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昨年は残念ながら見ることのできなかったはんば漁。
今年はなんとか立ち会いたいと、
口開けの予定が見えたら声をかけてほしいとお願いしていました。
友人の宮原則幸さんは奥様の理恵さんとパン屋を営みながら、
義母である清美さんと漁にも出ていて、
「半漁半パン屋」という、とても珍しい働き方をしています。
いつかこの連載で取材してみたい、というのはさておき。
例年なら1月に口開けする磯海苔ですが、
今年はいろんな状況が重なりなかなか開きませんでした。
そして2月に入ったある日、
「明日はんば採りに行くよー」
と則幸さんから連絡をもらいました。
昨年から気になっていたはんば漁、
1年越しで見せていただけることになったのです。
向かった先は、水仙祭りなどの観光名所としても有名な
爪木崎(つめきざき)。
そのシンボルでもある灯台下の海が宮原家の漁場です。
清美さんは御年83歳、白波の立つ海の中をスイスイと自由に動き回り、
さらに岩の上をひょいひょいと渡っていく。
その足取りに置いていかれまいと、私も必死にあとを追います。
2月といえばまだ寒さが厳しい頃。
ウェットスーツに身を包んでいるとはいえ、
海風を受けながら長時間海水に浸かるのだから体に堪えます。
およそ4時間ほどの漁を終えて海から上がってきた清美さん、
「今日はけっこうとれたよ~」と満足した様子です。
ほっとひと息ついたところで、ここからがまたひと苦労。
「さ、行こうか」ということで、
軽トラを停めてある場所まで重たい籠をかついで行きます。
しかも、この日の漁場から車までは道なき道、
いや、道なき崖? をロープをつたって登っていく。
私もカメラをかばいながらロープを握り締めて登ったのですが、
足元はずりずり滑り、さらにハーハー息が切れて途中でストップ……。
そこを清美さんが木の枝を払いながら勇しく登っていくのです、
背には重たい籠を背負って……すごい……。
軽トラに籠を下ろすと「は~」と清美さん。
ようやくここまででひと段落。