潮風に吹かれて味わう、 淡路の春の風物詩・くぎ煮。

47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
兵庫でコロカルが向かったのは、淡路島の〈藤本水産〉。

小さいくぎ煮はご飯に、大きいくぎ煮はおつまみに

春の訪れを伝えてくれる春告魚。
神戸や淡路の春告魚といえば、くぎ煮で知られるいかなごです。
くぎ煮とはとれたてのいかなごを炊くことで、
身がきゅっと締まり釘のように折れ曲がる姿からつけられたと伝わる名前。

毎年2月下旬から3月初旬の解禁日から、約1か月にわたって水揚げされるいかなごは、
しんこと呼ばれる稚魚から、ふるせと呼ばれる成魚まで、
日に日に大きくなりつつ、連日水揚げが行われます。

漁期間の最後で大きめのいかなご。

それと同時に忙しくなるのが界隈の家庭の台所です。
鮮度が命のいかなごを手に入れたら、それぞれの家の味でくぎ煮を炊き上げて、
ご近所や遠方に暮らす家族や知人に送るのが、この地方の春の風物詩。
鮮魚店にはいかなごを求める人で行列ができ、
まち全体が醤油の香りに包まれることからも、
熱の入りようがうかがえるというものです。

淡路島の北西に位置する育波浦(いくはうら)は、
春はいかなご、初夏から秋はしらすで知られる漁港。

その目の前にある〈藤本水産〉が最も賑わうのもいかなごの季節です。
いかなご漁は2艘の船が袋状の網を引いて群れごととる船曳網という漁法。
早朝から昼前まで、何度も漁場と港を行き来しながら漁を行います。

生のいかなごを釜に投入!

くぎ煮は生きたままのいかなごを使うのがセオリーですから、
港に上がったいかなごは鮮度が命。
藤本水産ではセリ落としたらすぐに作業場へと運び、
醤油、酒、みりん、砂糖を刻んだショウガとともに大きな鍋に入れ、
40~45分ほどかけて炊き上げます。

味つけは藤本家のレシピをもとに、照りを出すよう仕上げたもの。
特別にのぞかせてもらった作業場では、18もの釜がフル稼働。
次々とくぎ煮が炊き上げられていて、甘辛い香りが鼻をくすぐります。

「出始めの小さなしんこを炊いたものはご飯のおともに。
漁も終わりになる頃のふるせを炊いたものは、魚自体に味がのってくるので、
それだけで味わうおつまみにおすすめです」とは3代目の山下雅令さん。

藤本水産の3代目、山下雅令さん。

その言葉どおり、小さなくぎ煮は白いご飯が欲しくなり、
大きなくぎ煮は噛むといかなごの旨みが口に広がります。
控えめに効かせたショウガと、甘過ぎない醤油味が藤本水産の味。

旬である春に数トンの量を炊き上げたくぎ煮は、1年を通して店頭に並ぶため、
いつでも手に入れることができるのも魅力です。

加えて漁の季節だけのお楽しみは、釜揚げのいかなご。
さっと塩釜で茹で上げたものは、醤油やポン酢で食べるのはもちろん、
ワケギと酢みそ和えにするのも地元での定番だとか。

しらす、ちりめん、たこ、かます……目移り必至!

いかなごの次はしらすの季節。
育波漁港は、例年なら5月末から11月頃まではしらす漁で賑わい、
藤本水産にも釜揚げしらすや、天日干しのちりめんがずらりと並びます。
しらすはカタクチイワシの稚魚。
ほんの小さなものから、徐々に大きくなっていくのはいかなごと同じで、
淡路島を訪れるタイミングでどのサイズに出会えるかも楽しみです。

くぎ煮をはじめ、さまざまな大きさが揃うちりめん、
1匹丸ごとを串に刺して天日干しにした干しダコ、
かますや真鯛の一夜干しや、たちうおのみりん干しなど、
1年を通じて淡路の海の幸が勢揃いする藤本水産では目移りも必至。

どれを選ぶか迷っていると、くぎ煮を袋詰めしていたお母さんが、
ちょっと炙ってあげるからと、味見を勧めてくれました。
その、たちうおのみりん干しの脂がのっていておいしかったこと。
あれもこれもと手を伸ばさずにはいられません。

たちうおの味醂干しを試食用に炙ってくれた。

端から端まで、魅力的な海産物がずらり。

手に入れたくぎ煮はすぐ味わいたい! という声も多いという藤本水産では、
敷地の一角にベンチやテーブルも用意されています。
そして藤本水産から育波浦の港までも歩いて数分の距離。
心地よい海風に吹かれながら、くぎ煮をビールとともに味わうのは、
ここでしか出会えない贅沢な時間です。

今回飲んだのは、
〈キリン一番搾り 神戸づくり〉

港の近くで食べるお魚はおいしいに決まっています。その土地のお魚のことをよく知っているお店も多いのですから、なおさら。魚を干している風景を見ながら、醤油の香りが漂うという独特の育波浦地区。ここでのビールの味わいは、なかなか出会えないものとなりそうです。

キリン一番搾り 神戸づくりとは?

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く)
ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。

information

map

藤本水産

住所:兵庫県淡路市育波387

TEL:0799-84-1126

営業時間:8:00~18:00

http://www.fujimoto-suisan.co.jp

writer profile

大和まこ Mako Yamato
やまと・まこ●京都在住のライター/コーディネーター。京都に暮らす最大の幸せは、思い立ったらすぐに鴨川でピクニックができること。『&Premium』では、さんぽ部部長として「&Kyoto」を連載中。

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