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イッテツくんが協力隊に着任してまず立ち上げたのは、
『南伊豆新聞』というローカルメディア。
「その人の人生を追体験できる記事を心がけている」という言葉どおり、
まちに住んでいる魅力的な人物に焦点を当て掘り下げて紹介しています。
イッテツくんの話のなかで印象的だったのが、
「地域を活性化させるという言葉をよく耳にするんですけど、
地域って誰のこと? 誰のため? って疑問に思うんですよね。
目に見えない戦いなのか」と。
「南伊豆に〇〇さんっていうすてきな人がいるんです!
と語ることはできるけれど、
南伊豆のために! という語り方は僕にはできません。
地域という大きい主語ではなく、もっと小さい主語で
自分の住んでいるまちの魅力を発信したいと思っています」
宿の名前のローカル×ローカルにも、そうした意味がこめられています。
ローカルという言葉には地方とか地域という意味もありますが、
局所とかポイントという意味も持ち合わせています。
イッテツくんがイメージするところのローカルは、
地域でもあるけれど、究極突き詰めていくと、個人というポイント。
その個人と個人のかけあわせで
気持ちのいいコミュニケーションが生まれたら、
都市も地方も関係なく混ざり合うことができると考えているのです。
ゲストハウスには共有スペースがあります。ほかのお客さんや地元の方と一緒に食卓を囲むことができるのも、この宿の醍醐味(新型コロナ感染予防に十分配慮し、状況に応じて対応しています)。
『南伊豆新聞』を立ち上げたあと新たに始めたのが、
「南伊豆くらし図鑑」という体験プログラムです。
それもやはり個人と個人のかけあわせなのですが、
例えば伊勢海老漁師さんや米農家さんなど、
地元の方の日常に1対1でお邪魔させていただくというもの。
「まずは自分が人と人とをつなげるハブになって、そのうちに
僕を介さずに直接つながっていってくれたらと思っています」
実際にくらし図鑑を体験した都市部の方が、
その後、地元の方と直接連絡を取り合っている姿も見られるそうです。
漁師さんのもとで、伊勢海老を網から外す作業のお手伝い。(写真提供:南伊豆くらし図鑑)
〈パン工房 森への入口〉で、薪割りを体験。自然のなかで暮らすことの厳しさや豊かさについて教えていただけます。
パン屋を営む島崎さんご夫婦は、うっそうとした雑木林を自らの手で開拓。このような清々しい森へと生まれ変わりました。撮影時、何度も何度も深呼吸してしまいました。本当に気持ちのいい空間です。