Page 3
年の瀬も押し迫ったある日、鈴木さんのご自宅にうかがういました。
ガレージにはすでに鈴木さんがしめた縄がずらり。
「そんなすぐにはうまくできないよ、うまくなるには数年かかる」
と鈴木さんにたしなめられ、
「はい、承知しています!」と答える。
師匠と弟子という若干の緊張感を持ちながら、作業スタート。
今回使用する藁はわが家のものではなく、鈴木さんが用意してくれたもの。
わが家の藁が果たして正月飾りに使えるのか?
正月飾り用の藁と普通の藁となにか違いがあるのか?
そうしたこともまったくわからなかったので、
今回は鈴木さんのご好意に甘えさせてもらうことに。
ちなみに、正月飾り用の藁というのは
稲が熟していない青いうちに刈ったもので、
日光に当たると茶色くなってしまうので、陰干しをしたものだそう。
きれいな青みがかった藁、まずはハカマ取りという作業をします。
ハカマというのは藁の根元をぐるりと覆っている下葉のことで、
これをきちんと取り除くことできれいな仕上がりになります。
「やってごらん」と促されながら実際にやってみると、
これがなかなか手間のかかる作業。
実は納豆のときにもこの作業が必要だったのですが、
1本の藁づとをつくるのにかなりの本数が必要なので、
なかなか手間取りました。
きれいになった藁を束ねたら、いよいよ締め方を教えていただきます。
右足で固定しながら締めていくのが鈴木さんのやり方。
これは鈴木さんご自身があみ出した方法だそうで、
力のない女性でも締めやすいのだそう。
「はい、やってごらん」ということで人生初めて藁を締めてみました。
「そうそう、ほいでここでぐーっと巻いて、
そうして押さえて、ひとつ、ふたつ、みっつ」
鈴木さんのかけ声でリズムを取りながら締め始める。
「ぐっと、もっとぐっと!」と言われリキむ。
「どれ、見せて。あー、うまくできてる。
初めてでこんなにできないよなかなか、
こんなに締まらないんだよ最初は、上手だね~」
と顔を覗き込まれてうれしくなってしまったのでした。
次の工程、しめ縄に飾りをつけていきます。
鈴木さんがつくる正月飾りには、
ゆずり葉、橙、裏白、へいそくが配されています。
その材料を揃えるのもひと苦労なのだそう。
裏白は自ら山に入って取ってくるということで、
ご自宅の裏山を見せていただくとなかなか険しい。
ちなみに鈴木さん、実は昭和10年生まれのなんと83歳!
正月飾りが完成すると「ちょっとお茶しにいこうか」と誘われ
近所のジョナサンへ。
フライドポテトをつまみにビールを飲みながら、あれこれと雑談を。
鈴木さんは老人会の会長もやってらして、
毎日かかさないウォーキングに加え、社交ダンスなどなどかなり活動的です。
元気の秘訣をうかがうと「色気、食欲、好奇心!」だそう。