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下田の干物がトートバッグに。
〈Himono bag〉の販売で生まれた、
新たなつながり。|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.058

Page 3

干物屋〈万宝〉と平井さん一家に魅せられて

このお店の魅力をあげるとすれば、
もちろんそのひとつは干物のおいしさにあります。

店主の恭一さんと息子さんの勇一さんは、
素材の仕入れに徹底的にこだわり抜いています。
市場へ出かけても、お眼鏡にかなう魚がなければ手ぶらで帰ってくるほど。
逆に、いい素材に出会ったときにはとびきりテンションが上がるという
干物ひとすじに打ち込んでいるのです。

そうして選び抜かれた上質な魚だけを丁寧にさばき、
素材やその時々の気候に合わせた塩加減で調味しています。

競りの様子

万宝さんの干物を撮影してみると気づくのが、その見た目の美しさ。
傷や身の剥がれのない干物のパリッとした佇ずまい。
目の透明感や肌の輝きも美しく、職人としてのこだわりと
丁寧な仕事ぶりが見て取れます。
Himono bagに使用した写真は、ほとんど修正をしていません。
それほど状態のよい干物というのも、なかなか珍しいのです。

撮影した干物

撮影に使用したカット。自然光で照らすとキラキラと銀色に輝き、背中は青みがかったグレー。光の当て方で目の雰囲気がかわいくも、鋭くもなる。なかなか干物の撮影も奥が深いと知りました。

転写シートをつくりプレス加工

上の写真から転写シートをつくり、プレス加工するとかわいらしい鯵の干物になります。

万宝の店内のケースには、いかにもおいしそうな干物が
ずらりと並んでいます。
その中から食べたい干物を選んでお店の方にお願いすると、
店内の囲炉裏で焼いてもらえます。
これがまた、このお店に通ってしまう理由なのです。

炭火でじっくりと焼かれた干物は旨みと甘みが凝縮されていて、
ひと口食べると「う~ん、うまい!」とうなってしまうほど。

そして、干物が焼けるまでのあいだ
お店の方と交流できるのがまた楽しい時間です。
「どっから来たの?」と旅行者にも
気軽に話しかけてくれる平井さんご一家。
さらに、恭一さんのやわらかな伊豆弁がなんとも味わい深く、
心が次第にほどけていきます。

私も移住して間もない頃、声をかけてもらい、あれこれとお話をしました。
家族で移住してきたことを伝えると、
「そうけぇ〜、下田はいいところだからさぁ、
ねぇさんかんばらっしぇ〜!」と励ましてくれたのを覚えています。

万宝では残った頭や骨は、再度炭火で焼いてくれる

身を食べ終わったあとに残った頭や骨は、再度炭火で焼いてくれます。すると、かりかりっと香ばしくいただくことができるのです。これがまたおいしい!

実は、Himono bagをつくり始めたときは、
ただ干物を撮影させてもらうだけのつもりでした。
それが万宝さんに段々と通っていくうちに、いつの間にか
一緒につくり上げていく感覚になっていったのです。
こんなことも伝えたい、あんなことも知ってほしい。
そうして次第に膨らんでいきました。

そのひとつが、恭一さんの幼少期の思い出です。

「オラは伊豆でも山のほうで育ったんだけど、
海まで遠かったから、魚なんてめったに食べれなくてさぁ。
ときどき行商のおばちゃんが山越えて干物売りに来てくれんだよぉ。
そうしんとさぁ、家族みんなで囲炉裏に炭起こして炙って食べるんだよぉ、
そんりゃうんまくてさ~」

にっこりと頬を上げて、何ともうれしそうな笑みを浮かべた恭一さんが
とても印象的でした。
この話もみなさんに伝えたいと、リーフレットに記載することにしました。

プリントされた魚の質をチェック

鯵にするか金目鯛にするか迷っていたとき、写真をプリントして持参。恭一さんはプリントを見るなり「これは背中の脂がきれいだね~」と、魚の質をすかさずチェック、さすがです。

パッケージに記載された英文

恭一さんの言葉の横には英訳をつけました。これも友人の協力によるもの。感謝です。

職人としてのこだわり。朗らかできっぷのいいご家族。
東京から来た友人が「このお店こそ下田のハイライトだね!」と、
感動していました。
こんなすてきなお店が下田にあるということを、
このHimono bagをきっかけに知ってくれたら。
そんなつながりができたら、おもしろいと思うのです。

万宝の前で干物バッグをさげて記念撮影

干物バッグのパッケージ

リーフレットのデザインやWebショップの立ち上げなど、私が苦手なことは友人たちが力を貸してくれました。本当にありがたいです。