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下田で暮らし始め、“いただきもの生活”をしているうちに、
わが家にもちょっとした変化が起きました。
いままでは何かお返しするときや贈り物をしたいときには、
お菓子などを買いに行くのが常でした。
東京では当たり前にそうしていたのです。
けれど、最近はまず庭や家の中を見回すようになりました。
たとえば庭になっているトマトだったり
手づくりの梅干しや味噌、そしてわが家のお米。
もちろん用途に合わないときは買ったものをお渡ししますが、
まずは自分たちの手づくりのもので
何かないかと考えるようになったのです。
というのは、いただくものの多くが
手をかけてつくったものだったり、とってきてくれたもの。
それに対して買ってきたお菓子を返すというのが、
どうも不似合いに感じられるようになったのです。
地元の方に比べればまだまだお返しできるものが少ないわが家です。
けれど、移住した当初に比べると、自分たちでつくったお米を
お返しできるようにもなりました。
それが私たちにとってはうれしい進歩に感じられます。
東京で暮らしていたときには、自らが育てた野菜や
とってきた魚介類をもらうことなどありませんでした。
けれど、下田で暮らす人にとってはそれが当たり前のやり取りで、
わが家もありがたいことにその輪の中に
少しずつ入れてもらえるようになったのだと思います。
お金をかけず、手間をかけたギフトの交換。
そうしたおつき合いが、私たちの暮らしをまた豊かにしてくれます。