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今回教えてくださったのは、
山田鰹節店を営む高橋和子さんと山田悦子さん姉妹。
おふたりは和子さんの息子の昌史さんと3人暮らしをしていて、
朝昼晩とほとんどの食事をともにしているのだそうです。
朝ごはんをつくるのは和子さん、昼ごはんと夕飯は悦子さんの担当。
まずはじめに教えていただいたのは、肝心かなめの出汁のとり方。
山田鰹節店さんには古く使い込まれた削り機が設置されていて、
鰹節やさば節を、その場で薄削りにして販売しています。
どちらも根強い人気商品なのですが、
鰹とさば、どんな風に使い分ければいいのでしょうか。
「鰹節は上品な味わいなので、
お吸い物や煮物に重宝しますよね。
さば節はそれよりも主張が強いので、
お肉なんかにはとても合うんですよ」と和子さん。
鰹節
1 1リットルの水を鍋に入れ、昆布を浸してひと晩おく。(昆布の種類によって分量は変わるので、お好みの量で)
2 翌朝、鍋を火にかけ、ごく弱火で20分ほど炊く。昆布を取り出し、30グラムの鰹節を入れる。ぽこぽこ泡が立つ程度の火加減で2〜3分煮る。
3 火を止めたら少し冷めるまで置いておく。ザルにあげてぎゅっと絞る。
さば節
とり方は鰹節と同様。煮る時間を少し長めに。4〜5分が目安。
出汁をとりながら、そのつど味見をさせていただきました。
まずは昆布だけでとった出汁をひと口。
使用している昆布は、
店頭でも販売されている羅臼の赤葉という昆布です。
20分かけてじっくり引き出された昆布の香りが広がります。
次は、鰹節を入れて煮た一番出汁。
とても上品な味わいながら、鰹の旨みと甘みが広がり
「うぅ、お、おいしい……」と、声がもれるほど。
さらに「これちょっとだけ入れてみて」ということで、
塩をほんのひとつまみだけ入れてみる。
すると上品な鰹出汁がグッと引きしまり、
旨みがさらに凝縮して感じられる。
これが本当に感動的なおいしさで、
これだけですでに立派な料理の一品になると思えるほど。
(あまりにも感動したので、
その晩は家族に、翌日は友だちに実演試飲させたほどです)
たった少しの塩で、
これほどまでに味わいが変わるものかという驚きとともに、
あまりにもおいしくて、
もし私が病床にふしたときには
この出汁プラス塩が飲みたいと思ったのです。
ザルでぎゅっとこした出汁もいただいてみる。
しっかりと鰹の風味が溶け出し、
どんな家庭料理をも支えてくれる頼もしさ。
さらに、さば節でとった出汁も味見。
鰹節に比べると塩気を強く感じ、魚の力強さがある。
たしかに、これくらいパンチがあると
脂っ気のある肉料理と調和できるのか、と納得です。
ひどく感動している私に、
「出汁って言葉にならないんだけど、どこかホッとするんだよね。
たったひと口の出汁が人をホッとさせてくれるの」と和子さん。