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連載

甲州ワイン、こだわりづくしの醸造
ワイン醸造家・三澤彩奈さん
ミサワワイナリー 後編

貝印 × colocal
「つくる」Journal!
vol.031

posted:2015.12.15  from:山梨県北杜市  genre:食・グルメ / ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  歴史と伝統のあるものづくり企業こそ、革新=イノベーションが必要な時代。
日本各地で行われている「ものづくり」もそうした変革期を迎えています。
そこで、今シーズンのテーマは、さまざまなイノベーションと出合い、コラボを追求する「つくる」Journal!
ものづくり・しくみづくり・ひとづくり・食づくり、場づくりetc、
貝印 × コロカル × earthradioチームが、フレキシブルにテーマを取り上げていきます。

writer's profile

Tetra Tanizaki
谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。
http://www.kanatamusic.com/tetra/

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Suzu(Fresco)

スズ●フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

前編【甲州ワインを世界へ送る ワイン醸造家・三澤彩奈 中央葡萄酒株式会社 ミサワワイナリー 前編】はこちら

“甲州ワインを世界へ”
そう考えるミサワワイナリーのワイン醸造家・三澤彩奈さん
2014年に、彩奈さんがてがけた甲州のワイン〈キュヴェ三澤 明野甲州 2013〉が
ワインの業界で最も権威のあると言われる
デカンタ・ワールド・ワイン・アワーズ(ロンドン)で金賞・地域最高賞を受賞した。
今回はこの味をつくる醸造の現場をリポートする。

ミサワワイナリーのワイン醸造家・三澤彩奈さん。2014年に彩奈さんが手がけた〈キュヴェ三澤 明野甲州 2013〉がデカンタ・ワールド・ワイン・アワーズ(ロンドン)で金賞を受賞した。

醸造家のこだわり

ミサワワイナリーでは6種類の品種を栽培している。
白は〈甲州〉、〈シャルドネ〉。
赤は〈カベルネ・ソーヴィニヨン〉、〈メルロー〉、〈カベルネ・フラン〉
それから〈プティヴェルド〉。
それぞれにつくり方の違いがある。

「醸造家のこだわりがあって、
どういうワインをつくりたいかによって、製造方法を選びます。
たとえば〈甲州〉は酸化しやすい品種なので、熟成に向かないと言われています。
しかし私は〈甲州〉を熟成させたいんです」

白ワインと赤ワインではブドウの品種も違う、と彩奈さん。
発酵の過程も違うのだという。
白ワインはブドウを搾ってから発酵させるが、
赤ワインは粒ごと発酵させて、そのあと搾る。
〈甲州〉白ワインの熟成のためには、
この絞り=プレスの過程がとても重要なのだそうだ。

「果汁を搾っている間に酸化してしまうと熟成しないんです。
ですから窒素で充填しながらプレスをするタイプのドイツ製の圧搾機を使っています。
白ワインはプレス命なんです。
もちろんワインはブドウが命なんですが、
白ワインの醸造工程においてはプレスが最も重要なんです」

そのため、どういうプレス機を使うのかがとても重要なのだそうだ。
しかし機械まかせということではない、と彩奈さん。

「キチンと味をみて、一番搾り、二番搾りのタイミングを見わけていきます。
どれだけやさしく、いい果汁をとるか」
それがこだわりだと言う。

白ワインは房ごとこのプレス機のなかにいれて空気圧で搾る。白ワインはプレスが味を決める。ミサワワイナリーではドイツ製のプレス機を使っている。

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マンゴーよりも甘いブドウを使った赤ワイン!

