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シェアキッチンを始めて数か月、
リピーターも徐々に増えて手応えが感じられたといいます。
そうしていよいよ店舗を持とうと決意し、
都内で物件を探し始めたのですがなかなか出合えない。
ところが、そんなおふたりのところに
またまたターニングポイントとなる連絡が入るのです。
友人がSNSに〈FermenCo.〉のことを投稿したところ、
それを見た現店舗(下田の店舗)の大家さんから連絡が。
下田で空いている物件があるので、お店をやってみませんか?と。
健人さんは今までに何度か下田を訪れたことがあり、
美しい海に惹かれていたそうです。
とりあえず物件を見てみようと、下田に行ってみることに。
空き家物件に足を運んでみると、
海がすぐ目の前という絶好のロケーション。
修繕や改装が必要だけれど、いい店舗になると感じたそうです。
とはいえ東京で開業するつもりでいたし、自宅を新築したばかり……。
しかも知り合いのいない土地で新たな事業を始めるというのは、
なかなか勇気のいる決断です。
「未来を想像したとき、東京でこのまま続けていくのと
下田のこの物件でやるのとどっちに心が動く?
って話したのを覚えています」と沙織さん。
そして健人さんはとひと言、「下田だね」と。
実はこのとき沙織さんは妊娠4か月、
期待と不安が入り混じっていたそうです。
けれど、健人さんから真剣な思いが伝わってきたことや、
自分自身も下田での生活を想像して
ワクワクした気持ちが湧き上がってきたこと。
そして、自分たちなら何があってもどうにかなると思えたのだそうです。
それはあの、トマト農家の経験を経たからでした。
「あの厳しい作業をやり切ったことは、
自分たちにとって本当に大きな経験でした。
この先どんなことがあっても自分たちなら乗り越えられる、
そう思えるようになったんですよね」と健人さん。
「全力でやってみて、失敗したらまたやり直せばいいじゃないか! って
思えたんですよね」と沙織さん。
農家で過ごした時間が、夫婦の絆を深めたのだそうです。