態だった。
さらに喜久盛酒造と比べてコンパクトな白雲の蔵は、
現在の出荷量を考えても作業しやすい手頃なサイズといえた。
修繕費用がかなりかかってしまうことを考えても、喜久盛酒造の蔵には手を加えず、
白雲に移転して酒づくりを続けるのが賢明だと藤村さんは判断した。

喜久盛酒造の広大な敷地内には4つの井戸があり、幸いなことに震災後も水質・水量は変わっていない。移転後は白雲の水を使うことになるが、水質はほとんど変わらないという。

移転先の白雲の仕込み蔵。社長は趣味人だったらしく、蔵にはステレオが置かれていたり、庭先には乗り古したバイクがあったり、自室には社長自ら描いた絵が無数に残されていたという。酒に関しても、自分のつくりたいものだけをとことんつくるような人だった。

さて、喜久盛酒造のつくる肝心の日本酒なのだが、これがかなりのインパクト。
現在一番の人気銘柄となっている「タクシードライバー」は、
藤村さんが代表になって間もない2005年に商品化したもの。
誕生したきっかけが、また面白い。
「知人の紹介で、『映画秘宝』という雑誌のアートディレクターをしている
高橋ヨシキさんと飲む機会があったんです。
お会いしてすぐに好きな映画の話になりまして、
自分はイタリアのグァルティエロ・ヤコペッティ監督の『世界残酷物語』という
ドキュメンタリーが、DVD-BOXを買うくらい好きなんです。
その話を真っ先にしたら、パッケージデザインをしたのがヨシキさんだった。
それで一気に意気投合して、映画の話で盛り上がりつつ、
これを機に新しい酒の銘柄を考えましょう、という話になりました。
バカ話をしながら、いくつか出てきたアイデアのなかで、
一番商品化しやすかったのが『タクシードライバー』だったんです」
その数日後には、高橋さんの手による
ラベルデザインの原型ができあがっていた。

高橋ヨシキさんがデザインした「タクシードライバー」のラベル。映画好きはもちろん、ミュージシャンなどにもファンが多いという。それにしても、すごいインパクト……!

「タクシードライバー」は藤村さんいわく、どっしりとしたタイプのお酒。
岩手のお酒は全般的に、さらりとした飲みやすいタイプが多いため、
県内の同業者には「岩手で一番濃い」と言われている。
「正直、地元の受けはそれほどよくないのですが、
大阪など濃い味の好まれるエリアでは、早い段階から結構飲まれているんです」

「タクシードライバー」は、震災後に東京の有名な地酒専門店に
取り上げられたのをきっかけにブレイク。
それまでは1年かけて売っていた在庫が3か月で完売して、
増産した翌年も3か月で早々に完売。
昨年度はさらに3倍の量を仕込んだものの8か月で完売して、
現在は今年の新酒を待つのみだ。

「これまでの蔵は、祖父の代にかなり事業を拡大して増築していたので、
壊れた部分とかろうじて使える部分がありました。
震災後も崩壊した部分はそのままにしておき、
比較的被害の少なかった部分でなんとか営業を続けてきました。
この3年間は、生産規模をかなり縮小せざるを得なかったため、
つくりたいものをなかなか満足につくることができませんでしたが、
こうして蔵を移ることで、ようやくやりたいことをできる状況にはなったと思います」

白雲の仕込み蔵。全体的にコンパクトなので、動線が短くて作業しやすく、少ない容量をたくさん仕込む現在の喜久盛酒造のスタイルに合っている。藤村さんはここで喜久盛のお酒だけでなく、「白雲」という銘柄も引き継ぐつもりだ。

この制御盤は、藤村さんの祖父の代に喜久盛酒造が白雲に譲ったものだとか。藤村さんは移転して初めてそのことを知ったのだが、ご近所の蔵だけに世代を超えてこうした付き合いがいくつもあるのだろう。

藤村さんの「やりたいこと」を実現すべく、
この秋から喜久盛酒造に頼もしい人物が新たに加わった。
杜氏の盛川泰敬さんだ。花巻出身の盛川さんは、
この業界に入って20年近く、他県の蔵で酒づくりをしてきた。
喜久盛酒造は、盛川さんにとって初めてとなる地元岩手の酒蔵だ。
「中学生のとき、『ドブロクをつくろう』という本に夢中になって
何十回も読み、酒づくりをしたいと思うようになりました。
お酒を飲むことも好きですが、世の中には自分に合う酒と合わない酒がある。
できるだけ合う酒を飲みたいと思ったら、自分でつくるのが一番ですし、
それができるのは杜氏だからこそですよね」

