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大切な本『寂しい生活』との
出会いと気づき。自分の暮らしを
見つめ直すきっかけは、
冷蔵庫にあった!|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.031

Page 3

冷蔵庫につまったものとは?

自宅にひとりでいるときの昼食は、もっと簡単に済ませてしまいます。
私は玄米が好きですが家族は白米派。
自分ひとりのために毎日玄米を炊くのはガス代がもったいないし、
白米と両方を毎日炊くのもなかなかしんどい。
ということで、私が食べる玄米は3日分をいっぺんに炊いてしまいます。
炊きたてはそのまま食べて、翌日以降の固くなったご飯は
朝残った味噌汁に入れて雑炊に。

「なんとわびしい……」と思われるかもしれませんが、
七味や山椒、ごま油なんかを垂らして食べたらこれが実においしいのです。
考えなくったって自然と手が動くくらいに単純な調理、時間もたったの5分。
「簡素なこの感じ……、なんて気持ちがいいんだ~!」と、
ある日台所で雑炊をぐるぐるかき混ぜているとき、
ふと頭に浮かんだのが“アフロ稲垣さん”のこと。

ご存知の方も多いかと思いますが、元朝日新聞記者で、
洗濯機も冷蔵庫なども持たないミニマムライフを
実践している稲垣えみ子さんです。

「玄米を3日分炊いて(夏場は1~2日)
翌日からチャーハンや雑炊にして食べている」

という彼女にまつわる記事が、頭の片隅に残っていたのです。

我が家の思いつき、冷やご飯を温めるこの方法、これがなかなかいいんです。味噌汁をつくっている土鍋の上に冷やご飯を入れたざるを乗せて蒸す。電子レンジで温めるより格段においしくてエネルギーの節約にもなる、一石二鳥です。

稲垣さんのことを思い出していた数日後のこと。
編集者から「テツカさんにぴったりの撮影があるんです」
と連絡がありました。
内容を聞くと、なんと稲垣さんの撮影だというのです。
念ずれば叶うのですね~。
ぜひ! と前のめりで受けさせていただきました。

撮影の前に稲垣さんの著書『寂しい生活』を拝読していると、
いや、もう目から鱗のオンパレードで感動しっぱなしです。

稲垣さんが電化製品を見直し始めたのは、福島の原発事故後の節電がきっかけでした。その後、会社を退職するにまでに展開していくのですが、そんな一見シリアスな内容がユーモアたっぷりで書かれているのでつい読みながら笑ってしまいます。ぜひ皆さんにも読んでほしい。

稲垣さんは、電化製品に囲まれた便利すぎる暮らしを見直し、
掃除機を捨てほうきと雑巾にスイッチ。
洗濯機もなくすべて手洗い。そして冷蔵庫も使わない。

冷蔵庫の中には、買いたいという欲と、
食べたいという欲がパンパンに詰まっている。
人の欲はとどまることを知らず、
その食べ物の多くは実際には食べられることはない。
もはやそれは食べ物ではない「何か」なのだ。

(『寂しい生活』より)

激しく納得……。私が不愉快に感じていたのは、
冷蔵庫の中に残された食べ物そのものではなく、
そこに投影された自分の過剰すぎる欲だったのです。
それは食べ物に限らず、モノすべてに通じること。

私が大学を卒業して社会人になった頃は、
バブル崩壊後とはいえまだまだ景気がよい時代でした。
ブランドモノも、雑貨もキッチンツールも、
欲しいものを次から次へと買い込みました。
20代30代は欲に流され消費しまくり、
使わないモノに囲まれて暮らしていたのです。

40代になってからは、そうした欲はだいぶ落ち着きました。
もちろんまったくないわけではないですよ、
「かわいいな~」って買いたくなることも普通にありますあります。
けれど、欲に流されるまま消費するのではなく、
自分でうまくコントロールできるようになりました。
自分のお気に入りの服があれば毎日同じでもよくて、
あれこれ毎日違う服で着飾らなくても満足できるようになりました。
この抜けて緩んでいく感じ、歳をとるって心地よいものです。

ただ、それでもなお、私が抑えきれずにいたのが、
食材を買い込みたいという欲。下田は新鮮な野菜や魚の宝庫。
直売所に行っては、あれもこれもと買い込みたくなっていまうのです。
そんな買いたいという欲も、クリアファイルをきっかけに整ってきました。
これは私にとって大きな一歩です。