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多拠点居住のサブスクリプション施設
〈LAC伊豆下田〉と
空き倉庫のリノベーションプロジェクト|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.087

Page 3

地域の建築現場が抱える問題

大工がいないと何が問題なのか? と思われるかもしれません。
でも、地域の住環境を維持していくためにも、
地域に一定数の大工は必要なのです(昨年あった大型台風で、
被災地域で住宅の復旧にすごく時間がかかりました。
これも大工不足が原因ともいわれています)。

業界団体の名簿を見ると、最も多いのは60代。70代も多い。
40代、50代はまだいるのですが、20代、30代がほとんどいない。
もちろん10代もいない、といった感じでした。

あと10年、20年たったらどうなるのか? 
このまちに必要な大工が足りなくなってしまうのでは?

一般的には工務店の経営者は、当面の自社の職人確保や
仕事の確保に目を向けることはあっても、
地域の問題としての大工不足を考えることはないのでしょう。
でも、山本さんは生粋の下田っ子、そして生粋の大工。

長い間、この地でコツコツとやってきた実績と、
お客さんに信頼される人柄、そして技術力がある山本さんのもとには
常に仕事の依頼がきます。
でも、人手不足によりスムーズに対応できない。
多くのお客さんに長く待ってもらっている状況なのです。

下田時計台フロント

昨年は下田駅前のランドマークともいえる土産物店・レストランの〈下田時計台フロント〉の大規模改修工事を行いました。

これは地域のほかの工務店から聞こえてくる話でもあります。
仕事はある、でも人手が足らず仕事が回らない。

そんな状況が続いていることから、
地域に若い大工がいない、大工が少なすぎるという問題を
山本さんは人一倍真剣に考えて、憂いていたのです。

そもそも、若い世代は、大工のような現場仕事、
肉体労働をやりたがらない。
その要因について、山本さんが痛切に感じていたことがあります。

それは「建築業界」のイメージの悪さです。
どんなイメージかというと……
厳しい上下関係。不安定な雇用状況。
決して、ガラがいいとは言えない職人の雰囲気。
といった負のイメージです。

少なくとも山本建築の環境はまったく違うのですが、
こんなイメージがあっては、
若者は建築業界に入ってきたいと思うわけがない。
まずは、そこを変えていかなければいけないのでは?

そして、地域に若者が戻ってきたくなるには
この地域をどうしていくべきか? それには何が足りないのか?

下田の海とまち並み

移住して東京との違いを感じたことのひとつに、地域の人たちが地域の行く末を自分ゴトとして考えていることです。東京は自分ゴトと考えるには規模が大きすぎるのかもしれません。(撮影:津留崎徹花)

建築業界のイメージを変える。
そして、若者が働きたいと思うようなまちにする。
まずは、これを実現していかなければ、
このまちの大工は減っていくばかり。若い世代も増えることはない。
山本さんはそう話していました。

とはいっても地元の一企業ができる話ではないのかもしれません。

そんなときに、流れが変わるふたつの出来事が
山本さんの身の周りに起こったのです。