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そして、こちらは押入れの中段を撤去した際に見えてきた
壁の内部の様子です。
漆喰の下地として藁を混ぜこんだ土壁が、
竹をわら縄で編んだ「木舞」に塗り込まれているのがよくわかります。
現代では壁にクロスを使用することが多いのですが、
実はクロス(布)とはいうもののほとんどがビニールクロスです
(ほんの一部、紙クロス・布クロスが使われています)。
このビニールクロスは安価で施工も早くて簡単、
施工当初の見た目はよいのですが、
経年劣化が激しいという難点があります。
そして、壁の内部に関しても、クロスに通気性がないので
あまり状態がよくないことが多いのです(服装で例えるなら、
ずっとビニール製の雨合羽を着ているようなもの。不快すぎますね……)。
クロスを剥がすとカビだらけ……なんて現場はよくありました。
でも、この古民家の漆喰とその中の土壁は
築年数を感じないほどにキレイです。
クロスと漆喰・土壁の違いは、素材に通気性があり呼吸すること。
あらためて、その重要性を感じました。
そして、この家に使われている材料が、
丸太に土や藁に竹、杉板という「その辺」で手に入る材料であることに、
あらためて気づきました。すべて、規格化・工業化され、
どこでも手に入る材料で建てるいまの家づくりとは随分違います。
もちろん、いまほど物流やが工業が発達していなかったのでしょうから、
あたり前と言えばあたり前なのかもしれません。
でも、驚いたことが、そんな「その辺」で手に入る材料の
状態のよさなのです。
先ほど説明したクロスもそうですが、
自分がこれまで使ってきたり見てきた規格化・工業化された材料は、
出来上がった当初は見栄えがよいものの、
残念ながら耐久性がないものも多くありました。
例えば、押入れの中段や畳の下地は、
いま一般的に使われるのは「合板」です。
その合板は無垢材と何が違うのか? というと、
無垢材は使用する寸法に加工した木材そのまま、
対して合板は、木を薄くスライスした板を
何層にも接着剤で貼り合わせてつくる板です。
合板は大根のかつらむきのように木材をスライスするので、
太くない木から幅の広い板がつくれます。
何層にもスライスした板を向きを変えて重ねてつくるので強度があり、
安価で、無垢材のように伸び縮みすることもなく扱いやすいので、
建築の現場では欠かせない材料です。
ここまではよいトコロなのですが、残念な点もあります。
接着剤で貼り合わせているので、木が本来持っている
通気性が失われてしまい、木が呼吸できなくなってしまうという点です。
そんなこともあり、湿気が溜まりやすい箇所に使われる合板は
傷みやすく、もちろん状況にもよりますが、
築20年ほどの物件でも畳下地や押入れの合板が湿気で傷んでしまい、
グニャグニャベコベコになっているのを何度も見てきました。
対してこの古民家で使われている無垢材は、
表面こそその年月は感じますし、
あまり厚さもないのでタワミはするのですが、
グニャグニャベコベコという傷んだ感じではないのです。
現に、この家で一部分おそらく40~50年ほど前に
増築・改装された箇所で使われている床の合板は、
グニャグニャベコベコ……。
でも、築80年以上の古い部分の無垢の床は状態がいいのです。