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そんなおふたりのところへ、沙織さんのお兄さんから連絡が入ります。
沙織さんのお兄さんは北海道の富良野でトマト栽培をしている農家さん。
働き手が足りないから、手伝いに来ないかという誘いでした。
考えていても仕方ない、
とにかく行ってみようということで北海道へ旅立ちます。
実際に働いてみるとトマト農家の作業は、
想像をはるかに超える重労働でした。
9000本のトマトの苗木、北海道とはいえ真夏のハウス内は40度超え。
「あれは本当にきつかったよね……」と、
お互いの目を見つめながら当時を思い出すおふたり。
けれど、その経験が実は下田での開業にもつながっていくのです。
それはまたのちほど書かせていただきます。
北海道滞在中、これからどういう暮らしをしていくか
ご夫婦で何度も話し合ったそうです。
実は、生産者側としての苦労を経験したことで、
新たな意識も芽生え始めていました。
食べ物をつくることの苦労、
そしてでき上がったトマトや農作物が驚くほどおいしいこと。
自分たちが身をもって感じたそうしたことを、いろんな人に伝えたい。
「俺はやっぱりピザ屋をやってみたい」と、
健人さんの思いは固まり始めていました。
東京に戻ったおふたりを待ち受けていたのはなんと、
駅前にできたシェアキッチン。
シェアキッチンというのは開業をしてみたい人が
短期的に借りられる店舗です。
北海道に発つときにはなかったシェアキッチンが、
帰京したタイミングで目の前に現れたのです。
「これはもう、やれってことだよねって直感的に思いました」と沙織さん。
そうして初めて自分たちのお店〈FermenCo.〉を持つことになったのです。