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途方に暮れていたある日、僕は嘆くように
鉄兵さんにこんな話をしました。
「ヤギを飼ってここに放したらどうかね!?
農園に鹿が入ってこないように柵はしてあるから
新たに囲いをつくる必要はないし、
草を食べてくれるから草刈りの手間もない。
ガソリンも使わなくていい。
草を食べたあとは糞をすることで土地を肥沃にしてくれる。
農園の作物はミツバチが受粉を手伝う。
そして、ヤギが土地を肥やすので作物が元気に育つ。
おまけに石鹸のヤギミルクも自給できる!!
(高橋養蜂では蜂蜜とヤギのミルクを使った石鹸が
商品としてあるのですが、そのヤギのミルクは取り寄せているのです)
地域の河原や耕作放棄地の草刈りに、
ヤギが借り出されることもあるらしい……。
すばらしい循環じゃないか!
こんな“循環型農園”こそ、これからの時代に求められる
“ミツバチの楽園”ではないか!」
実は半ば夢みたいな話だなあと思いながら話していたのですが……
「ミツバチの楽園」のためには
夢を夢のままで終わらせない鉄兵さんは違いました。
ということで、終わらない草刈りで途方に暮れた末の
何気ない会話がきっかけとなり、ヤギを迎え入れるために
農園の整備を進めることになりました。
まず、どこをヤギ牧場にするか? をあらためて検討しました。
よく考えてみると、レモンの苗木やひまわりなどの蜜源を植えた農園に
ヤギを放すと、レモンも食べてしまうかも? という問題もあり、
別に高橋養蜂で管理していた農地があったので、
そこをヤギ牧場の候補地としました。
この農地を獣害対策の柵で囲い、ニ分割して、
一方のヤギエリアにはヤギを放牧して草を食べてもらい、
土地を肥沃にしてもらう。
他方の作物エリアではミツバチの手を借りて蜜源植物や作物を育てる。
そして、作物の収穫が終わったタイミングで
ヤギエリアと作物エリアを交換する。
今度は、ヤギが肥沃にしてくれた土地に蜜源植物や作物を育て、
いままで作物を育てていたエリアは、
再びヤギに土地を肥沃にしてもらいます。
またタイミングを見計らい、ヤギエリアと作物エリアを交換する。
そして、時にはヤギを山の中の農園にも連れて行き、
食事を兼ねて草を食べてもらう。
こんな「ヤギ牧場計画」です。
そして、その農地周辺には地元の方々の畑や、
すでにその時点で耕作放棄となっている農地もありました。
「ヤギ牧場」ができても周りが耕作放棄地ではちと寂しい。
周囲の耕作放棄されている農地もお借りすることができないか……?
近隣の方にあたってみました。
結果、想定以上に周囲の方たちの協力を得ることができて、
トータル2000坪以上の広大な農地をお借りすることができたのです。