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この連載でも何度か書いていますが、
僕は仕事を決めずに移住しました。
そして、そのことで怪訝な顔をされることもありました。
例えば、住まいを探しているとき、とある不動産業者さんに
「家探しの前に職探しだね」と一蹴されることも。
そのようなことは暮らし始めてからも何度かありました。
でも、移住するタイミングより、その移住先での仕事を決めるタイミングを
前に持ってくることに違和感を持っていたのです。
その土地に暮らす前に、事前の情報だけで
仕事を決めてしまうというのはもったいない気がする、
暮らし始めたら事前の情報には載らないその土地ならではの仕事、
自分がその土地で必要とされるような仕事が見つかるのではないか、
そのように思っていたのです。
そして、移住してからは、そんな仕事、ナリワイを
いくつか持ちたいと思っていました。
そのような働き方をすすめる本の影響
(以前も紹介した藤村靖之著『月3万円ビジネス』など)もありますが、
最近よく聞く「近い将来、人工知能やロボットが
多くの人間の仕事をこなせるようになる」という予測の影響もあります。
(「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」
野村総合研究所)
半分もの仕事がなくなってしまう可能性があるのであれば、
ひとつの仕事にこだわり比重を置くより、
それぞれ楽しめるようなナリワイをいくつか持っているほうが
よいのではと思うようになったのです。
そして、特に仕事のあてもないままこの下田に移住してきました。
きっと何かしらあるはずだ、と。
まず、ナリワイのひとつとして、借りた家での民泊を考えています。
この家は部屋が多く、海水浴場、日帰り温泉、足湯のある公園、
道の駅などから徒歩圏内です。
つくりの面でも、立地の面でも民泊に適しています。
先日、東京の友人家族が遊びにきました。子どもは海水浴場や磯遊び、大人は新鮮な魚やジビエを満喫。下田は見どころいっぱい、食材も豊富。自信を持って案内できます。
ただ、この家で宿泊業の許可を得るとなると難しいところがあります。
ところが、まさにいま、民泊に関する法律が変わろうとしています。
来年にはこの家のつくりでも届け出をすれば営業ができるようになるのです。
また、不特定多数を対象に民泊をするのであれば
大家さんにも許可を得なければなりません。
家ももう少し手を入れないといけないところもあります。
お客さまを案内するうえでも、
もっとこの土地に詳しくなってからがよいでしょう。
そんな点からも、民泊については法が整備される
来年からでちょうどよいと考えています。
また、この連載もナリワイのひとつといえます。
移住先探しの旅を経て、下田に暮らし始めたわが家。
都会もんが地方に移住し、どのように暮らしていくのか?
移住者のリアルな声をモットーにお届けさせていただきます。
ほかのナリワイは、この下田で暮らしていくなかで見つけたい、
そう思っていました。
暮らし始めてしばらくは家のこと、庭や畑のことでいっぱいいっぱいで、
ほとんど引きこもり状態でした。
気にはなっていたのですが、ナリワイ探しにまで頭がいってませんでした。
ひと段落してきたので、久々に外に食事に行こうという話に。
そこで妻の知人に「下田に移住するなら……」と紹介された
山田真由美さんの店〈Table TOMATO テーブルトマト〉に足を運びました。
真由美さんは鎌倉在住でライター、編集者でありながら
出身地である下田に4月にTable TOMATOをオープンさせたのです。
この店舗では真由美さんのお義父さまがセレクトショップ〈TOMATO CLOSET〉を37年にわたり営業。下田のまちに根づき、長く愛されてきたその店を業態を変え〈Table TOMATO〉として引き継ぐことに。
伊豆の食材を使った料理の数々、そして歴史を感じる独特な空間が魅力的で、
オープンしたばかりとは思えないほどに
地元の方がくつろいでいるのが印象的です。
真由美さんは、仕事を決めずに移住してきた自分の状況に
興味を持ってくれました。
そこで僕が自営業で飲食店をやっていた経験もあることから、
次の営業のときに手伝いをしてみないとお誘いをいただきました。
久々にまちに出るとこんな話が出てくる、
やはり引きこもっていてはダメだなとあらためて感じます。
そして、黒船祭という多くの人出が見込まれるお祭りの期間、
Table TOMATOの手伝いをすることに。下田での初めての仕事です。
観光客、地元の方、それぞれがTable TOMATOを楽しんでいました。
黒船祭が終わると営業時の手伝いだけでなく、
棚をつくったり、具合の悪かったトイレを直したり、網戸を張り替えたりと、
いままでの建築の経験を生かす、そんなお手伝いもさせていただきました。
カウンター内の収納について相談を受け、棚をつくることに。
今後もこのように営業時の手伝いから
建築よろず屋的なことまで関わることになりました。
それは、飲食店と建築、ともに経験してきた僕ならではの関わり方です。
まさに事前の情報では見つからないような仕事、
思い描いていたナリワイの見つけ方といえます。