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不安なことをつらつらと書き綴りましたが、
もちろん楽しいことや新たな発見もたくさんあります。
下田に住み始めて大きく変わったのが、
先ほども書きましたが、食回りのことです。
下田や隣の南伊豆町は、直売所がとても充実しています。
自宅から自転車で行ける範囲だけでも2か所の直売所があり、
朝採れの新鮮な野菜や果物がとても安く手に入ります。
自家菜園も少しずつ始めてはいますが、
家族の食卓を彩るにはまだ時間がかかりそう。
いまはもっぱら地元農家さんのお野菜に頼っています。
そして、移住者の方がよく口にする
「ご近所さんにお野菜とかよくもらうよ」というフレーズ。
そうしたことが自分たちの暮らしにも起きています。
通りすがりに玉ねぎや甘夏をいただいたり、
「枇杷がなってるから採りにおいでー」と呼んでいただいたり。
先日は、近所の釣り船屋さんのご主人が魚を抱えて突如現れ、
庭先でチャキチャキとさばいてくれるなんてこともありました。
そうした日々のできごとが新鮮で、
本当にうれしくて楽しくて仕方ないのです。
そしてもうひとつ食回りで大きく変わったことは、
つくり手さんとの距離が近くなったこと。
下田で暮らしていると、近所でひじきを干している光景に出くわしたり、
塩をつくっている方とたまたたま知り合えたりします。
私はもともとつくり手の方に興味があり、
そうした現場を撮影しているときにすごく幸せを感じます。
いままで知らなかった作業工程を見せてもらったり、
つくり手の方が苦労している姿を間近で見れることは、
食べものの原点に触れるような喜びがあります。
下田に住むようになってから、
日常でシャッターを切る回数が格段に増えました。
東京にいるときは近所に出かけるのに一眼レフを
持ち歩いていませんでしたが、いまは必ず携帯しています。
いつどこで心躍る場面に遭遇するかわからないのです。
小さい頃、夏になると海水浴に訪れていた下田。
そのまちで暮らしてみたら、昔とは違う景色が見え始めてきました。
この先、またどんな旅が始まるのかわからないけれど、
流れに身をまかせてみよう。