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波佐見焼メーカー〈中善〉から
新ブランド〈zen to〉が誕生!
第一弾は“カレー皿”

コロカルニュース

posted:2020.7.29   from:長崎県東彼杵郡波佐見町  genre:ものづくり / 買い物・お取り寄せ

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

writer profile

Mayo Hayashi

林真世

はやし・まよ●福岡県出身。さまざまな職種を経験後、現在はフリーランスのライターとして活動中。デザイン・アートが好きで、作家やアーティストのインタビューを中心に執筆。2020年に地元福岡に帰郷、東京と行き来しながら九州のおもしろいヒトモノコトを掘り起こし発信している。

肥前のやきもの技術と可能性を一皿に

日本有数の陶磁器の産地として知られる長崎県の波佐見町。
江戸時代から庶民に向けた器を量産し、人々の暮らしや食文化を支えてきた地域です。

〈株式会社中善〉は1917年の創業以来、波佐見の地で窯業を生業とし、
波佐見焼の技術と精神を継承しながら器づくりに尽力してきた老舗メーカー。
その中善が今年、初となるオリジナルブランド〈zen to(ゼント)〉を立ち上げました。
2020年8月3日より、オンラインショップ
セレクトショップ〈ブリック&モルタル〉(東京・中目黒)にて発売を開始します。

400年以上の歴史がある波佐見焼。中善は波佐見町で100年を越えて伝統を受け継いできた。

400年以上の歴史がある波佐見焼。中善は波佐見町で100年を越えて伝統を受け継いできた。

波佐見や有田を含む地域は「肥前」と呼ばれています。
その肥前の窯元の歴史は16世紀末、戦国の世から始まったとされ、
豊臣秀吉による朝鮮出兵で朝鮮李朝の陶工を日本へ連れ帰ったことから
磁器生産の技術がこの地のさらなる発展につながったといわれます。

17世紀後半には、海外輸出の増大によって肥前窯業界は大いに活気づき、
全国的にもやきものの一大生産地となりました。

しかし明治時代には長年続いた大村藩の支援が途絶え、
登窯の生産停止によって窯業の存亡の危機に直面したといいます。
また昭和時代に入ると戦争に職人がとられていくなか、
厳しい統制や物資不足など、苦難を乗り越えながら
今日まで生産を続けてきました。

中善の職人さんが急須のふたに施釉(せゆう)をする作業風景。施釉とは、やきものに釉薬をかけることをいう。

中善の職人さんが急須のふたに施釉(せゆう)をする作業風景。施釉とは、やきものに釉薬をかけることをいう。

シャトル窯(台車窯)で1300度で焼成後、冷却中の風景。火を止めても炉内が高温のため赤いまま。

シャトル窯(台車窯)で1300度で焼成後、冷却中の風景。火を止めても炉内が高温のため赤いまま。

波佐見町は周囲を森林に囲まれた、長崎では数少ない海に面していないまち。
山の産物に恵まれているため、燃料となる木、水、土のやきものの生産に
欠かせない条件がそろった環境なのだとか。

分業制で大量生産を得意とした波佐見の窯元は、
長年にわたって有田焼と協業しながら
肥前窯業界の発展に貢献してきました。

中善もまた、国内ブランドの製造に従事するなど
裏方に徹してきましたが、2017年に創業100周年を迎えたことを機に、
肥前地区のやきもの技術とその可能性を次世代に伝えるべく
表舞台に立つことを決意。

オリジナルブランドは中善の「善」と肥前地区の「前」の
ポジティブな2文字と「ぜんと」という言葉の響きに着目し
〈zen to〉と名付けられました。

ブランドディレクターには数々のブランドで指揮を執り、
日本を代表する陶磁器デザイナーの阿部薫太郎さんが着任。
“多様な嗜好に応える、多彩な個性”をコンセプトに掲げ、
モノを見る目がシビアでありニーズも細分化されている現代に向けて、
バラエティに富んだ選択肢を陶磁器で提案していくといいます。

