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大軌さんに「米づくり」と「林業」どちらが好きか聞いてみました。
返ってきた答えは「どっちも楽しい」。
大規模に生産する米産地が価格を下げてしまうため、
伊豆のような中山間地域の米農家では
手間と価格が釣り合わないことになってしまっているそうで、
仕事として利益が出やすいのは林業だといいます。
でも、米づくりに対しても手間を惜しまない。
例えば、米づくりのはじめの一歩ともいえる苗づくり。
もととなる種は自家採種にこだわっています。
育てた稲から次の年の米の種を採る。
前述したように米づくりに関して知識のない僕は
それが一般的なことかどうかもよくわからい。
大軌さんは「普通のことですよ」と言っていました。
でも、調べてみると、一般的には種を買ったり
苗を買ったりという農家さんが多いようです。
大軌さんになぜ自家採種にこだわるのか聞いたところ
「そこで採れた種は地に馴染む、他者のつくる種は不安がある」と。
こだわる、というよりは彼にとってはそれが自然なこと、
というだけかもしれません。
山仕事で伐り出した木で薪に適したものは販売もしています。
大軌さんも薪ストーブ派。自分たちが伐り出した薪で暖をとるそうです。
また、大軌さんはイベントや人が集まるときにはカマドと羽釜を持ってきて、
その薪で自分たちで育てた大喜米を炊きます。
稲作支援制度に加えて、この春からは、
子ども向け林業職業体験イベントを開催しています。
子どもたちに山で仕事をする魅力や重要性を伝えたいそうです。
大軌さんと話していて刺激を受けることがあります。
「それは本当に自然なことかどうか?」
いまの社会で自然なこと、つまり「社会の常識」は
ここ数年、長くても数十年のことが多い気がします。
そうでなく、もっと長い歴史のなかでの「自然なこと」を
あたり前にやっていきたい、そんな判断基準が彼にはあるように感じます。
米を種からつくる。
山を手入れして地域を守る。
山から伐り出した薪で暖をとる。
薪で米を炊く。
いま、すごいスピードで時代が変化しています。そんな時代だからこそ、
長い歴史のなかでの自然なことをあたり前にやっていく、
長い歴史が育んだ知恵をもつこと、それが大切なのではないでしょうか。
大軌さんと出会って、ますますそう感じています。
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南伊豆米店