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小豆島ひとやま 寺カフェ、地域のサロンとして

小豆島日記
vol.003

posted:2013.4.29   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer's profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が異様に強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HomeMakers」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、カフェ、民宿をオープンすべく築120年の農村民家を改装中。
http://homemakers.jp/

お寺を人が集まる場所に。

小豆島で暮らしていると、白衣(びゃくえ)を着て
杖をついて歩いているお遍路さんをよく見かけます。
お遍路とは、弘法大師空海が開いたとされる88か所の霊場を巡拝すること。
小豆島には「小豆島八十八ヶ所」があり、
四国のお遍路に比べて行程が短く(約10分の1)、
海や山など美しい自然に囲まれた霊場が多いことから、
多くのお遍路さんが訪れるそう。
お遍路については以前からなんとなく知っていたけど、
小豆島に移住してからお遍路がより身近な存在となり、
いつかまわってみたいなと思うようになりました。

私の暮らしている肥土山にも、小豆島八十八ヶ所のひとつ
「小豆島霊場第四十六番札所 護法山多聞寺」があります。
肥土山の集落を見渡せる高台にあり、この時期、
お遍路さんが鳴らす鐘の音がうちまでよく聞こえてきます。

小豆島霊場第四十六番札所 護法山多聞寺。山門の前に「小豆島ひとやま 寺カフェ」の看板。

境内のお庭からは、肥土山の集落とその向こうの山々を眺められる。

うちは昔から多聞寺さんの檀家(だんか)。
こっちに引っ越してきたとき、まず最初に挨拶に行きました。
考えてみると、名古屋で暮らしているときは地元のお寺に行ったことなんて一度もなし。
お寺というと、綺麗に手入れされたお庭を観光として見に行くとかその程度で、
普段の生活ではほぼ関わることのない場所でした。
それが一転、ここ肥土山では毎日家からお寺が見え、
鐘の音が聞こえ、お遍路さんも見かける。
急に近い存在に。

そして偶然にも、現在の多聞寺のご住職(こちらでは、おじゅっさん! と呼びます)は
私たちと同年代、さらに子ども同士も同年代。
お寺と檀家としての関わり、同年代の子どもを持つ親同士の関わり。
自然と会う機会が増えていき、いろんな話をしていく中で、
今回の「小豆島ひとやま 寺カフェ」の企画が生まれました。

各テーブルに寺カフェのメニューと季節のお花を飾って。

おじゅっさんの奥さまである藤本奈々恵さんは、小豆島で育ち、
東京で学生時代を過ごし、再び小豆島に帰ってきた女性。
自分が嫁いだ「お寺」でできることをやろう! ということで、
お寺でことわざ、俳句教室を開いたり(まさに寺子屋!)、
オリーブの木の念珠ブレスレットづくりのワークショップをしたり、
お寺でヨガをしたり、いろいろな「寺活」をしています。

そんな彼女からの「寺カフェやってみない?」のひとことで始まりました。
もともと自分たちの家を改修してカフェをオープンする予定の私たちにとって、
それはこの肥土山という場所でどんなふうにお店を構えることができるのか、
予行演習ともなり得る貴重な機会。
挑戦してみよう! ということで、企画から1か月、
営業許可申請、食器や什器の準備、メニュー決め、Webサイト、チラシの作成など、
ひとつずつ進めていきました。

コーヒーは一杯一杯ドリップで。オリジナルの小豆島ブレンドコーヒー。

キッズメニュー。子どもたちが楽しんでごはんを食べてくれるように。

小豆島産の無農薬レモンを使ったレモンスカッシュのポップを作成する娘。

もろもろの準備と同時に、肥土山の人々にとって大事なお寺を使わせてもらうため、
こんなことがしたいということをきちんとお話しました。
肥土山の皆さんあっての小豆島ひとやま 寺カフェだから。
そして、4月7日の「肥土山の火まつり」で、お遍路さんや地元の方々に
コーヒーを無料で提供しながら、寺カフェのお知らせ。
その1週間後の4月13日にいよいよオープン。

お寺でカフェを開くことで、
お寺をもっと身近に感じてほしい、気軽に足を運んでほしい、
そしてそういう風景のある小豆島肥土山という集落をいいなと感じてほしい
という思いからオープンした寺カフェ。

瀬戸内国際芸術祭のついでに立ち寄ってくださった島外からの方々、
Facebookを見て来ました! という小豆島在住の女の子たち、
仕事のお昼休みに来てくれた地元のおばちゃんグループ、
畑作業をし終えてそのまま一服しに来てくれた友だち家族、
様子を見に来てくださった瀬戸芸関連のクリエイターさんたち、
いろいろな方々が来てくれています。

小豆島について語ってます(笑)。左からたくちゃん、瀬戸芸で「小豆島カタチラボ」を展開されているgraf代表の服部滋樹さん、多聞寺の藤本奈々恵さん、わたし。カメラマンの桑島薫さんが撮影してくれました。

天井が高く、奥に手入れされたお庭が広がる客殿、
美しい里山の風景を眺められる境内のお庭。
もともと素敵な場所であるお寺に、
カレーのスパイスやコーヒーの美味しい香り、心地良い音楽が加わることで、
ゆっくりと居ることができる場所のできあがりです。

天井が高く、奥に手入れされたお庭が広がる客殿。

外の席で日向ぼっこしながらホットコーヒーを。最高のロケーション。

さてさて、予定している7営業日のうちすでに4営業日が終わりました。
残すは4月29日(月・祝)、5月4日(土)、5月5日(日)の3日間、
いろいろな方々との出会いを楽しみたいと思います。
ちなみに小豆島では、4月21日に春会期を終えた
「瀬戸内国際芸術祭2013」で展示されていたアート作品を、
夏会期までの間も観賞できるよう「小豆島まだ春会期」と題して現在も作品公開中です。
アートとあわせてお寺で美味しいひとときをどうぞ。

information

map

小豆島ひとやま 寺カフェ

住所 香川県小豆郡土庄町肥土山甲2151 TEL 0879-62-1670
2013年4月29日(月・祝) 11:00 ~ 17:00
2013年5月4日(土) 11:00 ~ 17:00
2013年5月5日(日) 11:00 ~ 17:00
*営業日時は急きょ変更になる可能性があります。ご了承ください。
http://tamonjicafe.tumblr.com/

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