南伊豆にゲストハウス
〈ローカル×ローカル〉を開いた
イッテツくんのこと

南伊豆にユニークな
ゲストハウスがオープン!

今年4月、南伊豆町に〈ローカル×ローカル〉という名の
ゲストハウスがオープンしました。
運営するのはイッテツくん、こと伊集院一徹さん。
世界一周の旅や地域おこし協力隊などを経て、
なぜ南伊豆でゲストハウスを立ち上げることになったのでしょう?
マンガ連載もスタートしたという多才なイッテツさんの
ゲストハウス開設までのストーリーです。

大事なのは、「誰と何をするか」

年の4月、私たちの暮らす下田の隣町、
南伊豆町に〈ローカル×ローカル〉という
ちょっと変わった名前のゲストハウスがオープンしました。
宿を立ち上げたのは、元地域おこし協力隊の伊集院一徹さんです。

イッテツくんとはもともと知り合いだったこともあり、
新規に立ち上げるホームページの写真素材を
撮影をさせていただきました。

〈ローカル×ローカル〉の客室

エントランス

宿を立ち上げると聞いたとき、正直少し驚きました。
イッテツくんはもともと南伊豆には縁もゆかりもない鹿児島県出身です。
3年間の地域おこし協力隊の任期を終えたのち、
南伊豆にとどまってゲストハウスを開業するとは……。

同じ移住者としてどんな決意をしたのか気になり、
じっくりお話をうかがうことに。

宿主のイッテツくん

宿主のイッテツくん、ゲストハウスのエントランスにて。(写真提供:ローカル×ローカル)

イッテツくんに、どんな気持ちで南伊豆に
宿を立ち上げることを決意したのか聞いてみると、少し意外な答えが。

「移住して骨をうずめる! とかそういうんじゃないですよ(笑)。
南伊豆でも東京でも鹿児島でも、縁があったところで
仕事ができればいいなと思っています。
場所にとらわれるのではなく、“誰と関わっていきたいか”が
僕にとっては重要なので」

宿のフロントの前に立つイッテツくん

イッテツくんの奥に見えるのは、かなり変わったつくりの宿のフロントです。

南伊豆は伊豆急行終点の下田駅から車で20分~30分ほど、
南側は海に面していて、内陸にはのどかな田園風景が広がっています。
人口はおよそ8千人、高齢化率47.3%
(東京は22.67%、2021年4月時点)という、いわゆる過疎地域です。

そこに、地域おこし協力隊としてイッテツくんがやってきたのは
3年前、2018年のことでした。

弓ヶ浜

南伊豆には、白い砂浜が広がる「弓ヶ浜」など、海水浴客やサーファーなどに人気の海水浴場があります。

源泉から湯気が立ち昇る

源泉に恵まれた温泉地でもあります。日帰り入浴のできる施設も多く、毎日温泉三昧ができるという贅沢。

[ff_assignvar name="nexttext" value="描いたマンガが賞を受賞…!?"]
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南伊豆にやってくるまでの道のり

「一時期は同窓会にも顔を出せなかったんですよ、引け目を感じて……」
と言うイッテツくん、これまでいろんな道をたどってきたそうです。

名古屋の大学を卒業したのち、
中学校で特別支援学級の美術講師として勤務。
やりがいは感じたものの、
自分にとってはかなり荷が重いと感じたのだそう。

悩んだ末、1年後に退職、その後ピースボートに乗船したり
デンマークに留学したりと、1年間世界中を旅して回りました。

25歳で帰国してからは
東京のWebマーケティング会社に就職するのですが、
想像していた仕事の内容とのズレに悩み、半年で退職。
大学の同級生たちが社会人として順調に歩むなか、
自分はこんなにも苦戦している……。

その時期はかなり自信を喪失していたそうで、
それこそ同窓会に足を踏み入れられなかったそうです。

エジプトを訪問

ピースボートに乗り世界一周! 当時24歳、エジプトにてスフィンクスを拝む。(写真提供:伊集院一徹)

そうした状況のなかで何かヒントをつかみたいと、
〈シブヤ大学〉などのコミュニティに参加するようになります。
その影響を受け、東京の出版社に再就職して編集者として働き始めます。

ところが、その3年後にまたまた会社を辞職。
知人から「3か月間、ピースボートで仕事をしながら
地球を1周しないか」という声がかかり、
このまま出版社で働き続けるのとどっちがワクワクするのだろうか、と
自問自答した結果、選んだのがピースボートでした。

ここからようやく南伊豆につながっていくのですが、
ピースボートの任期を終え帰国したイッテツくんを待ち構えていたのが、
地方創生事業に関わっている知人からの
「伊豆で仕事をしないか?」という誘いでした。

