Page 2
下田で暮らしていると、都会とは違う楽しみが
いろいろとあるのですが、そのひとつが直売所の存在です。
東京では野菜を買うのもスーパーや駅ビルでしたが、
下田ではよく直売所に行きます。
買いものはもちろんですが、ちょっと疲れたときや
気分転換したいときも直売所へ出かけます。
ずらりと並んだ生命感のある野菜を見ているだけで、
なんだかウキウキして元気になるのです。
直売所には野菜や果物のほか、ジャムなどの加工品や
豆や海藻などの乾物も販売されています。
移住して間もない頃、海藻類のコーナーで
「はんば」という商品を見かけました。
見た目は干しわかめがギュッと詰まって板状になっているような感じ。
これはなんだろうと手にとってみたものの、
どうやって食べるのかわからないうえに、
お値段もひと袋2千円前後とお高く、購入にはいたりませんでした。
その後下田で暮らしていくうちに、
このはんばが地元の人にとても好まれているものだと知りました。
居酒屋に行くと「これおいしいんだよ~」と
シメに「はんばご飯」を出してくれたり、
直売所でも見かけたらすぐに購入しておかないと
売り切れてしまうのです。
昨年、友人がやっているパン屋へ出かけたときのこと。
お店のかたわらで、たまたま友人のお母さんが
はんばの出荷作業をしていました。
お母さんは現役の海女さんで(前回、夫が書いた記事でも
ご紹介しています)、採ってきたはんばのゴミを取り除いたり、
枠に流し入れたりしていたのです。
深い緑色をしたピチピチのはんばを見て、
「わ~、これが直売所で見たはんばの原型か!」
とうれしくなって写真を撮らせてもらいました。
そして、海ではんばの漁をしているところも
見てみたいという興味がふつふつと湧いてきたのです。
けれどその時期にはもう収穫期も終盤で、タイミングが合わず、
昨年は叶いませんでした。
海藻類はほんの限られた時期にしか収穫できません。
例年だと1月にはんばなどの磯海苔の漁が解禁になり、
その後わかめやひじき、そして天草と続きます。
漁が解禁になることを「口開け」というのですが、
その日程は各地域の漁協が協議して決めます。
海藻の生育具合や潮の満ち引き、
さらに気象状況にも大きく左右されるので、
毎年決まった時期に漁ができるわけではないのです。
そうしたことも、下田に住むまでまったく知らずにいました。