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南伊豆へ移住先探しの旅。
自然農園〈日本晴〉を営む夫妻、
気になる物件との出会い|Page 5

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.012

Page 5

再び下田で、ネットに載らない物件が!

ということで、いったん伊豆の移住先探しの旅を終えることに。
さあ三重に行くぞ、という日のことです。

下田駅近くの国道沿いに、まだ訪ねていない不動産屋さんが
あることに気づきました。
この旅で下田近辺のなるべく多くの不動産屋さんに顔を出して、
希望に合うような物件が出てきたら連絡をもらうように
お願いしていましたが、そのお店はもれていたようなのです。

いかにも駅前の地域密着の不動産屋さんという佇まいに、
ネットに出ないような情報を持っているかもと
淡い期待を抱きつつ訪ねてみました。
ひと通り自分たちのイメージを伝えると、
対応してくれた男性の奥にいた社長とおぼしきご年配の方が、
「あそこの農家の家いいんじゃないか? 畑もできるし」と。

なになに!?

なんでも、ひと部屋は荷物で埋まっているというイレギュラーな状況なので
いわゆる不動産業者の情報には載せにくいらしいのです。
イレギュラー物件大歓迎、まさに地域密着のネットに載らない物件! 
きたきた~という感じです。

家賃は少し予算をオーバーしてますが、
とりあえず外観だけでも見てましょうということになり
社長の車で案内していただきました。
(社長さん、行動も運転もスピーディーでびっくりしました……)

車を走らせること5分。

青い屋根と木製建具が印象的な少し不思議な雰囲気の大きな家です。
古民家というよりは昭和の香りが漂っています。
敷地内に、大きくはないですが畑ができるスペースがあり、
前面道路も広く、敷地に車3台は停められそうです。

立地としては下田駅まで2キロ少し。自転車で行ける距離です。
駅前にはスーパーや電気屋、ホームセンター、本屋など
ひと通り揃っています。
地方に住むとどこに行くにも車になりがちですが、
このあたりは夏の観光シーズンの渋滞がとにかくひどいとのことなので、
駅まで自転車で行けるというのはなかなかよさそうです。

さらには子どもがある程度の年齢になったときのことを考えると、
歩ける距離に駅があるというのよいのかと。小学校も徒歩圏内にあります。
下田に9つあるという海水浴場のひとつ、外浦海岸までは1キロ弱で、
歩いても行ける距離。というように立地条件としてはかなりよいのです。

海に歩いて行ける……。特にそんな条件を考えてはいなかったのですが現実的になってくるとわくわくしてしまいす。それにしても下田は海がきれい。これは感覚的な話だけではなく環境省の調査の結果としても出ています。

少し残念な点が周辺環境です。
下田駅から近いということもあり、郊外の住宅地という雰囲気なのです。
目の前には食品関係の工場があり車の出入りが多そうだなとか、
近くに鉄工所らしき工場もあったりで騒音がありそうとか、
不安な要素がないわけではありません。

この旅で最初に訪れた下田の奥まった集落や、
南伊豆町の欠掛さん宅周辺のように、
自分たちがわくわくするような田園風景ではないのですが、
東京への行き来や娘の通学のことを考えると
その風景を求めるのはなかなか厳しそうです。

でも、この連載で繰り返しこの言葉を使っていますが
「大事なのは自分たちがどう生きたいのか、何を大事にしたいのか」です。

外観だけ見ただけですが娘の印象は悪くはなさそうです。
なにより海で遊ぶのが好きですので、ここでの生活を楽しめる気がします。
夏に観光客でにぎわう海岸や港からも近く、
何らかの収入源を確保するにも適してもいます。

三重での経験からすると、いったんはこうした便利な場所に
住んでみるのがよいのかもしれません。

社長に内見のお願いして、家主さんに連絡をとっていただきました。
残っている荷物のこともあり、社長と家主さんが
立ち会っての内見という話になったのですが、
なかなか予定が合わず調整の結果、1か月近く先に。

うーん、早く内見したい……。でも仕方ありません。

この間に熱くなった頭を整理しよう。
そして、この間にお世話になった三重の方々に
感謝の気持ちを伝える時間をしっかりと持とう。
ちょうどよいのかもしれません。
そう、これは物件の内見までおとなしくしてなさいという
天の声なのだと思い込んでみることにしました。

その物件に期待しつつ、いったん伊豆を離れ、三重に向かいます。
三重から東京に戻る際には仮住まいを引き上げる予定です。
引き上げたら、これまでのように
三重に頻繁に行くことはなくなるのでしょう。
それを考えるだけで寂しくなってしまいます。

娘に、三重は雪降ってるかも? と教えると、
雪遊びが楽しみなのかうれしそうです。
物件のある美杉町太郎生(たろお)は標高が高く、かなりの雪が降るのです。

旅は続きます。

春を感じる伊豆からまだまだ冬の三重、美杉へと向かいます。

写真・文 津留崎鎮生