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12月28日、待ちわびていたその日がやってきました。
朝一番、自分がつくったそのしめ飾りを玄関に飾ります。
快晴のなか朝陽を浴びている正月飾りが、晴れ晴れしく見えました。
鈴木さんがこう話してくれました。
「こんなこと教わろうって珍しいよね。
みんな正月飾りなんてつくれると思ってないし、
買うのが当たり前だと思ってるから」
時代が進むにつれ、昔は手づくりしていたものも
「買うのが当たり前」になっています。
私たちも東京で暮らしているときは、正月飾りを当たり前に買っていました。
けれど、納豆もたくあんも鏡餅も、そしてこの正月飾りも、
自分でつくれるとなんだかとってもうれしくて、どこか清々しいものです。
そして、人の手によってつくられたものには温かみが宿ります。
それは見ても食べてもなんにしても、
なにか人に伝わるものがあると思うのです。
鏡餅も私が子どもの頃は餅屋さんがつくっていて、
いまのように真空パックされていなかったからカビるのが当たり前でした。
「あ、カビてる」とそのお餅をしげしげと眺めた記憶も、
いまでは私の心を温めてくれます。
私たちが暮らしているいまの環境には、鈴木さんのように
昔ながらの暮らしの知恵をもった方々がたくさんいます。
そして、そうした方とこんなに身近に出会うことができます。
これからもっといろんな方に暮らしの知恵を教えてもらいたい。
そうして10年後、20年後に自分がつないでいけたら。
そんな歳のとりかたもいいんじゃないか、なんて想像しています。