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僕が高橋養蜂を手伝い始めた2017年頃は
特にその木だけが目立って育っているという感じはありませんでした。
その翌年、2018年の春には農園をぐるりと囲う獣害対策の柵が完成。
鹿に草を食べられてしまう柵の外は草木が育たない。
柵の内側は草木が元気。如実にその違いが現れて驚きました。
でも、あるとき、ふと気づきました。
柵の外でも中でもある特徴的な葉をした木が妙に元気なことに。
調べてみると、これが「ナンキンハゼ」という木でした。
「あれ、この木、柵の外でもぐんぐん育ってる……?
鹿が嫌いな木なんだな。
こういう鹿が嫌いな木がおいしい蜜をたくさん出してくれたら
ミツバチにとってはいいのになあ……」
当初はそれくらいに軽く考えていました。
でも、昨年の春には、そんなに軽く考えられないほど、
その木の勢いがすごいことになっていたのです。
これはどう考えてもおかしいぞ……と、
あらためてナンキンハゼのことを調べてみました。
ナンキンハゼは中国原産の落葉樹で、
きれいに紅葉し育てるのに手間がかからないということから
一時期、街路樹や庭木として多く植えられた木だそうです。
でも、当初は庭木や街路樹として導入されたナンキンハゼが、
異常繁殖する事態が発生しているという報告もありました。
この地と同じく鹿に悩まされる地域では、
鹿が食べない樹種であることからか、余計に異常繁殖が進むようです
(鹿といえば、の奈良でも増えすぎて問題となっているようです)。
この農園のナンキンハゼも、きっと近辺で
庭木や街路樹として植えられていたものの種が、
何かのきっかけでここに行きついて繁殖を始めたのでしょう。
この勢いで増えたら農園も、そして、この周辺も
ナンキンハゼだらけになってしまうかもしれない。
そんなぞっとするような想像をしてしまうほどの勢いです。
虫、動物ではヒアリ、アライグマ。
植物ではセイタカアワダチソウなど。
外来種がたびたび問題になっていますが、
こんなに身近にそうした事態が起きるとは……そんな思いでした。
では、まずは敵を知ろうと、ツルハシとスコップで
ナンキンハゼを抜いてみました。
腰までもないような小さい木なら抜けなくはないのですが、
それ以上の大きさになったものはとても歯が立ちません。
そうこうしているうちにもどんどん増えていきます。
これは人力ではどうにもならない……と林業を営む友人に相談し、
ユンボで引き抜いてもらうことになりました。