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ミツバチ愛にあふれる養蜂家。
伊豆下田〈高橋養蜂〉で
おいしいはちみつができるまで|Page 5

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.043

Page 5

まずは地元で売りたい、その思いとは

こうしてつくられた高橋養蜂のはちみつは、いまのところ
下田、遠くても伊豆半島内の店舗での販売がほとんどです。
むやみに販路を増やすことや売り上げを伸ばすことを目標にしてはいません。

東京に数店舗もあるはちみつの専門店からの
打診を受けたこともあるそうですが、お断りしたそうです。
受けていればいまより売り上げは安定したかもしれません。
でも、受けなかった。

というのも、いまでこそ通年販売する商品が
確保できるほどの生産量になったのですが、
数年前まではまだ生産量が安定していなかったのです。

「そんな頃から支えてくれたお客さまや販売店、
地域の人たちがいるからこそ、いまでもこうして養蜂を続けられている。
その感謝を忘れることはできない。
とにかくまずは下田で、伊豆でしっかりやりたい」と鉄兵さん。

高橋養蜂の高橋鉄兵さん

6年前に下田に移住してきて以来、地道に努力を重ねてきた鉄兵さんを応援する下田、伊豆の方は多く、そんな方々に高橋養蜂は支えられています。

最後にもうひとつ伝えたいエピソードがあります。

採蜜のため、巣枠を作業場へ持っていくときのことです。
そのとき、ミツバチたちはとても怒ります。

考えてみれば……そりゃそうです。
必死になって集めた蜜を持っていかれてしまうのですから。
ミツバチは普段は温厚で人に攻撃するようなことはありません。
でも、このときばかりは違います。
一生に一度しか使えないという攻撃のための針を
ここぞとばかりに使ってきます。それほどに怒っているのです。

でも、こうした過程があってはちみつができます。

はちみつだけではありません。肉や魚はもっと直接的ですが、
はちみつと似たスタンスの食品だと卵や牛乳があります。
見方を変えれば野菜だって同じかもしれません
(植物に感情があるとする説もあるそうです)。

何らかのかたちでの「搾取」があって、食品が、命が成り立っている。
そんな当たり前のことを、ミツバチの怒る姿を見てあらためて感じました。

蜜を集める農園のミツバチ

1匹のミツバチが生涯をかけて集める蜜の量はたったの小さじ1杯。
心をこめてつくり、おいしくいただきます。

information

map

高橋養蜂

住所:静岡県下田市箕作787-1

TEL:0558-28-0225

Web:http://takahashihoney.net/

文 津留崎鎮生