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思いもしなかった心地よさ。
移住した伊豆下田、
小さなまちでの小さな暮らし|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.019

Page 3

暮らしてみてわかる、心地よい暮らし方

看板づくりの仕事(Vol.17参照)が終わってから駅周辺に買い物に行きます。
スーパーではその時間になると下田港であがった魚が
3割~5割引きになっていることも。
東京の値段からしたらもともとが安いのですが、
さらに値引きされて驚くような値段で地物の魚が手に入ります。
(買わずに残ってしまうと捨てられてしまうのかもと考えると
いいことをしている気にもなります)

自転車でまちを巡り買い揃えた土地の食材ばかりの食卓は、環境にも家計にも地域の経済にもよいのかと。

週末、たまにはまちに出て外食をしようか? となることも。
観光地でもある下田はまちの規模に対して飲食店が多く、
和洋中どこで食べるか悩んでしまうほどの店があるのです。
やはり自転車に乗ってまちへと出かけます。

魚料理の店〈魚助〉にて。飲みに入った店のカウンターで大将と知り合って以来、何度かお邪魔しています。観光客だけでなく地元の人でも賑わう人気店です。この日は早い時間に店先でバーベキューをしていた大将に「肉食べてきな~」とお誘いいただきました。暮らし始めたばかりの僕らをこうして受け入れてくれる大将と、このまちの懐の深さが身に沁みます。

駅周辺には他にも役所、警察署、図書館、郵便局、銀行、本屋、
家電量販店、金物屋などなどがあり、日常の生活は自転車で事足ります。

看板の仕事の昼の休憩時間に自転車で図書館へと。さまざまな施設が周辺にあるので昼休憩時にもろもろの用事を済ませています。先日は携帯電話ショップに用事があり行ったらなんと待ち時間なし! 東京の混雑ぶりが嘘のよう。

同じく看板の仕事の昼休憩、近くの公園で妻と娘がピクニックをしているというので自転車で駆けつけ合流。看板の仕事は市内のホテルや店舗の現場も多く、買い物に出ている妻と娘が通りかかり「パパ~がんばって~」との声が聞こえることもしばしば。本当に小さいまちです。悪いことできません……。

この夏、何度かお手伝いに行っている民宿〈B&Bことぶき荘〉にも自転車で。こちらは下田駅を挟んで反対側の少し離れた吉佐美というエリアにあります。約7キロ、所要時間20分。アップダウンもあるので途中苦戦していますがそれもまたいいかと。

移住する前は、こんな暮らしをするんだ! と肩肘をはっていました。
オフグリッド化もそうですが、米や野菜の自給、
水は水道水やペットボトルでなく湧き水か井戸の水で! と。

ここ下田での暮らしは、そんな理想とする暮らしとはだいぶ違っています。
そのことに対して妻はストレスを少なからず感じているようです。
全然、思い描いていた暮らしと違う……と。

僕はというと、いまのこの暮らし、これはこれでいいのでは? 
と思っています。

もちろん、敷地の畑で野菜の自給を、部分的にでもオフグリッド化をと、
ここに暮らし始める前からの計画は諦めていません。
それらがなかなか実践できないことに焦るときもあります。

でも、移住前のイメージとは別に、暮らしてわかる心地よい暮らし方
というのがあるはずです。僕にとってはそれが
「なるべく車に頼らずに自分の脚で移動する暮らし」でした。

そんな暮らしは、
子どもがひとりで出歩ける年齢になったときのことを考えても、
また自分たちが歳をとって、車の運転ができない状況に
なったときのことを考えても、大きなメリットを感じます。

例えば、持続可能な社会のために
極端にストイックな暮らしを選択したとしても、
その暮らしが長続きしなければ意味がありませんし、
それは一般解にはなりません。

では、持続可能な社会での持続可能な暮らしとは、
どんな社会でのどんな暮らしだろう。

そんなことを考えながら小さなまちの片隅で楽しく暮らしています。

うろうろ歩いてこっちへと、自転車ふらふらあっちへと。
車でビュンビュン動いていると見えないものが見える気がしてきました。

information

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魚助

住所:静岡県下田市1-6-8

TEL:0558-27-3330

営業時間:11:30~15:00、17:00~22:00

定休日:火曜、年末年始

Web:http://shimoda100.com/restaurant/uosuke/

information

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B&Bことぶき荘

住所:静岡県下田市吉佐美1778

TEL:0558-22-7638

料金:2名1室ひとり5500円~

Web:http://cotobukiso.com/

文 津留崎鎮生