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伊豆への移住に乗り気でなかった妻が、
下田での暮らしを楽しんでいる理由|Page 5

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.079

Page 5

暮らしてみなければ出会えなかった光景

下田といえば……白い砂浜のビーチ、黒船・開国の歴史、温泉、金目鯛。
サーフィンやカヤック、釣りといったマリンスポーツのメッカ。
そうした派手な観光資源のイメージが強すぎたのかもしれません。

漁師さんを撮影する妻

サザエ、アワビの漁をする漁師さんを撮影する妻。実はこちらの漁師さんは娘の小学校の同級生のお父さん。

お昼ごはん中の漁師さんたち

この須崎爪木崎周辺には「俵磯」と呼ばれる柱状の岩が織りなす景色が広がっています。昨年、大物女優がこの場所を舞台にCMを撮影したこともあり、特に人気のスポットとなっています。

もちろん、観光地・下田を成り立たせるためには
派手な観光資源も必要でしょう。
でも、妻はそんな観光資源のすぐ傍らで行われている
地域の方々の日常の営みに出会うたびに、
下田での暮らしを楽しめるようになっていったのです。

天草を干す光景

天草(てんぐさ)を須崎恵比寿島の港の駐車場に干す光景。毎年通っていても、行き尽くしたと思っても、暮らさなければ出会えない景色がある、そんなことをあらためて感じました。

そして、妻がこうして撮りためた写真が
昨年、陽の目を見る機会に恵まれました。

雑誌クロワッサン誌面

雑誌『クロワッサン』2019年5月25日号にて
下田の海藻が特集されたのです。
妻が撮りためた写真は、クロワッサンの編集部や
デザイナーの目にも魅力的に映ったようで、
6ページにもわたって掲載されることになりました。

妻としては、東京の編集者やデザイナーといった人にも、
自分が魅力を感じていた下田の観光資源ではない側面、
地域の人にとって日常の「営み」の光景が、
魅力的に感じられるのだと、とてもうれしかったと言います。

朝焼けの中で準備中の漁師さん

朝焼けの中、漁に出る準備をする漁師さん。下田東急ホテルの冊子『マ シェール メール』掲載のこの写真を見て、東京からこの地に足を運んでくれた人がいたそうです。

講演の最後、こんな言葉で締めくくりました。

「まちを元気にしよう、観光を盛り上げよう、なんて
たった3年しか住んでいない移住者の私が簡単に言えることじゃない、
そう思っています。
ただ、ワクワクしながらシャッターを切りたくなってしまうような
魅力的な人たちや、昔ながらの営みがこの伊豆にあるんだ、
ということを、この3年で実感しました。

そうしたこのまちの財産が、誰かの目にとまり
実際に伊豆に足を運んでくれて、それで地域の人が元気になったら、
そんな連鎖が起こったらと想像すると、なんだか楽しいですよね」

妻や僕、そしてほかにも多くいる
東日本震災で価値観の変化を余儀なくされた
「都会での消費する暮らし」を続けていた人にとっては、
こうした日常の「営み」にこそ価値が感じられる。
妻はそのことを地域の人たちに伝えることができたら、
と考えていたのだと思います。

雑誌をもった海女さんたち

写真が掲載されたクロワッサンを持って海女さんたちの作業小屋にうかがい、報告とお礼を。笑顔がすてきすぎます~!

ありがたいことに講演当日は、多くの友人や
仕事でお世話になっている方が足を運んでくれました。
緊張しまくっていた妻としては心強かったことでしょう。

「あ~、下田って本当にいいところだね、ありがたいね~」
としみじみと呟く妻。
この講演をしていっそう「下田愛」が深まったように見えます。

そんな妻が、この先どんな「営み」に魅力を感じて
シャッターを切っていくのか? 
身内の僕としても楽しみでなりません。

はんば海苔漁の様子

つい先日、この季節の旬の「はんば海苔」漁の撮影に行くという妻に僕も同行し、見学させてもらいました。観光地下田のひとつの名所ともいえる爪木崎灯台のふもとの海が、地域の人たちによって脈々と引き継がれてきた大切な「営み」の舞台なのです。その光景のあまりの美しさにしばし見とれてしまいました。