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食卓と生産者をつなぎたい。
写真展『海と、人と』の
準備から開催終了までを振り返る|Page 4

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.140

Page 4

料理と生産者がつながる場所をつくりたい

そもそもなぜ写真展に食堂を併設したのか。
私はカメラマンとして料理の撮影をする機会が多く、
私生活でも食べることや自分で料理をつくることがとても好きです。
そして、できあがった料理ももちろんですが、
その原点である生産者さんにもとても惹かれます。
今まで撮り続けてきた海女さんや漁師さんも、
まさにその生産者さんです。

食卓に並ぶ料理と生産者さん、
その結びつきはごく当たり前のことなんだけれど、
どうもその流れがあまり意識されていないように感じていました。
両者がつながるような表現をしてみたい、
それが今回の写真展と食堂の併設でした。

来場者と談笑する津留崎徹花さんとワタナベマキさん

マキさんが料理についてみなさんに説明し、私は使われている食材について話をさせていただきました。この時間がとてもとても楽しかった。(写真は友人より借用)

食事をするお客さんには、
料理に関するエピソードを詳しくお伝えしました。
たとえば、「お皿にのっているのは、はんば海苔の素揚げです。
このはんば海苔をとっている写真がそこに展示してあります。
はんば海苔はこうして手で摘んだあと
水で何度も洗ってから根元の石をひとつずつハサミで取り除きます。
それを板状にして天日干しにしてようやくでき上がるという、
大変手間のかかったものです」とか。

するとある方が「こんなに大変な漁をしているなんて、
今までまったく知りませんでした。大切に食べます!」
と声をかけてくれました。
厳しい自然に向き合いながら、食を支えてくれる海女さんや漁師さん。
その姿を見ながら、話を聞きながら、味わってもらう。

目の前の料理から食材へ、生産者さんへ意識が流れ、
そうして食卓と奥にある世界がつながっていく。
そんな体験をしてもらえたことが、とてもうれしかったのです。

来場者と漁師さん、海女さんが一緒に料理を楽しんでいる

漁師さん、海女さんと一緒に食卓を囲み、現場の話をうかがいながら下田の幸をいただきました。実際に漁を行う方々が会場に来てくれたことで、今回の個展がいっそう濃く豊かなものになりました。本当にありがとうございました。

さらに「食卓を囲むって素晴らしいもんだな〜」と思ったのは、
知らない者同士でも自然と会話が生まれ、
知らず知らずのうちに距離が縮まっていくこと。

およそ10人ほどが座れる大きなテーブルを囲みながら
いつの間にかいい空気に包まれ、
食事のあとに連絡先を交換している方がいたり。
「食卓を囲みながら同じ釜の飯を食う」。
その素晴らしさも改めて感じました。

私の好きなふたつのこと「写真」と「食」が融合して、
「食卓」と「生産者」がつながり、
さらに食卓を囲むことで新たな縁が生まれ、
そうしてみんなが満たされ、自分も満たされる。
私がやっていきたいのはこういうことかもしれない。
そんな発見もありました。

大勢が長い食卓を囲んで料理とお酒を堪能中

私が勤めていたマガジンハウスの方々と大学時代の親友たち、さらに夫の元職場の部下たちと夫の飲み仲間、さらに下田の友人が一緒に食卓を囲んで盛り上がるって、本当におもしろかったしうれしかった。