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移住についてあれこれと模索していた頃、
わが家は地方に住んでいる方々を訪ねました。
自分たちにはどんな場所が向いているのか、
どんな暮らし方ができるのか、そのヒントを探していたのです。
長崎県や岡山県、香川県の小豆島や三重県など。
実際にどんな暮らしをしているのか、
ご自宅を見せていただいたりしながらお話をうかがいました。
そうしたなかでたびたび耳にしたのが
「食べものには困らないよ。
野菜とかご近所さんにたくさんもらうし」というもの。
当時、東京で暮らしていた私は、その話を半信半疑で聞いていました。
「そんなうまいハナシ、本当にあるのかな……」
東京で生まれ育った私はご近所さんから野菜をもらった経験などなく、
いまひとつイメージがわかなかったのです。
その後わが家は下田に移住することとなり、それから2年が経ちました。
これまでたくさんの方と知り合い、
本当によいおつき合いをさせていただいています。
「下田での暮らしどう?」と東京の友人たちに聞かれて
「下田、いいところだよ~」と答えられるのも、みなさんのおかげです。
そして、いろんな方とつながっていくうちに、
いままで疑っていたその「うまいハナシ」というのが
私たちの生活にも起こるようになったのです。
たとえば、いまの時期はじゃがいもが旬です。
朝、娘を近所まで見送りにいくと、同級生のお母さんに
「じゃがいも、ある?」と聞かれ
「ちょうどいま、父親が掘ってきたのもらったからあげるよ~」
とボウルいっぱいのじゃがいもをいただいたり。
また違う友人にもじゃがいもをもらったりして、
この春は気づけばじゃがいもを買っていないというありがたい状況です。
さらに、ある友人はコロッケをつくって持ってきてくれました。
友人もご近所さんからじゃがいもをたくさんもらったのです。
じゃがいもが台所に常備されているので、ちょっと小腹がすいたときに夫がポテトチップスをつくってくれます。揚げたてはあまりにもおいしくて、家族3人で奪い合うように食べてしまいます。
野菜のみならず、友人が庭先で飼っているニワトリの産んだ卵も先日いただきました。ニワトリの顔も知っているだけに、買ってきた卵とはまた違う感覚で向き合ってしまう。ありがたい贈り物です。
少し前まで東京に住んでいた私たちからすると、
野菜をいただけるだけでも新鮮でとてもうれしい出来事なのですが、
実はそれだけではないのです。