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僕は下田に移住してから、いろいろな縁がつながり
養蜂場と工務店で働くことになりました。
養蜂と建築という不思議な組み合わせの
「二足のわらじ」を履いて暮らしています。
移住前から建築の仕事はしていましたが、養蜂の経験はありませんでした。
正直にいうと養蜂に興味があったわけでも、
はちみつに特別なこだわりがあったわけでもありません
(多くの人と同じです)。
そんな自分が、移住してきて間もない昨年の夏に
〈高橋養蜂〉の養蜂家、高橋鉄兵さんと出会いました。
話をするうちに彼の養蜂に対する強いこだわりと
「ミツバチ愛」に驚いたことを覚えています。
そして、ミツバチがはちみつをつくり出すだけでなく、
多くの農作物の受粉という重要な役割を担っていること、
そのミツバチが減っているという現実を知りました。
農薬の影響という指摘もあるそうです。
そこで、「ミツバチ愛」あふれる彼は、
ミツバチが安心して元気に飛び回れる環境、
「ミツバチの楽園」をつくりたいという夢を語ってくれました。
そうした縁で、その秋から高橋養蜂に身を置くことになったのです
(鉄兵さんとの出会いについてはvol.21、
働き方についてはvol.30に詳しく書いています)。
はちみつがどのようにしてつくられるのか?
ミツバチがどんな暮らしをしているのか?
高橋養蜂で働くまではまったく知り得なかったことです。
また、はちみつという食品の生産現場に立ち会うことで、
あらためて食べるということについて考えるきっかけとなりました。
そこで今回は、こうして偶然たどり着いた
高橋養蜂という職場を通して知った、ミツバチとはちみつについての話です。
少し季節を戻します。
前にこの連載で高橋養蜂のことを書いたのは今年のはじめ。
その頃は気温が低く蜂がほとんど活動しておらず、
養蜂の作業をあまりしない時期です。
耕作放棄地となってしまい獣に荒らされてしまった里山の農園を
「ミツバチの楽園」に再生するべく作業をしていました。
そして、春には柵が完成。
柵が完成してしばらくすると、柵の内側と外側では
驚くほどに違いが出てきました。
柵の外側では相変わらず鹿が出没し、草や木の新芽を食べられています。
でも、鹿が入って来ることのなくなった柵の内側は
徐々に草木が元気を取り戻してきたのです。
これなら蜜源植物を育てることができる! ということで、
草木の種や苗を植えました。