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posted:2024.6.14 from:愛知県豊田市 genre:アート・デザイン・建築
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writer profile
Hiroko Shimokawa
シモカワヒロコ
しもかわ・ひろこ●岐阜県岐阜市出身。タウン誌の編集者を経て、現在は名古屋を拠点に活動するフリーランスライター・編集者。幼少期から「ローカル」を感じる店や人が好きで、大学ではまちづくり・都市政策を研究していた。
55年間にわたって愛され、惜しまれつつも閉館した〈豊田市郷土資料館〉。
その歴史と展示内容を受け継ぎつつ、豊田市の未来についても考える
総合博物館〈豊田市博物館〉が、2024年4月26日にオープンしました。
場所は、豊田市の中心市街地。
最寄り駅である豊田市駅から歩いていける距離で、
すぐ隣には〈豊田市美術館〉も並んでいます。
館内には常設展示のほか、屋外展示や庭園もあり、企画展を開催することも。
愛知県豊田市の歴史や人々の暮らし、自然などに、
さまざまな角度からアプローチする施設です。
〈豊田市博物館〉に足を踏み入れて気づくのが、
明るく開放的な雰囲気が漂っていること。
豊田市産の木材をふんだんに使用し、
伸びやかで豊かな自然も感じられる空間に仕上げています。
建物の設計を担当したのは、日本を代表する建築家・坂茂氏。
そして、庭園を担当したのはランドスケープ設計者であり、
隣接する〈豊田市美術館〉の庭園も手がけたピーター・ウォーカー氏です。
設計者は公募型プロポーザルでの選定でしたが、坂氏が提案したプランが
隣接する〈豊田市美術館〉との景観の連続性にすぐれていたことや、
再生可能な建材の利用などを盛り込んでいたことが決め手となり、
坂氏に依頼する運びとなったといいます。
再生可能な建材は、館内の随所に見られます。
たとえば、館内の壁の一部で使用されているパイプ。
これは再生紙でできた「紙管」で、軽量かつ頑丈であることから、
坂氏が災害用シェルターの設計でたびたび活用しているものです。
建物には蓄電池つきの太陽光発電も設置し、災害が起きてから
72時間は電力を確保できる仕組みを整えています。
その結果、建物で消費する年間のエネルギー消費量を削減できる建築物の認証である
「ZEB Ready」も取得。これは、新築の博物館としては初めてのことです。
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館内にも、見どころが盛りだくさん。
特に目を引くのは、集合展示「とよたモノ語り」でしょう。
高さ約8メートルの巨大な棚の中に、豊田市にまつわるさまざまなモノを展示。
市内の家で使われていた日用品や農具、生息している生き物の剥製から、
土器や銅鐸、まちなかで使われていた看板など、見れば見るほど発見があります。
また、「とよた記憶トラベル」も要チェック。
こちらは豊田市民や、豊田市にゆかりのある人々から寄せられた、
豊田市の暮らしや文化にまつわる声を紹介するコーナーです。
地元の祭や学校生活など、さまざまな観点で声を集めています。
ただ展示を見るだけではなく、「展示物をつくる工程に参加する」という体験ができる
博物館はなかなか珍しいのではないでしょうか。
豊田市は愛知県内で最も広大な面積を誇り、
3万年以上も前から人が住んでいたといわれている地域。
生息している生き物も、育まれた文化も、とても多様です。
そうした歴史の息吹を感じられるよう、たくさんのモノや人々の記憶などを収集し、
「とよたモノ語り」や「とよた記憶トラベル」として集中的に並べたといいます。
来場者からは、「展示の仕方がおもしろく、見ごたえがある」
「ガラスの大きな展示ケースが印象的で、ぐるぐるまわりながら見ていたら
時間を忘れるほど夢中になっていた」などの感想が寄せられています。
ただ美しい建築を楽しむだけではなく、過去、現在、そして未来について伝えながら、
日々の暮らしや環境について考えるきっかけも与えてくれるーー
〈豊田市博物館〉は、そんな博物館だといえるでしょう。
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