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そして、海を堪能した後は『里山』へ。
下田湾へと流れ込む稲生沢川沿いを北上します。
途中、湧水「落合の水」で水を汲み
(都会の若者にとってはこれもかなり貴重な体験といえます)、
宿泊先の稲梓地区、里山ひろがる横川温泉の千代田屋旅館へと到着。
雨がふらない時期でも枯れることなく、こんこんと湧き出る水。都会では、水はペットボトルのミネラルウォーターを「買う」のが当たり前でしょうが、水もこうした自然の恵みです。
千代田屋旅館は、わが家の田んぼのすぐ近くの宿で、そもそもはこちらのご主人との付き合いのなかで、田んぼもお借りすることできています。(写真は春に撮影したものです)
旅館の周辺は、こんな典型的な「里山」の風景がひろがっています。手前がわが家の田んぼです。
まずは、自慢の厳選かけ流しの温泉を堪能してもらい
(温泉も火山の半島、伊豆の恵みですね)車座になって座談会。
会には、山のプロフェッショナルとして
千代田屋さんのご近所の方(御年89歳!)や、
リアルな海の変化の話も学生に聞いてもらいたいということで
海の達人の友人ふたりにも参加してもらいました。
(ご協力感謝です!!)
御年89歳の山の達人には、化石燃料が普及する前の里山での暮らしについての実体験に基づく貴重なお話を伺いました。あらためてこの100年弱での暮らしの変貌ぶりに驚いてしまいます。
そして座談会後の夕食では、
学生も先生も地元の人もみんな混ざって、海の話から山の話、
深い話から笑える話までが飛び交う良き時間となりました。
千代田屋旅館さんには、学生たちに下田の食材を
味わってもらいたいと特別に食事のアレンジをお願いしていて、
金目鯛の煮付、刺身にひじきの煮物といった海の幸に、
下田稲梓産の本わさび、千代田屋さん自家製の自然薯に自家製ご飯。
猪汁という山の幸。
まさに下田の海山の魅力たっぷり御膳!
普段、魚をあまり食べない、ジビエなんて食べたことない、
という学生たちも、みんなおいしそうに食べてくれてました。
東京にいると、スーパーに並んでいる『食材』が工業製品のように感じてしまうこともありますが、食材も自然の循環のなかにあるのだと感じてもらいたいです。
金目鯛にもいろいろとあるのですが、最高級の「地キンメ」を地元の方から提供していただきました。地域のみなさんの、学生たちに下田を楽しんでもらいたい! という想いが、最高にうれしい。
2日目朝は、『里山散策』。
まずは千代田屋旅館のすぐ近くにある
自分がお借りしている田んぼからスタートします。
ここでは自分のほうから
1反の田んぼでどれくらいの米がつくられるの?
日本人はひとり当たり1年にどれくらいの米を食べるのか?
田んぼっていくらで借りられるのか?
今、里山で起こっている問題は?
……そんなこんなの話をさせてもらいながら、
田んぼの水源まで散策しました。
朝の里山、気持ちいい!
朝ごはんを済ませて、千代田屋旅館の看板ヤギさんと戯れてから……
ヤギさんも草をもぐもぐ食べて、コロコロと糞をして。循環に一役かっています。
そして、再び海へ移動。
伊豆漁協下田支所にて、下田の漁業の概要、
なかなか知ることのできない現場で起こっている問題など
興味深い話ばかりをお聞きしました。
昨晩おいしく食べた「金目鯛」の日本一の漁獲量を誇る下田で、その漁で今起こっている問題点を聞く。ただ問題が起こっている、と授業で聞くのとは違うインパクトがあります。
今回はタイミングが合わずセリは見学できず。残念!
そして、漁協と隣接する道の駅でみなさんお土産を買って解散!
帰路へとついたのでした。
今回のフィールドトリップに参加して、
またその企画の一部を提案させてせていただき、
このような下田での『合宿型エコツーリズム』や、
地域の自然と人の暮らしの関わりをみせる「ガイドツアー」を、
市のプロジェクトチームで今後、企画を発展させていく上でも、
とても参考になりました。
さて、どんな企画となるのか?
絶賛思案中ですので、こちらもまとまったらまた紹介させていただきます。
エコツアーでは見て知って、そして『行動する』キッカケとなるようなアクティビティを企画しています。アクティビティというと語弊があるかもですが、まずはビーチクリーンでしょうか。残念ながら、拾っても拾っても……いくらでもあるのです。
ただビーチクリーンをするだけではアクティビティとしてはストイックすぎるので、ビーチグラス探しもすれば、楽しみもあってよいのかな? と考えています。ビーチグラスとはもともとは尖っていたガラスの破片が海の中で長年揉まれて角が取れたもので、過去にこの連載でも取り上げています。(photo:津留崎徹花)
毎年のわが家での田んぼ作業では、参加してくれた方から「貴重な体験をさせてもらってありがとうございます」なんて言われることもあります。こちらとしてはお手伝いしてくださってありがとうございます! なのですが。参加者と地域、お互いが幸せになれるWIN-WINなコンテンツがベストなのだろうと感じています。