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3年半経って振り返る、高齢者の移住。
よかったこと、不安なこと|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.115

Page 3

母が下田で見つけた、お気に入りの味

母が下田の暮らしで一番楽しいと感じているのは、
みんなで食事をすることです。
週に2、3度はわが家で一緒に食卓を囲み、
それ以外にもよく母の家でお茶をしています。

東京で暮らしていたときには月に数度会うくらいだったことを思うと、
一緒に過ごす時間が格段に増えました。
母は晩酌も好きなので、ビールやワインを片手に食事を楽しみます。
「みんなで食べるとおいしいね~」というのが母の決まり文句。

ビール片手に食事中

母は新潟と山形の県境の漁師町で生まれ育ちました。
お米もお魚もお酒も抜群においしい地域で育った母は、
とても舌が肥えていると感じます。
おいしいものを食べると「これおいしいね~」と必ず言うのですが、
そうでもないときは黙っています。それくらい味に敏感。

そんな母が、この3年半を下田で過ごしてきて
お気に入りのお店を見つけました。

〈松江寿司〉のカウンターに座る津留崎家の皆さん

もともとお寿司が大好物なのですが、
母お気に入りのお店が〈松江寿司〉です。

友人のススメで試しに行ってみたのですが、母も私もおいしすぎて悶絶。
大間のマグロや地物の魚まで、新鮮でいいネタがずらり。
お値段も東京で食べる2分の1くらいじゃない? 
という値段でいただけてしまいます。
そう頻繁には行けませんが、たまのお楽しみに通っています。

中トロの握り

母が注文するのは決まってマグロ、大トロに中トロ、赤身も最高です。

もう1軒、母が大絶賛するお店が
須崎にある割烹民宿〈小はじ〉さんです。
こちらは民宿なのですが、宿泊せずに
食事だけお願いすることもできます(宿泊の状況次第で、
食事だけの受け入れができない場合もあります)。

わが家は入学式のときや、大切なお客さんが来るときには
決まって小はじさんへ出かけます。
さらに、1度だけ家族みんなで宿泊もしました。
「とにかく料理がおいしくて、見た目も上品できれいでね。
贅沢な気分になれるのよね~。
また泊まりたいね、楽しかったな~」とのこと。

〈小はじ〉のご主人小川浩史さん

〈小はじ〉のご主人小川浩史さん。東京で長年修業してきた方で、知識も料理の腕前やセンスも秀逸です。小はじを愛するリピーター客は全国に数知れず。

〈小はじ〉で食事を楽しむ

下田は観光地なので、宿泊施設があちこちにあります。わざわざ遠出をしなくてもすてきな宿にすぐ泊まれる。そんな楽しみ方ができるまちです。

日戻り金目鯛の煮付け

須崎漁港の名物、日戻り金目鯛の煮付け。

洋食でお気に入りのお店もあります。
スペイン料理 MINORIKAWA〉さんです。
こちらも誕生日や結婚記念日に行くことが多いのですが、
母はこのお店で人生初の経験をしました。
それは何かというと、ジビエ料理です。

こちらのお店では地元でとれたイノシシや鹿肉を
丁寧に調理して食べさせてくれます。
母にはイノシシや鹿を食べるという文化がいままでなかったようで、
「イノシシなんて食べるの??」と驚いていました。

そのお肉を恐る恐る口に運んでみると、
「柔らかくておしいね~!」と。
ワイングラスを傾けながら
「東京じゃ、こんな洒落たお店に行ったことないから」と、
幸せそうでした。

〈スペイン料理 MINORIKAWA〉で食事中

ジビエ料理

初体験といえばもうひとつ。
母は米どころの出身でありながら田んぼ作業をいままでしたことがなく、
下田に来て初めて足を踏み入れました。
毎年恒例となっているのが、稲刈りを終えたあとに
田んぼで母と一緒にする落穂拾い。

東京に住んでいた頃、自宅にジャン=フランソワ・ミレーの
『落穂拾い』の絵が飾ってあったそうで、
「あの絵みたいで、なんだか楽しいね」と。

稲刈り後の田んぼに立つ母と娘