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現代の家と昔の家は何が違う?
古民家をリノベーションしてわかった
昔ながらの家づくり|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.110

Page 3

いまと昔の“あたり前”の違いとは?

作業を進めるなかでこの古民家を細かく見ていくと、
これまで得てきた知識、建築業界の「あたり前」を疑う場面に
多く出くわしました。いまの住宅のつくられ方と、
この古民家が建てられた時代のつくられ方は
想像以上に違っていたのです。

床下にしゃがんで作業中

この古民家が建てられたのはいまから80数年前、戦前の昭和初期。
すごく昔のことのようにも感じますが、自分の母親が生まれた時代、
と考えるとそこまで昔でもない気もしたり。
その長いような短いような年月の間に、
随分と家のつくり方というのは変わるもんだと実感しています。

そんな違いを知って、自分も少なからず
考え方を変えることになりました。
そうして考え方が変わるとともに、
当初とリノベーションの計画が変わってきてもいます。

畳を取った状態の床には杉の板が隙間だらけに敷かれている

こちらは、もともとは畳の広間だったのですが、
キッチンをここに移設しフローリングにするため、畳を取った状態です。
荒板とよばれる杉の板が隙間だらけで敷かれていました。
しかも、それぞれの幅が違う。
これまでリノベーションの仕事で畳をあげると、
ほとんどが隙間なく張られた合板でした。

なので最初、この「隙間だらけ」の荒板を見たときは
「なんて適当なんだ……」と少なからず驚いたのですが、
畳に溜まってしまう湿気を逃がす、
床下の湿気を床上に逃がす、という意味では、
この杉の荒板を「適当」な隙間を空けて張るのがいいのだ
という考えを知ったのです。
いまの、「隙間なく」の気密性重視の家づくりとは随分と違います。

床板が剥がされ床下が見えた状態

さらには、戦後からの法律で定められている
「鉄筋コンクリートの基礎」が立ち上がっていないということもあり、
床下はいまの住宅では考えられないほどに風の通りがよく、
そのおかげか床下にある構造材はとても状態がいいのです。

これまで、基礎に囲まれた築20年から50年くらいまでの
木造住宅の床下を何軒も見てきましたが、
こんなに床下の構造材の状態がいいというのはあまりなかったかも? 
というほどです(残念な状況のもたくさんありました……)。

もちろん耐震性のためには基礎は重要なのですが、
基礎をつくったために床下の構造材が傷んでしまっては
本末転倒な気もします。

その荒板の下地である「根太(ねだ)」は、
現代のように製材されておらず、上側だけを平らにした丸太です。
しかも、その丸太の太さもかなりマチマチ
(上の写真をよく見ていただければわかるかと)。
丸太の根太は、繊維を切っていないので強度があるそうなのです。

ただ、下地の間隔が空きすぎていてかなり「たわみ」があったので、
下地の補強をしました。
補強すると根太はたわまなくなったので、そのまま使用しています。

深夜も明かりを灯して作業

作業に夢中になっていると気づくと深夜……なんてことも。

補強工事を終えた床下

補強工事を終えた床下の様子。風通しがいいのがおわかりになるかと。昔の家は床下に動物が棲みつくことがあったというのも納得できるツウツウ具合……。一応、動物が入らないように周囲に網が張られています。