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岡山を出て自分たちに合う場所を探そうと決め、
思い浮かんだのが伊豆だったそうなのですが、その理由がおもしろい。
たまたまつけたテレビで『ブラタモリ』が放送されていて、
タモさんが天城山を歩いて越えるという企画。
その映像を見てふたり同時に
「伊豆、いいなぁ~」とつぶやき、
「伊豆に住みたい!」とすぐに意気投合したのだとか。
伊豆は山がとても深く、そのはるか彼方は海へとつながっている。
そんな伊豆特有の景色に心が踊ったそうなのです。
以前にも伊豆をバイクで一周したことがあったそうで、
そのときの印象もとてもよかったといいます。
移住先を考えた当初は地震などの災害を考えて避けたのですが、
最近では日本中どこでも災害が降りかかる可能性があります。
だったら伊豆に住んでみるのもありなんじゃないか、と
ご夫婦で話し合ったそうです。
そうして、その数か月後に移住先の候補地として伊豆を訪れました。
「もしブラタモリ観てなかったら、伊豆に住んでなかったのかな?」
と私が聞くと、
「ひょっとしたら別の場所に住んでたかもしれませんね」
と笑っていました。
その後、2019年の6月に河津町へ移住。
友人の家を短期的に借りながら、
カフェと工房が併設できる物件を探し始めました。
「河津に移住する時点で、お店をやることは決めていたの?」
という問いに、うなずくご夫婦。
東京や岡山でハードな会社勤めを経験し、
もう雇われて消耗するのはやめようと夫婦で話し合ったのだそうです。
それには自分たちで仕事をつくるしかない、
自分たちの個性を生かせるカフェと藍染工房をやろうと。
そうして先月、〈くーさんの焙煎所〉というカフェと、
裏庭には藍染体験ができる工房を開設しました。
もともといろんな喫茶店に通うのが好きだったご夫婦、
提供しているコーヒーにはとてもこだわりがあります。
使用している豆は環境にも人にも負担のないものをと、
有機栽培かつフェアトレードの豆。
それを50度のお湯で洗うことによって
傷んだ豆やカビなどの付着物を取り除き、
さらになんと手で焙煎しています。
私も手焙煎を経験したことがあり、
なんと時間のかかることかと痛感しました。
けれど、その作業がとても楽しいのだと雅文さんは話します。
気温や湿度によってかかる時間にも変化があり、
それを五感で感じながら経験を照らし合わせて仕上げていく。
そうした工程に魅力を感じるのだそう。
コーヒーの焙煎は雅文さんが担当、ランチの仕込みや調理は敦子さん、
接客はご夫婦おふたりで行っています。