蔵元の藤村さん(左)と、杜氏として今年からともに酒づくりをする盛川さん(右)。白雲の蔵には、お酒をしぼる槽(ふね)という昔ながらの道具が残っている。機械でしぼるところが圧倒的に多くなっているなか、木槽の扱いは熟練した技術を必要とする。

盛川さんに合う酒、つまりつくりたい酒は、純米酒。
そして喜久盛酒造は、今年から県内初の全量純米蔵として再スタートを切る。
それが、藤村さんのやりたかったことだ。
「杜氏のつくりたい酒と、自分の求める方向性が、ようやく合致した感じです」

一度は明かりの消えてしまった蔵で、いままさに新たな仕込みが始まっているものの、
自治体から満足な復興支援が受けられなかったこともあり、
醸造機器類や酒米の購入費用、人権費用などは、まだまだ足りていないのが実情だ。
そこで藤村さんは、ミュージックセキュリティーズの
「被災地応援ファンド」を活用して醸造に必要な資金を募ることに。

「このファンドは被災した喜久盛酒造の復興と、
後継者が途絶えて自主廃業してしまった白雲さんの再生という二重の意味を持ちます。
かつては北上と花巻の両地域に十数軒の造り酒屋があったのですが、
震災前の時点で喜久盛と白雲、南部関の3つにまで減ってしまいました。
岩手は酒どころのイメージがあるかもしれませんが、造り酒屋だけでなく、
酒販店も後継者不足で廃業を迫られているところが増えています。
岩手の日本酒文化を絶やさないためにも、がんばってまいります」

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●ミュージックセキュリティーズ株式会社では、喜久盛酒造が移転先で設備を整え、
本格的な生産態勢を整えるために必要な資金をファンドを通じて募集しています。

■投資家特典
1口につきタクシードライバー純米酒1本(720ml、約1,500円相当)をご送付。
3口以上お申込の方には焼酎古酒(*)(720ml、約6,000円相当)を追加ご送付。

*三代目蔵元 藤村久喜(現代表の祖父)が昭和50年代に焼酎の製造免許を取得し、自社製品の酒粕を蒸留してつくった米焼酎と甲類焼酎をブレンドした「甲乙混和焼酎」。焼酎製造免許は既に返上してしまったために今後はつくることができません。今回ご提供するのは30年以上熟成された喜久盛酒造がつくる最後の焼酎です。

ご送付例
・1口 「タクシードライバー」1本
・3口 「タクシードライバー」3本、焼酎古酒1本(720ml)
・5口 「タクシードライバー」5本、焼酎古酒1本(720ml)

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map

喜久盛酒造株式会社

住所:岩手県北上市更木3-54
TEL:0197-66-2625
http://kikuzakari.jp/

Fund Information

ファンド名:

喜久盛酒造仕込み蔵移転ファンド

1口申込金額:

10,500円(出資金5,000円、寄付金5,000円、取扱手数 料500円)

募集総額:

1300万円

資金使途:

醸造機器等、車両等 600万円
酒米購入費 330万円
人件費 370万円

【おことわり】

喜久盛酒造株式会社および株式会社マガジンハウスは、「喜久盛酒造仕込み蔵移転ファンド」の募集・売出しの取扱い、売買、売買の媒介・取次ぎ・代理等を行うものでなく、また、それらに向けた勧誘を行うものでもありません。本ファンドへの出資申込取扱は、ミュージックセキュリティーズ株式会社(MS社、第二種金融商品取引業者関東財務局長[金商 第1791号])に委託しており、MS社の上記WEBサイトでの、会員登録および出資申込手続を行っていただきます。

なお、本ファンドは、以下の留意点、リスクがありますので上記の「ファンドの詳細・お申込みはこちら」をクリックしていただき、匿名組合契約書および匿名組合契約説明書をよくお読みのうえ、お申込みください。

・出資金1口5,000円あたり当社への取扱手数料500円、喜久盛酒造への応援金(寄付金)5,000円が必要となるほか、別途金融機関へのお振込手数料が必要となります。
・出資金が一切戻ってこない可能性、ファンド期間中途中解約を行えないなどのリスクがございます。

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