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この一連の撤退の流れを目の当たりにして、痛感したことがあります。
そもそも地方創生の取り組みは、短期的な働きかけではなく、
持続的に地域と関わり続けて成り立つものなはず。
それは、地域に暮らす者こそがやることではないのか?
再び空き物件となってしまった施設を目の前に呆然としつつ、
そんなことを考えていました。
賑わいを見せたあの「交流の場」を、
もう一度つくることはできないのだろうか?
いやいや、個人が手を出せるような規模ではない。
けれど建物が大きいこと、
部屋数の多さをうまく利用することができれば、
逆に強みになるのでは?
そして何より、個人だから、地域に暮らす自分だからこそ
できることがあるのではないか。
下田に住んでいるからこそ、地元の方の声を直接聞くことができる。
そして利用者さんとも直に接し、ニーズを拾い上げることができる。
そうしたニーズを的確に汲み取り、それを運営に落とし込んでいけば、
もっと地域の人に使ってもらえる施設になるのでは?
そうすれば、さらに「下田ファン」を生むような場、
地域内外から「長く愛される場」をつくれるのではないか?
そうして、悩みに悩み、空き物件を再生させることを決意したのです。
日々、ワーケーション施設の現場で、自分が下田で暮らすなかで、
また、昨年度、市のPTA代表として
さまざまな地域の親や子どもたちと話すなかで感じる地域内外、
下田に関わる人の「こんな場があったら……」というニーズに
どんなものがあったのかというと……
特に、「地域の子どもの居場所がない」
「子どもが自習できる場所がない」という切実な声を多く聞きました。
しかしながら、これを事業にして利益を出すのは難しいとも思います。
でも、先ほども触れたように建物は4階建てで、
部屋数としては30以上もあります。
外部にはデッキもあり、一階は広い共有スペースがあり、
屋上も使えるという、たくさんの「場」のあるこの建物。
利用者のニーズを把握しながら、この建物をフルに生かし、
きちんと利益を出せば、『子どもの居場所』だって実現できるのでは!?
旅の人、地元の人、移住者、地域の子ども、多拠点居住者、
地域の事業者、仕事で下田に来る人、
合宿利用の地域外の企業人や学生……。
「ここに来ると普段出会わない人と知り会えて、価値観がひろがる!」
ここを訪れる地域の方にそう言われることがあります。
地方に足りないのは、
こうした「交流」から生まれる
「価値観のひろがり」なのかもしれない。
一度、都会に出た若い世代が、地元に戻ってこない。
そして『人口減少』という問題につながっていく。
地方にこそ、価値観がひろがるような
「交流」が必要なのではないか?
さまざまな「交流」をつくっていくことこそ、
この場の役割と考えています。