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赤ワインのこだわりは、白ワインとちょっと違う

「赤ワインは、粒を選別して、いい粒だけを発酵させるんですね。
それがこだわりです」

赤ワインの代表的な品種である
〈カベルネ・ソーヴィニヨン〉を発酵させているところを見せていただいた。

「これは超熟。熟成のポテンシャルが非常に高いものです」

昨日までその選別を行っていた場所はまだブドウのよい香りが残っている。
樽のなかから発酵中のブドウをひとつまみ口にふくむと、深みのある甘さが広がる。

「生食用のブドウに比べて、ワイン用のブドウはずっと甘いです」

今年の〈カベルネ・ソーヴィニヨン〉は糖度が26度くらいあるという。

「通常24とか23ぐらい。マンゴーが20ちょっとぐらいですから。
それよりもさらに甘いんです。
今年は10月の天気がすごく良かったんです。そして夜は温度がぐっと下がった。
そうすると甘くなるんです」

赤ワインの代表的な品種である〈カベルネ・ソーヴィニヨン〉。オークタンクのなかで発酵中。

「白は発酵してしまえば安心というか、人間のやれることはあまりないんです。
酵母にがんばってもらうしかない。
しかし赤の場合は発酵しているときに、やる仕事があります。
顆粒が発酵するんですが、発酵中に炭酸ガスが出る。
炭酸ガスの力で顆粒が押し上がっている状態なんですが、顆粒が割れて果汁が出ます。
タンクのなかでは顆粒の下に果汁があって層になる。
その層がわかれすぎるとあまりおいしいワインができないんですね。
だから間合いでかきまぜる必要があります」

それで味が決まってくるのだと言う。

「一日に何度もやる。夜中もやる。発酵中も目が離せません」

それがこだわりのポイントでもある、と彩奈さん。
1年で一番、緊張感のある時期である。

樽のなかから発酵中のブドウをひとつまみ。糖度は26度ぐらい。

収穫したての〈甲州〉の仕込み

一週間前に収穫した〈甲州〉がタンクにはいっている。

「〈甲州〉は繊細な品種。一般的には樽を使わないんです。
樽で仕込むと樽の香りがつくので、タンクで寝かせています」

今仕込んだものが来年の6月に発売になる。

「わりと早く出すのが〈甲州〉という品種。
〈シャルドネ〉などは1年くらい寝かせます。それから出荷。
赤ワインの場合は2年くらい。
そのあと瓶詰めをしてから寝かせます」

瓶のなかでまた瓶熟成が始まる。

瓶に詰めてから瓶熟成が始まる。

まるで実験室のような部屋も。

醸造所のなかにはいろんな分析器具がある研究室のような部屋もある。

「ワインの醸造家というのは“理系”なんです。
分析をしたり。アルコールや糖、PHなどの値を測る。
ここでワインの状態を観ます。
数値をみながら収穫時期を見極めますが、
実際に食べてみて、香りをみて最終判断をします。
雨が来たり台風が来るのがわかると、“一瞬を逃してはいけない”と緊張します。
熟したものを摘み取って、選別して一気に仕込む必要があるんです」

白ワインのタンクと赤ワインの樽。

彩奈さんの「つくる」とは?

2014年にコンクールで金賞を取って1年経った。
心境に変化などはあっただろうか。

「1年前ですが、デキャンタのコンクールはもう過去のものです。
色あせることはないですが、先に進んでいかなければいけないと思います」

さらに高いクオリティを目指すという。
具体的にはどんなことをするのか?

「ブドウの樹を選別して、さらに良いものを残していくようにしています。
ダメなのを切っていきます」

年を追うごとに良い樹だけが残って、さらにおいしくなっていくということだ。
金賞をとった畑のなかで良い樹をさらに厳選して、
クオリティの高い〈甲州〉を目指していく。

「切っていくのはとても苦しい作業です。
収量は下がりますが、おいしいものが残ります。
今でさえ品薄なわけですから、経営的には苦しいわけですが、
さらに良いものをつくるための苦しみです」

賞をとっても儲かるというわけではない、
それでも先へ進んでいく、という。

今年のブドウのできはどうだろうか?

「今年のブドウはカベルネの赤に関しては記録的な糖度の数値。
〈甲州〉も糖度自体は賞をとった2013年とほぼ同じ数値です」

今年も期待できるとのこと。これは楽しみである。
最後に彩奈さんにとって「つくる」とは何か、聞いてみた。

「地に足をつけて生きること、ですかね」

information


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ミサワワイナリー/中央葡萄酒株式会社

住所:山梨県北杜市明野町上手11984-1

Webサイト:http://www.grace-wine.com/our_winery/akeno/

ワインメーカー(三澤彩奈さん)のブログ
http://grace1923.blog.so-net.ne.jp

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