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カレーを愛するクリエイターを起用

小宮山雄飛さん監修の「zen to Y・K」

小宮山雄飛さん監修の〈zen to Y・K〉

〈zen to〉から今回リリースされる2種の「カレー皿」。

ひとつは、小宮山雄飛さん監修の白地のカレー皿です。
小宮山さんはオリジナルレシピをまとめたカレー本の出版や
日本初のレモンライス専門店〈Lemon Rice TOKYO〉をオープンするなど
“カレー愛”にあふれる、ミュージシャンであり多彩なクリエイター。
カレーへの特別な思いが込められたひと皿ができあがりました。

目指したのは「究極のカレー皿」。
「おうちのカレーライスが、最高のご馳走になるような、
盛り付けるのも食べるのも楽しくなる、そんなお皿をデザインしました。
ルウを使って手軽にもつくれるし、スパイスから本格的にもつくれるのが
カレーの魅力ですが、せっかく自分でつくったカレーなんだから、
最高においしそうに盛り付けたい、そんな時にこのお皿を
使ってもらえれば幸いです」(小宮山さん)

おうちカレーもこのように洗練されたカレー皿でいただけば、
特別な一品に大変身してしまいますね。

小宮山雄飛:東京・原宿生まれ。1996年ホフディランのVo&Keyとしてデビュー。2018年には日本初のレモンライス専門店「Lemon Rice TOKYO」をオープン。多彩な能力を発揮してさまざまな活躍を見せるマルチクリエイター。

小宮山雄飛:東京・原宿生まれ。1996年ホフディランのVo&Keyとしてデビュー。2018年には日本初のレモンライス専門店「Lemon Rice TOKYO」をオープン。多彩な能力を発揮してさまざまな活躍を見せるマルチクリエイター。

ツレヅレハナコさん監修の「zen to turehana_b」

ツレヅレハナコさん監修の〈zen to turehana_b〉

編集者として数多くのフード本を出版されているツレヅレハナコさんは、
インドへ旅する中で出会ったジャイプールの伝統工芸品である
〈ブルーポッタリー〉というやきものに魅せられ、
今回のカレー皿をデザインされたのだそう。

「ブルーポッタリーのエッセンスを波佐見焼の磁器で再現していただきました。
ターメリックの花にカレーリーフやベイリーフ、
ふちを飾るのはセージの花です。
これはスリランカで出合ったアーユルヴェーダやカレーに使われる材料がモチーフ。
眺めているだけでも楽しいし、
カレーのほか果物などを盛るのにも
ぴったりな皿に仕上がったと思います」(ツレヅレさん)

ツレヅレさんによると、意外にも派手な柄皿は何を盛ってもよく合い、
とても華やかで特に数種のカレーを盛るのにぴったりなのだとか。
日常使いで気分を上げてくれる一皿になりそうですね。

ツレヅレハナコ:食と酒と旅を愛するフード編集者。著書に『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『ツレヅレハナコのじぶん弁当』(小学館)、『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』(PHP 研究所)『食いしん坊な台所』(河出文庫)、『ツレハナ亭の家飲みごはん』(エイ出版))ほか。最新刊に『ツレヅレハナコの南の島へ呑みに行こうよ!』(光文社)がある。

ツレヅレハナコ:食と酒と旅を愛するフード編集者。著書に『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『ツレヅレハナコのじぶん弁当』(小学館)、『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』(PHP 研究所)『食いしん坊な台所』(河出文庫)、『ツレハナ亭の家飲みごはん』(エイ出版))ほか。最新刊に『ツレヅレハナコの南の島へ呑みに行こうよ!』(光文社)がある。

ブランドディレクターの阿部薫太郎さんは、
「食に精通したおふたりなら、違う角度からの提案や
意見を知ることができるのではと考え、またそれにより
産地としての発展や知恵として残せれば」という思いと、
「多様なカレーの趣向があるように、食文化の変化や
多様な食生活に対応していくのが波佐見の使命ではないか」
と話します。

長きにわたり培った技術に各方面のスペシャリストの知恵を掛け合わせ、
産地のさらなる発展と新しい伝統の創造を目指す〈zen to〉。
今後は、15名のクリエイターと協働した製品を順次リリース予定とのこと。

前途洋々たるやきものの未来を願い、新しい風を吹き込んでいく〈zen to〉に
ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

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