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群馬県千代田町〈宝林寺〉が
〈TEMPLE STAY ZENSŌ〉を開業。
関東初のふるさと納税対象の宿坊に

コロカルニュース

posted:2022.12.8   from:群馬県邑楽郡千代田町  genre:旅行

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Saori Nozaki

野崎さおり

のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。

歴史ある禅寺のはなれで時代にあった宿坊体験

群馬県千代田町は利根川の流域にある群馬県南東部のまちです。
都心からは車で約90分の場所にあり人口は1万人ほど。
その千代田町の由緒あるお寺が〈宝林寺〉です。

〈宝林寺〉の本堂。

〈宝林寺〉の本堂。

約700年前にお寺が始まった当初は臨済宗のお寺でした。
後に同じく日本の三禅宗のひとつ、
黄檗宗(おうばくしゅう)の寺院となった禅寺です。

宝林寺は2023年1月に〈TEMPLE STAY ZENSŌ〉として
お寺のはなれを改装した宿泊施設を開業します。

副住職、峻宏さん。47代目の住職になる予定です。

副住職、峻宏さん。47代目の住職になる予定です。

発起人はお寺の副住職、峻宏(しゅんこう)さんです。
副住職としてお寺を支える傍ら
ゲストハウス運営支援事業や寺泊施設立ち上げなどをこれまでに行ってきました。
その経験を自らが副住職を務める宝林寺でさらに発展させることにしたのです。

TEMPLE STAY ZENSŌの開業には大きく2つの背景があります。

〈宝林寺〉の鐘楼堂。

宝林寺の鐘楼堂。

ひとつ目はお寺が抱える問題。
お寺の数はコンビニよりも多いとされていますが、さまざまな理由で空き寺になるケースが増えています。
その原因のひとつを“お寺が時代についていけていない”状況だと分析。
地域のお寺もミレニアル世代にとって、
繰り返し接点を持ちたくなる場所をつくりたいと考えました。

そして2つ目は千代田町に宿泊施設がなかったこと。

「千代田の祭川せがき」では花火が盛大に打ち上げられます。

「千代田の祭川せがき」では花火が盛大に打ち上げられます。

千代田町は群馬県内でふるさと納税の額で1位を誇り、
灯ろう流しや読経、花火で賑わう夏のお祭り「千代田の祭川せがき」には
近年来訪者が増えるなど、
これまで以上に町外の人との繋がりが増えてきました。

ところが千代田町内には宿泊施設がなく、せっかく訪れた人が長く滞在することは稀。
まちの魅力を知ってもらう機会を掴むことができませんでした。

つまり峻宏さんが目指すのは
宝林寺を起点とした千代田町地域活性化と新たなお寺の存在価値の追求です。
TEMPLE STAY ZENSŌは関東エリア初のふるさと納税対象の宿坊として、
まちの外の人たちに向けて広く発信されることになっています。

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華光菩薩像。

華光菩薩像。

峻宏さんは、一般の人にとってお寺は
先祖の供養や僧侶との対話によってきっかけを得る場所ではないかと考えています。

「お寺が古来より営んできた宿坊は、
長期滞在をしてお寺の勤めを共にすることで、
きっかけを与えやすくしていたのかもしれません」とも。

参拝する人のための宿泊施設、宿坊の歴史は平安時代に遡ります。
近年では観光客を受け入れる施設も増えてきました。
宝林寺のTEMPLE STAY ZENSŌは、
修行の場所でもあった宿坊を現代版にアレンジしたといえます。

TEMPLE STAY ZENSŌがこれまでの宿坊と大きく異なる点は、
プライベートな空間が確保される一棟貸しで提供されること。

〈TEMPLE STAY ZENSŌ〉は、修行の場所でもあった宿坊を現代版にアレンジ

修行の本質である内省や自らへの問いを行いやすい滞在の心地よさは求めつつ、
ホテルや旅館では体験できないひと捻りある施設づくりを心がけられました。

室内には現代のライフスタイルに合わせ、
Wi-Fiや50インチテレビ、スピーカーも完備。
必要に応じてテレワークや会議ができるスペースもあり、
長期滞在にも対応しています。

キッチンでの調理のほか、庭にBBQのための道具やピザ窯まで準備。
ウッドデッキもあるので、開放的な空間でくつろいだり、
本を読んだりと有意義に過ごすこともできます。

1日1組限定、最大6名まで宿泊可能。愛犬も一緒に泊まれるのも大きな特徴で、
リゾートさながらの雰囲気が堪能できそうです。

もちろん、お寺での滞在らしい体験も準備しています。
部屋の中には禅を感じられるさまざまなコンテンツを用意。
希望者は坐禅や朝のお勤めへの参加も可能です。

緑豊かな寺院内では、さまざまな食べられる植物を見かけ、利用者も収穫が可能です。
例えば春にはたけのこやタラの芽、山椒、
夏は茗荷やびわ、秋になれば栗やむかご、冬にはゆず。
収穫後に調理して食すことで、四季を深く感じられることでしょう。

峻宏さんは可能な限り宿泊者を出迎え、
お寺の歴史から周辺情報などを案内することにしています。

ロゴのデザインは現在の46代目住職によるもの。

ロゴのデザインは現在の46代目住職によるもの。
禅をシンプルに表現しています。“ZENSŌ”という名前は、
禅とお寺の丸い窓「円窓」をかけ合わせたもの。
ほかにも「円相」「禅僧」「禅荘(禅の宿泊施設)」と
さまざまな意味を内包する言葉として編み出されたとのこと。

都心から少しだけ足を伸ばした場所にある、緑豊かで歴史ある寺院での宿泊。
慌ただしい日常から少し距離をおき、700年の歴史と豊かな四季を味わいながら、
ゆっくりと深く呼吸をすることで、心と身体を調えるソウルリトリート体験が
新たなお寺との関わり方をつくり出してくれそうです。

information

map

TEMPLE STAY ZENSŌ(テンプル ステイ ゼンソー)

住所:群馬県邑楽郡千代田町新福寺704-7

※2022年12月末より予約開始

web:TEMPLE STAY ZENSŌ 公式サイト

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