その知人とはシブヤ大学に参加したときに知り合った間柄で、
具体的には、地域おこし協力隊として
南伊豆で活動するというものでした。

当時、地域おこし協力隊に対してかなり疑心暗鬼だったイッテツくん。
さらに、都市部から地方に移ることに
“都落ち”的な感覚を持っていたので、前向きではなかったそうです。

その気持ちが変化したのはまさに、「誰と何をするか」を優先したから。
その知人と一緒に南伊豆に関わる、
それを考えたときにワクワクしたのだそうです。

「場所というのは、優先順位としては低いんですよね。
僕の場合は“誰と”ってことが重要なんです」

このあたりの詳しい経緯は
こちらの漫画で見ていただけたらと思うのですが、
実はイッテツくん、マンガ家としても活動しているという多才ぶり。

イッテツくんの描いた漫画『ローカル×ローカル』が、
第2回 幻冬舎×テレビ東京×noteコミックエッセイ大賞、
cakes賞を受賞し、今月から『cakes』で連載が始まったのです。
考えさせられるところもあり、正直すごくおもしろいです。ぜひ。

漫画『ローカル×ローカル』のメインイメージ

2017年夏。東京の出版社で働く編集者のイッテツは、突然友人のフリーランス・ヤノモトから呼び出されます。乾杯も束の間、「伊豆で働かないか?」との相談。地方なんて、「仕事がない」「閉鎖的」「刺激がない」、そんな現実を知っていた地方出身者のイッテツでしたが……。

[ff_assignvar name="nexttext" value="地域活性化は誰のため?"]
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小さい主語で発信する地域の魅力

イッテツくんが協力隊に着任してまず立ち上げたのは、
『南伊豆新聞』というローカルメディア。

「その人の人生を追体験できる記事を心がけている」という言葉どおり、
まちに住んでいる魅力的な人物に焦点を当て掘り下げて紹介しています。
イッテツくんの話のなかで印象的だったのが、
「地域を活性化させるという言葉をよく耳にするんですけど、
地域って誰のこと? 誰のため? って疑問に思うんですよね。
目に見えない戦いなのか」と。

「南伊豆に〇〇さんっていうすてきな人がいるんです! 
と語ることはできるけれど、
南伊豆のために! という語り方は僕にはできません。
地域という大きい主語ではなく、もっと小さい主語で
自分の住んでいるまちの魅力を発信したいと思っています」

Webサイト『南伊豆新聞』の画面

宿の名前のローカル×ローカルにも、そうした意味がこめられています。
ローカルという言葉には地方とか地域という意味もありますが、
局所とかポイントという意味も持ち合わせています。

イッテツくんがイメージするところのローカルは、
地域でもあるけれど、究極突き詰めていくと、個人というポイント。
その個人と個人のかけあわせで
気持ちのいいコミュニケーションが生まれたら、
都市も地方も関係なく混ざり合うことができると考えているのです。

ほかのお客さんや地元の方と食卓を囲む

ゲストハウスには共有スペースがあります。ほかのお客さんや地元の方と一緒に食卓を囲むことができるのも、この宿の醍醐味(新型コロナ感染予防に十分配慮し、状況に応じて対応しています)。

『南伊豆新聞』を立ち上げたあと新たに始めたのが、
「南伊豆くらし図鑑」という体験プログラムです。
それもやはり個人と個人のかけあわせなのですが、
例えば伊勢海老漁師さんや米農家さんなど、
地元の方の日常に1対1でお邪魔させていただくというもの。

「まずは自分が人と人とをつなげるハブになって、そのうちに
僕を介さずに直接つながっていってくれたらと思っています」

実際にくらし図鑑を体験した都市部の方が、
その後、地元の方と直接連絡を取り合っている姿も見られるそうです。

「南伊豆くらし図鑑」Webサイト

実際の体験プログラムの様子

漁師さんのもとで、伊勢海老を網から外す作業のお手伝い。(写真提供:南伊豆くらし図鑑)

薪割り体験

〈パン工房 森への入口〉で、薪割りを体験。自然のなかで暮らすことの厳しさや豊かさについて教えていただけます。

雑木林を歩くプログラム参加者

パン屋を営む島崎さんご夫婦は、うっそうとした雑木林を自らの手で開拓。このような清々しい森へと生まれ変わりました。撮影時、何度も何度も深呼吸してしまいました。本当に気持ちのいい空間です。

