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「カメラマンときどきパン屋」
という働き方は実現可能? 
移住一家の1か月の収支から考える|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.029

Page 3

どういう方法なら可能なのか?

私がつくるパンはいまのところ機械を使わず手でこねるため、
仕込める数に限りがあります。
使っているのは玄米と麹から起こした自家製玄米酵母。
深い味わいを得るためにはこの玄米酵母が欠かせないのですが、
繊細な生き物で扱いにくく、発酵時間を安定させるのがなかなか難しい。
さらに、風味を引き出すために12時間以上寝かせているので、
その分時間がかかります。

酵母を育てるのに2週間かかります。まだまだ不慣れなので、当日ちょうどよい状態に持っていくのもなかなか緊張しました。冷蔵庫は酵母に占領されていきます。

瓶のふたを開けると、プツプツと音を立てる酵母。甘酒のような風味です。

販売用とランチの分、2日間で150個のパン。
その数を焼き上げるために、開催日の前々日から仕込み始めて
3日間、睡眠時間ほぼゼロの状態。
朦朧としながらひたすらパンを焼き続け、
開店時間の11時から15時はお店に立ち接客。
初日の営業が終わってほっとする間もなく、
まだまだ焼き続けなくてはというプレッシャーが押し寄せてきます。

深夜焼きながら不安に押しつぶされそうになり、
気分転換に外に出ると満点の星空。
それを見たらふいに涙がこぼれ落ちる……
という、笑えるくらいに普通じゃない精神状態でした。
もともとメンタルが弱い私。
情けないですが、体力的にも精神的にもくじけそうになってしまいました。

数をこなすことに気が取られて、
もともと楽しいから始めたパンづくりを楽しむ余裕がない。
さらに娘には「パン屋さんヤダ! ママと一緒に寝れないからヤダ!」
と泣かれる始末。楽しく焼けない。
家族にも負担がかかってしまう。
それではパンを焼く意味がないのです。

イベントが終わってから、今後どういう方法でやっていくのがよいか
夫と相談しました。私も、家族も楽しみながらできる方法。
私の場合はカメラマンの仕事を軸として、
ときどきパン屋というやり方を考えています。
その「ときどきパン屋」を、どのようなカタチでやっていくのか。

2日間の連続営業はどうやら私には厳しいようですが、
1日のイベントならできそうです。
娘もひと晩くらいなら我慢してくれると思います。

そのほか、ネット販売はどうなのか。

「テツは自分のペースじゃないと無理だから、ネット販売いいんじゃない?」

夫は、私が忙しくなるとテンパるのをよくわかっています。
月に何度か販売する程度なら、この人でも楽しくやっていけるのではないか。
そう考えたようです。

実際にネット販売をしているパン屋さんは、全国にあります。
宅急便で送って味は大丈夫なの? というのが気になるところ。
実際にいままでいろんな友人に送っていますが、問題ないようです。
日にちが経つにつれて味が落ち着き、
さらにおいしくなるという感想もありました。

新潟の友人に送ったパンセット。下田から新潟も、翌日指定で届けられるんですね。すごいな~、日本の物流。夫が働く〈高橋養蜂〉の〈みかん蜂蜜〉も一緒に。

もちろん、月に数回のパン屋で生計を立てることはできません。
カメラマンの収入があるので、それでバランスをとろうと考えています。
とは言え、下田に移住してから我が家の世帯収入は半分以下に減りました。
本当にやっていけるのか? という
漠然とした不安に襲われることもあります。

その漠然としたものを一度はっきりさせてみようと、
わが家の収支を計算してみました。
そもそも我が家はいくらあれば暮らしていけるのか。

友人が貸してくれた『クリアファイル家計簿』これが大いに役立ちました。収支計算表に記入することで、我が家の家計が一目瞭然。さらに、この本の「一日の食費と日用品を2000円以内に抑える」という方法がとてもやりやすく楽しめます。我が家も実践中。