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下田といえば……白い砂浜のビーチ、黒船・開国の歴史、温泉、金目鯛。
サーフィンやカヤック、釣りといったマリンスポーツのメッカ。
そうした派手な観光資源のイメージが強すぎたのかもしれません。
もちろん、観光地・下田を成り立たせるためには
派手な観光資源も必要でしょう。
でも、妻はそんな観光資源のすぐ傍らで行われている
地域の方々の日常の営みに出会うたびに、
下田での暮らしを楽しめるようになっていったのです。
そして、妻がこうして撮りためた写真が
昨年、陽の目を見る機会に恵まれました。
雑誌『クロワッサン』2019年5月25日号にて
下田の海藻が特集されたのです。
妻が撮りためた写真は、クロワッサンの編集部や
デザイナーの目にも魅力的に映ったようで、
6ページにもわたって掲載されることになりました。
妻としては、東京の編集者やデザイナーといった人にも、
自分が魅力を感じていた下田の観光資源ではない側面、
地域の人にとって日常の「営み」の光景が、
魅力的に感じられるのだと、とてもうれしかったと言います。
講演の最後、こんな言葉で締めくくりました。
「まちを元気にしよう、観光を盛り上げよう、なんて
たった3年しか住んでいない移住者の私が簡単に言えることじゃない、
そう思っています。
ただ、ワクワクしながらシャッターを切りたくなってしまうような
魅力的な人たちや、昔ながらの営みがこの伊豆にあるんだ、
ということを、この3年で実感しました。
そうしたこのまちの財産が、誰かの目にとまり
実際に伊豆に足を運んでくれて、それで地域の人が元気になったら、
そんな連鎖が起こったらと想像すると、なんだか楽しいですよね」
妻や僕、そしてほかにも多くいる
東日本震災で価値観の変化を余儀なくされた
「都会での消費する暮らし」を続けていた人にとっては、
こうした日常の「営み」にこそ価値が感じられる。
妻はそのことを地域の人たちに伝えることができたら、
と考えていたのだと思います。
ありがたいことに講演当日は、多くの友人や
仕事でお世話になっている方が足を運んでくれました。
緊張しまくっていた妻としては心強かったことでしょう。
「あ~、下田って本当にいいところだね、ありがたいね~」
としみじみと呟く妻。
この講演をしていっそう「下田愛」が深まったように見えます。
そんな妻が、この先どんな「営み」に魅力を感じて
シャッターを切っていくのか?
身内の僕としても楽しみでなりません。