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移住がきっかけでパン屋に?
伊豆に移住したカメラマンが
ときどきパン屋をやろうとする理由|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.025

Page 3

パン教室〈Farine〉と
真理子さんとの出会い

あるとき下田の家を紹介してくれた不動産屋の奥様から、
「うちの息子のお嫁さん、パン教室やってるのよ」とうかがい、
参加させていただくことに。

ご自宅で月に1度〈Farine〉というパン教室を開催している真理子さん。
真理子さんは東京の教室に8年も通い続けていているほど、
本気でパンに通じている方で、ご自身が学んできた知識や技術を
惜しげもなく教えてくれます。

私が初めて参加させてもらった回では、
イギリスパンの焼き方を教わりました。
「こんなの家で焼けちゃうの!?」と初回から驚きの連続。
その後、私も生徒として教室に仲間入りさせてもらうことになり、
いろんなパンの焼き方を教えてもらっています。

真理子さんとはプライベートでも仲良くさせてもらうようになり、
ある日、真理子さんが焼いてくれたバゲットを
食べさせてもらう機会がありました。
これが最大の転機となったのです。
お店で買うものだとばかり思っていたバゲットが、
まさか自分で焼けるなんて……。

真理子さんが焼いてくれたバゲットの焼き上がりが美しくて、
しかもおいしくて、一気にスイッチが入ったのです。
「自分もおいしいバゲットを焼けるようになりたい!」と。

真理子さんが参考にしていた書籍をすぐに購入して、
本で使用している酵母と自分が使っている玄米酵母の両方で
試しに焼いてみました。
すると、やはり玄米酵母のほうが甘みと奥行きがある。
ならば玄米酵母で徹底的に研究してみようと、
それから毎日試作を重ねました。

焼いたら試食して、焼いたら試食しての繰り返し。
最初は「いくら食べても飽きないね~」と喜んでいた夫が、
「また焼いてるの!?」と顔を歪ませるほど、焼いて焼いて焼きまくりました。
そうしてやり込んでいくうちに、「これだ!」と思えるような
バゲットが焼けるようになったのです。

玄米酵母と小麦粉、塩、水だけでつくるバゲット。砂糖や乳製品や油は不使用ですが、外側はカリッと、中はもっちりとして麹の甘みを感じられます。

こうした元気な割れ目が持ち上がると、ついつい上機嫌になってしまうのです。

毎日パンを焼くので家族では食べきれず、
しだいに近所の友人にプレゼントしたり、
地元の集まりのときに持参するようになりました。

するとこれがなかなか好評で、
「パン屋やったら?」といろんな方が言ってくれます。

「いやいやそんな、素人の私にできるはずがないじゃないか。
パン屋って歯を食いしばって修業した人がなるものでしょ?」
そう、はじめのうちは思っていたのですが、
あまりにもみんなが後押ししてくれるので、
「ひょっとしたら私にもできるのかな?」と想像するようになりました。