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〈くーさんの焙煎所〉
河津町に移住し、小さなカフェと
藍染工房を開いた夫婦|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.088

Page 3

こだわりの豆を手で
焙煎して淹れるコーヒー

岡山を出て自分たちに合う場所を探そうと決め、
思い浮かんだのが伊豆だったそうなのですが、その理由がおもしろい。

たまたまつけたテレビで『ブラタモリ』が放送されていて、
タモさんが天城山を歩いて越えるという企画。
その映像を見てふたり同時に
「伊豆、いいなぁ~」とつぶやき、
「伊豆に住みたい!」とすぐに意気投合したのだとか。

伊豆は山がとても深く、そのはるか彼方は海へとつながっている。
そんな伊豆特有の景色に心が踊ったそうなのです。

下田の海

以前にも伊豆をバイクで一周したことがあったそうで、
そのときの印象もとてもよかったといいます。
移住先を考えた当初は地震などの災害を考えて避けたのですが、
最近では日本中どこでも災害が降りかかる可能性があります。
だったら伊豆に住んでみるのもありなんじゃないか、と
ご夫婦で話し合ったそうです。

そうして、その数か月後に移住先の候補地として伊豆を訪れました。
「もしブラタモリ観てなかったら、伊豆に住んでなかったのかな?」
と私が聞くと、
「ひょっとしたら別の場所に住んでたかもしれませんね」
と笑っていました。

軒先から愛犬が顔を出す

その後、2019年の6月に河津町へ移住。
友人の家を短期的に借りながら、
カフェと工房が併設できる物件を探し始めました。

「河津に移住する時点で、お店をやることは決めていたの?」
という問いに、うなずくご夫婦。
東京や岡山でハードな会社勤めを経験し、
もう雇われて消耗するのはやめようと夫婦で話し合ったのだそうです。
それには自分たちで仕事をつくるしかない、
自分たちの個性を生かせるカフェと藍染工房をやろうと。

自宅内につくられた〈くーさんの焙煎所〉カフェ

自宅内のひと部屋を利用したカフェには、ちゃぶ台と座布団が置かれ、田舎のおばあちゃんの家に遊びに来たような懐かしい雰囲気。

久城ご夫妻

そうして先月、〈くーさんの焙煎所〉というカフェと、
裏庭には藍染体験ができる工房を開設しました。

もともといろんな喫茶店に通うのが好きだったご夫婦、
提供しているコーヒーにはとてもこだわりがあります。
使用している豆は環境にも人にも負担のないものをと、
有機栽培かつフェアトレードの豆。
それを50度のお湯で洗うことによって
傷んだ豆やカビなどの付着物を取り除き、
さらになんと手で焙煎しています。

私も手焙煎を経験したことがあり、
なんと時間のかかることかと痛感しました。
けれど、その作業がとても楽しいのだと雅文さんは話します。
気温や湿度によってかかる時間にも変化があり、
それを五感で感じながら経験を照らし合わせて仕上げていく。
そうした工程に魅力を感じるのだそう。

コーヒー豆を洗浄

庭先に設置された焙煎スペース

焙煎されたコーヒー豆

世界遺産マチュピチュのさらに奥にあるコチャパンパ村で栽培されたコーヒー豆。自然農法で手摘みされた貴重な豆で、JAS有機認証・フェアトレード認証されています。

瓶詰め・袋詰めのコーヒー豆

コーヒー豆は地元の直売所でも販売しています。〈河津桜観光交流館〉、下田の農産物直売所〈旬の里〉にて。

コーヒーの焙煎は雅文さんが担当、ランチの仕込みや調理は敦子さん、
接客はご夫婦おふたりで行っています。

コーヒーの原液

アイスコーヒーは小さい器に入っているコーヒーの原液を、お客さん自らで好みの濃度に水で割ってもらうという、これもまた変わった手法。手間ひまのかけられたコーヒーは雑味がなく、すっきりと体に馴染むような味わいです。

鹿肉を使ったミートパイ

日替わりでカレーやパイなどのランチセットもいただけます。この日は地元の鹿肉を使ったミートパイ。

紅型作家・石塚淳さん作のコースター

下田在住の紅型作家・石塚淳さんによるコースター。