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伊豆への移住に乗り気でなかった妻が、
下田での暮らしを楽しんでいる理由|Page 4

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.079

Page 4

移住してからの妻の変化

ここで、僕としては移住先として伊豆はどうだろうか? 
と、提案したこともありました。
でも、妻は「移住先としては伊豆はない」と難色を示していました。

伊豆といえば観光地。
コロカルの撮影で出会い、刺激を受けたような、
「生きる知恵」のある人たちは観光地にはいない、
目指すような暮らしは観光地ではできない、
そんなイメージだったようです。

というのも、妻は幼少の頃から毎年のように
家族で伊豆を訪れていたこともあり、
あまりに観光地のイメージが強かった。
しかも、何度も行ったことで行き尽くしたというイメージを持っていて、
いまさら、伊豆に暮らしたいとは思えなかったのです。

でも、紆余曲折の移住先探しの旅の結果、
伊豆の下田に移住することになりました。
僕としては念願の移住先が決まり、
これからの暮らしに夢を描いていたとき、
実は妻はまだ下田という観光地で暮らすことに
少なからず疑問を感じ続けていました。

下田の海

果たして、ここで自分たちが望んでいたような暮らしが
できるのだろうか? 
そんな暮らしをしているような人がいるのだろうか? と。

お気づきかもしれませんが、妻は結構……
いや、かなり、思い込みが強いタイプです
(まあ、人間は思い込みの生き物とも言われます。
ので、人間らしいと言えば人間らしいのですが……)。

そんな妻の下田に対しての思いが変わり始めたのは、
偶然にもこんなシーンに遭遇した頃からだったかもしれません。

天草納屋で出荷作業をする海女さんたち

わが家が下田に移住して間もない頃、
東京から遊びに来ていた友人家族と、自宅近くの観光名所
「須崎恵比寿島」に出かけたときのことでした。
その駐車場の片隅にある小屋の中で何やら作業する方たちを見かけ、
妻の「カメラマンとしての衝動」がむくむくと湧いているのが
横にいてもわかるほど。

こうなると止められません。
ちょっと撮影させてもらってくる! と突撃。
全然ちょっとで帰ってこないという、わが家の旅先で
よくあるパターンが、ここ下田でも繰り広げられたのでした。

出荷作業

観光名所の傍らに、ひっそりと佇む作業小屋。
地域の人にとっては特に気にもとめない
当たり前の「営み」なのかもしれません。
でも、妻にとってはその「営み」が
観光名所よりも魅力的に映ったようでした。

こんなこともありました。

はんばのりの出荷作業をする宮原清美さん

こちらは、いまでは仲良くさせていただいている
パン屋〈そとにわ〉を営む方のお母さまで、
御年83歳の現役の海女さん、宮原清美さんです。

移住して間もない頃、パンを買いに行くと、
工房の横で下田名産「はんばのり」の出荷作業をしている
お母さまがいらして……。
また、妻の「カメラマンとしての衝動」がむくむくと湧き始めました。

はんばのりを干す

宮原さんは畑で多くの作物もつくっていてそちらも絶品。スーパーの食品棚が空っぽでも困らない生き方です。

このような出会いを重ねて、妻が観光地・下田に対して
思い描いていたイメージが変わっていきました。
コロカルの取材で出会ってきたような
「生きる知恵」のある人たちがここにも多くいたのだ。
ここでもそんな暮らしができるのだ、と。