連載
posted:2012.1.17 from:大阪府大阪市 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。
editor profile
Miori Baba
馬場未織
ばば・みおり●1973年生まれ。日本女子大学大学院修了後、設計事務所Factor N Associatesに入社し、ナンシー・フィンレイと千葉学に師事する。退社後ライターに転向し、建築雑誌やファッション誌などで執筆する。私生活では南房総にて週末里山暮らしを実践し、2011年に建築家、農家、造園家らとともに里山活用のNPO「南房総リパブリック」を設立。親子向けの里山学校などを主催する。目下、活動の一環として南房総産の野菜を使った「洗足カフェ」を運営中。
credit
photo by Tetsuya Ito
Casa BRUTUS vol.138(2011.9)より転載
人を入れるハコモノばかりがあふれ、ハコに入る人がいない地域。
それがおかしなことと気づきながらも、次の手が思いつかない行政。
今必要な行動は“ものづくり”ではなく、
“人がつながる仕組み”をつくることだと見定めて、
「コミュニティデザイナー」という不思議な肩書きを持って
地方再生のさまざまなプロジェクトを展開させる山崎亮は、
国が右往左往しているこの時代の寵児とも言える。
彼が人のつながりに興味を持ったきっかけは、
ランドスケープを学ぶ学生時代、阪神淡路大震災での経験だった。
「崩れ果てた街の中で、人々が結びつき、
自分たちの力で非常事態の街を使いこなす状況に圧倒されました。
また、ランドスケープ=生活自体であると痛感。
ならば、人のつながり自体が重要ではないかと考えました」
ものづくりから、つながりづくりへとシフトチェンジした彼は、
過疎化、少子化、高齢化など地域社会が抱えるさまざまな課題に対し
“震えるくらい美しい形で”解決することを命題とする
「コミュニティデザイン」という仕事を編み出した。
住民ひとりひとりの声を拾う中で地域課題を的確に見抜き、
人と人との良質なつながりを生み、つながった人々の意欲に火をつけ、
能力をつけ、チームワークの力で問題を解決していく。
そんな美しきチームプレーが、
地域コミュニティの活動でも実現できることを示したのである。
ただし、彼自身がプレーに加わることはなく、
人材を育て適切な指示を出す監督の立場を貫く。
未来を担う人材は地域の中で育成し、
十分に力が備わったらそっと身を引き、陰で寄り添う。
下に紹介した5つのプロジェクトは、
山崎監督が残した名試合ともいえるものだ。
「こんな仕事がなくていい世の中が理想なのにね」と笑う山崎は、
コミュニティデザインの伝道に、今日も全国を飛び回る。
山崎亮を読み解く5つのプロジェクト
profile
RYO YAMAZAKI
山崎 亮
1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。
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