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「まずは、一緒に挨拶まわりに行きましょうか」
と、友人のヒロさんが全店舗に私を連れて行ってくれました。
彼は下田生まれ下田育ち、生粋の下田っこ。
顔なじみの彼が今回の撮影に関わっているということで、
お店の方も安心している様子でした。
その日はご挨拶だけ済ませ、後日あらためて取材にうかがうことに。
「取材はテツカさんのやりやすいようにしてください」
とヒロさんが配慮してくれたので、
ひとりで取材に回りたいとお願いをしました。
少人数のほうが先方が気負わず、
ふとしたこぼれ話をうかがえるのではと思ったのです。
〈五十鈴製菓〉さんのお菓子をつくっているのは、ご主人と息子さんのおふたり。
ぽってりとやわらかいみたらし団子は80円というありがたい値段。シンプルで温かみのある五十鈴さんの和菓子を口にすると、どこかホッとします。
取材するお店はそれほど広範囲ではなかったので、
天気のいい日は自転車で出かけました。
自転車で撮影に行くというのもこれまた初めての経験。
機材をコンパクトにして気ままに行動するというのは、
なかなか心地のいいものです。
取材の途中、時間が空いたのでまちなかにある温泉銭湯でひとっ風呂。冷え込んできたこの季節、400円で気軽に温まれるこの〈昭和湯〉の存在がとてもありがたい。
何代も続く老舗の和菓子屋さんや、
下田にUターンしたご夫婦が始めた洋菓子屋さんなどなど。
いままでまったく知らなかった下田のお菓子屋さんを、
この機会にたくさん知ることができました。
創業して42年になる〈シャルマン伊豆〉。創業当時からつくり続けているというシュークリームやショートケーキは、下田人にとってふるさとの味です。「シャルマンのケーキを食べるとほっとする」という、お客さんの言葉がとてもうれしいと話すご主人。