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いよいよ宿の開業を決断

『南伊豆新聞』というローカルメディア、
「南伊豆くらし図鑑」という体験プログラムを運営して2年。
これだけで収益を上げるのは難しいと考えていたイッテツくんは、
隊員卒業後を見据えて、次の事業を考え始めます。

実は以前、賃貸物件を借りて仲間12人と一緒に
〈giFt〉というコミニュティスペースを運営していました。
ところが物件の更新にともない手放すこととなり、
そのスペースは空き家に。

「このままではもったいない。この場所を生かすならなんだろう……」
そう考えた末、『南伊豆新聞』と「南伊豆くらし図鑑」が
連動した宿をやってみたらどうか、と思いたったそう。

「もともとゲストハウスをやりたい! と思っていたわけでもなく、
ただ目の前にそうした条件があったことと、
自分がやってきたことの延長線が交わったからなんです」
とイッテツさん。

空き家になった状態

コミュニティスペース〈giFt〉として使われたあと、空き家になった状態。ここから〈ローカル×ローカル〉としてのリノベーションが始まりました。

リノベーションの参加者

リノベーションは〈TEAMクラプトン〉に依頼。業者さんに頼んでしまう方法もあるけれど、ただつくってもらうだけではもったいない。近所のお祭りに参加するように、いろんな人に宿に関わってもらいたいと考えました。

全員で食卓を囲む

施主やその友人知人、いろんな人を巻き込んで一緒にものづくりをするというやり方がTEAMクラプトンの「DIT(Do It Together=みんなでつくろう)」。全員で食卓を囲み、昼食を。

壁面用木材を手づくり中

壁面に使用した木材はなんと手づくり。伐採した木から切り出した丸太を斧で割り薄い板をつくる、という途方に暮れるようなことを、みんなでせっせと共同作業。

ところが「宿をやろう!」と決意した翌月に
新型コロナウイルス感染症が拡大。
予定していたリノベーション工事も遅れ、
もちろん開業も事態が落ち着くまで延期となってしまいました。

延期に延期を重ねたのち、今年、2021年4月1日に
ようやく無事オープンとなったのです。

窓際で読書を楽しむ

部屋は3室、すべて個室なのでゆっくりくつろぐことができます。

客室でノートパソコンを開き仕事中

温泉や海を楽しみながらのワーケーション、おすすめです。

浜辺でタブレットを開く

[ff_assignvar name="nexttext" value="お客さんの反応は…?"]
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コンセプトは「暮らしの寄り道」

オープンしてから、すでに「南伊豆くらし図鑑」のプログラムを
体験した宿泊客もいます。お客さんの反応は?
「いい意味で、へこんで帰っていくお客さんもいるんですよ」
とイッテツくん。

「自分は、いまの暮らしを続けていていいのだろうか……」
「都会のほうが先進的だと思っていたけど、
どっちが先進なんだろうか……」などなど。
南伊豆の方の暮らしを目の当たりにすることで、
発見や気づきを得るようです。

「南伊豆くらし図鑑」のプログラムを体験中

宿のコンセプトは「暮らしの寄り道」。
いろんな生き方に触れることで、自分の暮らしを振り返ったり、
改めたりする機会になればという思いからです。

そもそもイッテツくん自身が、寄り道ばかりの人生を歩んできました。

「寄り道をしながらいろんな人と出会って、
いろんな生き方に触れることができたからこそ、
いまの自分がある気がします」

私も過去、自分の暮らし方に迷っていた時期がありました。
そんなとき、自然と惹かれていったのは地方で暮らす人々の姿でした。
「何もない」と思われがちな地方で、とても豊かに暮らす人の姿。
「あ、そういうことだったのか」と、
だんだんと自分の進むべき方向が見えてきたのです。

きっと私のような人が南伊豆を訪れて、
これからの暮らしのヒントを得られるのかもしれない。
そんな想像をしています。

青野川のほとりで休憩する参加者

宿のそばを流れる青野川。温泉のついでにちょっと寄り道。

information

map

ローカル×ローカル

住所:静岡県賀茂郡南伊豆町下賀茂842-3

TEL:07015366147

Mail:info@local2minamiizu.com

Web:ローカル×ローカル Twitter note

予約:宿の予約はこちらから

information

マンガ『ローカル×ローカル』

information

noteライブ告知画

noteライブ
地方移住クリエイターとして、暮らす

真鶴出版の川口瞬さんと伊集院一徹さんのオンライントークイベントが開催されます。

日時:2021年7月6日 20:00~21:00

Web:note event

文 津留崎徹花

text & photograph

津留崎徹花 Tetsuka Tsurusaki
つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。移住先を探した末、伊豆下田で家族3人で暮らし始める。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。

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