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その翌日。
いつも釣った魚をいただく漁師さんのところを訪ねる用事がありました。
妻と相談して、その漁師さんにいつものお礼ということで、
アナグマの肉をお土産に持って行ってみようか? と。
漁師さんなので、日々さまざまな魚を食べているとのことでしたが、
アナグマは未体験とのことでした。
おそるおそる感はありましたが喜んでいただきました。
で、さらにお返しにと、
「庭になってる枇杷とニューサマーオレンジ持ってって!」
となり、結果、果物を山ほどいただいてしまったのです。
伊豆ではこの時期、あちらこちらに枇杷がなっています。庭木が多いのですが、森の中に自生しているような木も見かけます。自生するくらいですから、この地に合っているようで農薬を使って育てる人はあまりいなさそうです。東京で「無農薬の枇杷」といったらかなり高級品だった記憶があります。葉にも薬効があるとされていて、葉だけでもネットではびっくりするような金額で取引されていました。
いつも魚をもらうので、そのお礼にとアナグマの肉を渡したら、
果物が山ほど返ってくる。
そんな物々交換もなんとも楽しくもありがたい、
そう感じた出来事でした。
ニューサマーオレンジは九州宮崎や四国高知でも栽培が盛んな柑橘で(宮崎では「日向夏」、高知では「小夏」)、伊豆半島でもよく見かけます。移住してからすっかり身近になり好きになった果物です。こちらも無農薬。甘くておいしいですよ~。
いまの社会では「豊かさ」の指標というと、一般的には「GDP」、
「国民ひとりあたりのGDP」という数値で測られています。
釣った魚や罠にかかった獣を食べても、
魚と獣と果物の物々交換といったやり取りをしても、
「金銭のやり取り」がないので、それがどんなにおいしくても、
ありがたくても、GDPの数値にはまったく反映されません。
つまり、このコロナ禍の影響で日本を含め
各国の数値が下がったと騒ぎになってる
GDPには反映されない「豊かさ」でもあります。
たしかに、東京のような大都市での暮らしにおいて
豊かさの指標はGDPという数値に
かなり如実に反映されるのかもしれません。
ただ、食を生産できる地方の暮らしにおいては、
必ずしもGDPのような数値だけが
豊かさの指標ではないということをあらためて痛感しています。